一節 社会 四

文字数 7,446文字

 男が白輝が泊まる病室をノックする。禿げた頭を押さえた右手が頭皮を後ろにひっぱっている。治療を終えてからどっと疲れを感じた男は朦朧とする頭でどうにか自室まで歩き気を失った。そこから六時間後の現在朝八時に男は起きた。雨は止んだが黒い雲が霧のように空を漂っている。瓦解した廊下の壁からは水に流れた生ゴミの臭いが入っている。
「あ、先生だ。今からお仕事かぁ?」
上階から降りて来た五人の子供が男に駆け寄る。
「まぁ、そんなところだ。お前たちはいつものか」
先頭にいた歯抜けたした男の子が止まる。その背後にいた双子の姉妹の妹は男の足に抱きつききゃっきゃっと嬉しそうに笑っている。少年の後ろにいる男の子はポケットに手を入れそっぽを向いている。そのさらに背後にいる眼鏡の上に髪がかかっている女の子の体は震え過呼吸になっているような咽た息遣いをしている。その隣には双子の姉が腰をさすり心配そうな面持ちでその少女を見ている。男は双子の妹の頭を撫でながら膝を落とし視線を合わせた。
「昨日はシミモクが文字を教えてくれたんだ。だから、後でちゃんとシミモクを褒めてくれよな」
歯抜けの少年が言った。男は一番奥で震えている女の子を見る。
「あぁ、わかった」男は歯抜けの少年を見る。彼は胸を張って誇らしそうな顔をしている。「終わった後はちゃんと体を洗うんだぞ」
「わかってるって、病気になったら俺たちが困るからな」
「もう、シャポンジはいつもうるさいわ」
双子の姉妹の妹が歯抜けの少年をふんっと睨む。
「この生意気な奴め」少年は拳を上げ妹に走り出す。妹は高笑いしながら逃げて行く。「待てこらー!」
「スクーン」彼は五人の中で一番警戒心が強い人間だ。「みんなにやめ時はいつでもあると伝えといてくれ。こんなことを本来は–––––」
「見える範囲で人間としてやるべきことをやってるだけだ」彼の後ろにいるシミモクはこれからのことを想像し手を口に抑えて出そうな胃液を必死に歯止めをかけている。「そうしないと人間である証明ができないから」
「こんな状況を作った私たち大人に責務はある。だからお前たちがそう背負うことはない」
「こいつらはどうか知らないがいつか俺はここにありふれた大人になる。だから、せめてまともな間だけは死んだ人たちを弔ってやりたい」
少年は瞼をそっと細める。手が入っているポケットがほのかに動いた。スクーンは滅多に人と向かい合って話さない。彼が歩き始めるとシミモクも震わせた足を懸命に動かして重そうに歩いていく。それを支えるように隣にいる双子の姉も歩く。男は少年たちと過ごすようになり四年近くなるが全く彼らのことを知らない。双子と初めて会った時は西欧の顔立ちをした姉は綺麗な身なりをしていたがアジアの顔立ちをした妹は見窄らしい格好だった。肌が黒い少年シャポはゴミ山で餓死しそうだったのをたまたま見かけ助けた。自らをスクーンと名乗った少年は腹部を銃に撃たれ死にかけだったところを助けた。彼の全身には誰かの返り血があった。シミモクは定期的にここでは誰にでも文字を教えていると噂を聞き通っていた。そしてみんな気がつく頃には三階で暮らしていた。薬品を盗んだり面倒ごとを起こすこともしないので男は何も言わずただ彼らを受け入れた。男は白輝がいる部屋のドアを開ける。朝日が窓から差し込み室内は光に満たされている。仄かな黒雲を通しているせいで煮え切らない明るさであるがそれに照らされる黄金の髪は本来の朝日の光のように鮮やかな鋭い光沢を放っている。白輝が背を男に向けているのでその長い髪が満遍なく瞳に映っている。
「昨日は助かった。ありがとう」
「–––––––––––––––––––」
「今から彼らのところに事情を訊きに行くがついてくるか」
「–––––––––––––––––––」
「…………そうか。気が向いたら来るがいい。ステーラが帰ってくるのは午後五時過ぎだ。それまでここにいるといい」
男は扉を閉める。音が鳴らないようにそっと。少し顔をうつ伏せ瓦解した壁から見える子供達を見る。昨日の洪水で流されここまできた子供のご遺体にみんなで手を合わせ拝んでいる。それが終わると二人で子供を持ち上げて手製の代八車に乗せた。荷台にはもう二人もの子供のご遺体がある。
 この世界で人間として生きるためにか。



