第59話

文字数 523文字

 *


 二月。今年もこの季節がやってきた。
 運命のペアを見つける忌まわしいゲーム。
 悪食高校特別科の卒業生たちが寮に帰ってくる。
 今年はこの子たちが地獄に堕とされる。

 春奈はオーダーメイドの

を手にとる。白い服。白いフルヘルメット。レフリーのそれだ。
 となりでは、蘇芳が黒い処刑人の衣服をまとっている。

 春奈たちも前任者から託された。あれから十年。大学卒業後は悪食高校で教鞭(きょうべん)をとり、生徒の信頼を得つつ、ひとたびゲームとなれば、なるべく多勢が死ぬよう導かなければならない。コウモリのような存在。

 そして、次に『あなたをゆるすよ』ゲームに成功する者が現れるまで、この役目は終わらない。

。スイッチを入れられれば、一瞬で死ぬ。だから、逃げることも逆らうこともできない。

 参加者のなかには、レフリーや処刑人を殺そうとする者もいる。つねに危険ととなりあわせだ。
 何よりも、少年少女が殺しあうさまを見続けていると、心がゆっくりと壊れていくのを感じる。

 だが、これが粛清を免除された者の宿命なのだ。

「春奈。気をつけて」
「涼夜こそ」

 抱きあい、無事を祈りあってから、二人のステージへと歩きだす。
 運命の相手を殺すゲームへ。



 了
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