第15話 解釈・皆様への言葉

文字数 3,074文字

 米国が勝つと予想する方々も多い。
 だが、結局のところ、米国は内部に巣食う新自由主義を修正出来ないことでは問題の解決にはならない。新自由主義とは自由主義時代の経済的勝利者がその子孫に力を譲り渡し、社会の不均衡を生む現象である。
 資本主義の強みは何たるかは述べた。チャンスの平等化である。だからこそ誰でも活躍出来る社会を育むことが出来るのだ。
 欧州連合も格差社会になっている。特に国同士の関係が歪だ。発展している国とそうでない国に別れている。
 新自由主義そのものが資本主義との相性が悪い。多様性は損なわれる上に発案も限られた人材しか出来なくなる。
 これらはどの様に解決したら良いのか?
 まず、挙げられるのはキリスト教的見解から財団の積極的設立を推進することだろう。特に教育分野が望ましい。人々のチャンスが広まれば、それだけ多様なアイデアが生まれる。
 もう一つは労働を機械に任せる。人類は創造的価値を持つ文化、文明の芽を創り出すことに心力を注ぐこと。労働から解放されれば家族の時間も持てる上に自分の自由な時間も増える。研鑽すべき技術を研鑽し、それを世界が常態化させれば良い。
 ただ、問題なのは人間が元々怠惰な生き物だという点がある。自由になった反動で快楽主義に走るおそれがある。
 そうなると戦争も機械が主流となるだろう。オートマータ軍が設立され、軍を掌握する将来もあり得る。
 悩ましいのは立場の関係だろう。機械が上か、人類が上かで悩むこととなる。人類が進歩を止めず、研鑽し続ければ易々と機械に頂点の座を明け渡すこともないだろうが。もしくは機械の中に人を進歩させるプログラムを最初から組み込んでしまうか。
 いずれにしても「機械の平和」がやってくる日もそう遠くないかも知れない。
 ただ、中華は圧倒的人口を誇る。これは経済、軍事の両面に顕著に現れてくるだろう。量子暗号の整備も着々と進んでいるのも中華だ。そして、中華も又高度な機械知識を保有する超大国だ。監視国家はコロナさえも抑え込んでいる。「一路一帯」政策もパフォーマンスであり、失敗しても中華はさほどダメージを負わない。結果として中華、米国の各国に対する負債減免に繋がっただけで、中華の民間銀行は依然として有利子で儲けている。中華が強いのは欧米と比べて借金があまりないことも一因である。
ただ、意外であったのは不動産が弾けたことである。これまで、中華は10年以内に世界の覇権国家になるとみなされていたが少し様相が変わってきた。不動産が弾ければ確実に不況が訪れる。それを止めるには強い経済政策を行う必要性がある。即ち、得た外貨を如何に投資出来るかと言うことである。ただ、不況そのものは避けられないであろう。中華の若年層の失業率が内実40パーセントにも高まったのであれば15年以内に大不況に陥る可能性はある。
尤も、先に述べた通り倫理的な政策から外れ、クローン人間の製造や工業の全機械化を行えば覇権国家になる可能性は十分ある。ただ、中華がその道に踏み込む覚悟があるかどうかなのである。
 他方、米国の強みは単純だ。軍事力とドルである。ドルを保有している国では米国が倒れれば、資産が大きく減り、国家財政の破綻にもつながる。
 中華が米国債を持っているのは米国に対する利点の一つだが、同時に弱点にもなりうるのである。
 米国はドルを背景に軍事力の強化に余念がない。時代遅れな改革もあろうが、依然として世界の軍事の30パーセント近くを占めている。又、米国には様々な技術機関が存在しているのも強みである。ダーパ、国家安全保障局、中央情報局など挙げれば色々ある。人口の割に農業が極度に発達しているのも米国の強みである。
 他方で日本も当事者なのである。日本は米国、中華の最前線の戦いに巻き込まれる国である。地政学上でも両国は日本を重視している。
 米国は長い間、戦費を日本に担うよう交渉してきた。
 結果として思いやり予算があり、防衛省の米国製兵器の輸入を行い、米国を支援してきた。
 だが、近年日本は中華に領土を支配されかかっている。日本の豊かな水資源を狙って中華が土地を買いあさっている。中華の人々には悪気がなくとも共産党はこれを戦略として利用するのである。
 更には、尖閣諸島で大々的に中華は石油の採掘をしている。これは日本の分の石油も精製している可能性が高い。又、自衛隊基地の隣接地に土地を購入しているのもきな臭い。防衛の動きをいち早く察知される恐れもある。これは人口問題と絡んでくる。又、人口問題でも日本の高齢化に目を付けて弱体化を観察している節がある。
 人口問題は米中のみならず世界の問題だ。
 世界的な人口問題の解決としてはやはり地球外への進出が一番有力であろう。危険は伴う。
 だが、この100年で人類は驚異的な速さで技術を進歩させてきた。無論、その結果に環境問題があるのも否めないが、技術の進歩は環境問題への寄与も拡大させる。
 農業生産ではじゃが芋が有力であろう。食料増産を見込める、じゃが芋は痩せた土地でも栽培可能なので人口問題にも寄与出来る。
 又、近年取り組まれているのは環境改善の技術の開発に賞金を付けることである。多様な賞を用意し、額が膨大である程、競争が生まれ、画期的な案が出やすくなる。
 その為に自動機械技術を発展させておくことは重要な要となる。量子コンピュータ、量子暗号の開発も当然である。
 問題は世界でそれらの技術が共有出来る日が来るかどうかなのである。
 一国や一勢力が中心となる時代は終わった。これからは連帯が重要となる時代である。米国が欧州と共同歩調を歩み始めた様に、中華がロシアと共同戦線と張っている様に。少しずつ輪を広げて行けば、いずれは「万人の平和」への道が開かれる。
 世界は東西に分かたれている。しかし、そのお蔭で発展もしている。対抗勢力があれば自ずと競争力も生まれる。
 技術の進歩が旧き叡智を再確認し、伝統を活かせる社会になるのであれば、それも又善しである。
 私は宗教と科学が対立するとは思わない。相互に発展していく道がある筈だ。神学は永遠に神学論争をやる訳ではない。どこかに全てを納得させる答えもあるのだ。そう信じて発展していくのが人類の道ではなかろうか。
 コロナウィルスや経済危機もあるが、それは人類が乗り越えていくべき試練だとも解釈出来る。ただ、残念なのはその道のりに至るまで無数の犠牲が生まれるのである。過去の歴史がそうであった様に。
 だから、これを読んでくれる方々よ。諦めないで欲しい。絶望はある。自分も絶望しつつある。失うものも多くある。愛するものを失うのは避けられないのだ。いつか、困窮して、絶望して、自分も自死するかも知れない。全てを諦める日も来るかも知れない。だが、その日まであがこうではないか。そして、後代に遺産を遺すのだ。金でも良い。生き方でも良い。思想でも良い。技術でも良い。何でも良い。人はそうやって紡いで進歩し続けたのだ。私は人を信じたいと願う。愚かだと言われるかも知れない。世間知らずと言われるかも知れない。だが、挑戦だけは止めない。信仰が死にかかっても神が支えてくれると信じて、時に倒れ、時に泥臭く進む。それが人の道の一つなのではないか。
 この具申をもって締めくくるとする。

 ここまで読んでいただきありがとうございました

―了―
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