 荷台を後ろから押していたシミモクが胃液を吐く。何も入っていない胃が吐くために収縮する痛さはさながら手で直接握られたかのような痛さだ。酸味がある黄色の液体は地面に向けられた口内から外に出ていくが後に舌に触れたその液体の味はひどく不快に残る。こぼれ落ちそうなほどに見開いた眼球から涙が出て眼鏡を濡らす。
「落ち着いて」双子の姉が背中をさする。「息をゆっくり吸いましょう。できるわ。シミモクなら」
代八車の引き手にいるシャンポがシミモクの嗚咽を聞くと振り向いた。
「またかよ。別に無理してこなくていいんだぞ」
腕を組み露骨に眉間を寄せている。
「こればっかりは私もシャポンジに賛成。お姉ちゃん、夕日が暮れるよ」
荷台の後ろにいる双子の妹が毛先をいじりながらツンケンと言った。二人ともシミモクを見る瞳はとても冷ややかで鬱陶しそうだ。
「だめよ。私たちが捨ててしまった感情をシミモクだけが持ってるの。だから、彼女が辞めたいというまで私は付き添うわ」
彼女は背中をさすりながら不機嫌な二人を意思のある強い瞳で見る。
「なんだよそれ。別に早く終わればいいだろ」
「そうだよ。私たちだって今日を生きるために働かなくちゃいけないの」
その瞳に強い反感を覚えた二人は声を尖らして言い返した。
「シガルとシャポンはどうしてみんなを弔うの」
「そのこととこのことは」
「関係ない」
声を張って二人が言った。堂々と言い放つ二人を前に彼女は「そう」と声を漏らした。
「いいの」シミモクが息を吐き出すがもう胃液は出ない。「ありがとう、蝉」口を押さえ嗚咽を漏らす。「私も……後で来るから」
「本当に嫌ならこいつらはもう先に行っている。暇だから構って欲しいだけだ」
同じく荷台の後ろにいるスクーンが向かい側にある歩道を見ながら言った。
「はぁ?意味わかんないんですけど」
「全くそうだ。本当にむかついてるから––––––––」
「こんなシャポンジと一緒にしないでよ」
シガルはシャポンを指刺し足を地面に叩きつけスクーンに叫んだ。
「なんだとシガル」
シャポンは拳を上げシガルに駆け寄る。シガルは高笑いし逃げ始める。
「お前もあいつらの言動を気にすることはない。深い意味なんてないに決まってるからな」
「お前じゃない、蝉よ」背中をさすっている蝉はスクーンに背を向けたまま答える。「けど、ありがとう。知ってるけど誰かに言われたら多少は楽になったわ」
「………………」
二人が駆けている道はゴミが散乱しその下にはヘドロがある。それを避けて通ることは当然できないため五人の服は元々ある汚れの上にさらにヘドロがこびりついている。路地裏の闇には倒れている大人が何人かいる。本当に寝ているだけなのかそうではないのか。彼らはなんとなくわかるが近づくことはしない。大人は身勝手で大変恐ろしい怪物だ。万が一があれば最悪の事態になる。豪雨の後の朝は路地裏に立つ大人がいない。時間が経てばどこからかまた戻ってくる。だからそれまでの間はこうして外でも騒いでいられる。つかぬまの子供らしい時間と現実が交錯する。それがここにいる子供たちの日常だ。





 昨日にステーラが通った闇市を子供達は通っている。闇市が近くなってから子供達はみな帽子を被りフードを深く被った。そして顔をうつ伏せ一言も発さずに歩いていく。荷台に乗せた子供たちのご遺体は布を被せ周囲にはわからないようにしている。シャポンが先頭で引き手を引き荷台の後ろから四人が押している。両端にはスクーンと蝉がおり真ん中にはシガルとシミモクがいる。まだ多くの店が開いてないため人通りもあまりなくステーラの時とは違い寂れたシャッターが軒並み並んでいる風貌は時代にとり残された商店街のようだ。帽子を被った破れた衣服を着る男が行き交う彼らを凝視する。大きな外套を着ている背格好がわかりにくい彼らをジトッとしたよだれのようなぬめりがある瞳で見る。荷台を押しているシガルの手が震えている。
 くそ。くそ。
恐怖を感じながらも何もできない無力な自分にシガルは苛立っている。自分たちが惨めだと思わざるをえないこの状況を経験するたびにはらわたが煮えくりかえるほどにむかついてならない。しかし、こうなるといつも自分より手が震えたシミモクが自身に体を寄せ喉を震わしながらも「大丈夫だよ」と耳元で呟く。ゲロ臭く、鼓舞にすらなるはずもない弱々しい声でだ。シガルの顔は自然と自身の手の隣にある腕の震えを抑えようと懸命に荷台を握っているシミモクの手を見てしまう。シガルは片手をシミモクの手の上に軽く重ねる。二人の震える手が交錯し互いの体温が混じり合う。汚れた男が過ぎて行く。その時間はたった数十秒でしかない。だが、その一瞬は彼らの生死を分けるのには十分な時間である。



 闇市を抜け住宅街を抜けゴミ山の近くに密集している居住区につく。太陽を隔てる建物がなくなるためここからの道中は明るいものとなる。だがゴミ山に近いその道はかなりの異臭がする。彼らの歩く歩道からゴミ山を見ることはできない。だがすぐに近くにあると錯覚してしまうほどの実体的な臭いがある。ステーラが通ったペンシルビルの道と逆側の道に彼らは進んでいる。しかし、トタン屋根の家が見えたりゴミ山に向かう人たちとすれ違ったりさほど見える景色に差異はない。ここにいる人間は彼らを見ることは滅多にない。顔をうつ伏せているかただ呆然と歩いている人間しかいないからだ。それは日没でも日の出でも変わることはない。
 やがてゴミだめの異臭がなくなりぼろぼろの居住区がなくなるほど歩いた。彼らは貧民外区と一般地区の境目にある瓦礫の平原を歩いている。ここではかつてあったビルやマンションなどの建物が全て倒壊し瓦礫の山だけが残っている。あらかじめ代八車を通すために瓦礫を撤去した道以外はガラスの破片や赤褐色になった瓦礫などが雑草のようにそこら中にある。未だに未回収のご遺体の一部なども大して珍しくないが子供達が気づいた範囲で回収したおかげで幾らかはマシにはなった。雨が降った後でもこの荒れ果てた場所ではなんのにおいもしない。誰かの写真だてや飛び出た綿が朱殷に染まっている人形など誰かがいた跡しか無い。緩衝地帯となるここを嫌って誰も住まないのはいい点だがいつまでもここに残る衝突の後はご遺体を運ぶ彼らにとって気が滅入る風貌である。シャンポが顔を上げフードと帽子を取る。
「教会だ。もう一息だぞ」
息を切らしながらみんなに聞こえるように喉を張って言った。後ろの四人も息を切らしながらフードをとり帽子を取った。時刻は十時近くになっている。夏の太陽から彼らを守る瓦礫の影があるが熱いことには変わりない。教会を見上げた五人は誰も弱音を吐くことなく固唾を飲み最後の踏ん張りをみせる。
 教会の近くにいた大衣と糞掃衣を着た男が子供たちに気づく。一面が瓦礫の影に隠された荒廃した道を汗水を垂らし歩きながら到着地点を見つめる子供達はとても勇ましく見える。男は何の得もなく、ただ辛い思いだけをしてこうして無縁仏を連れてくる彼らを深く尊敬している。故に男は近くに来ても決して手を貸さない。

 「おっさん、手を貸してくれよ。あとは教会の裏に運ぶだけなんだぞ」
代八車を引く子供達は教会の正面を過ぎ側面を歩いている。教会の外装は色落ちした白いペンキの部分と元来からペンキが塗られていない壁が混在している。共通しているのは銃痕とひび割れのみだ。ここで起きた少数民族たちと警察との衝突で例外なく全ての建物は壊された。教会もそうであったがここに残った牧師が知人の大工とともに周辺の瓦礫をかき集めどうにか再建した。だから傷だらけでちぐはぐな見た目をしている。
「あと少しでこの行為を手放すのですか」
「はぁー。やっぱり手伝わないんだな」
五人は姿勢をかなり前傾に倒し石のように重い足を上げ代八車を運んでいる。
「こんな時でも」肩で吸う息でシガルの喉はすぐに乾燥する。口を閉じ唾液で潤すと口を開ける。「シャポンジはうるさくて嫌になる」
「なんだぁー」シャンポは間延びした声を上げる。「苦しそうだなぁ」
「私は苦しいわ」蝉は大きく息を吸い黒雲が完全に退いた眩い青を見上げる。「二人が羨ましい」
「お姉ちゃんの分まで私、頑張れるから無理はしないで」
「そうだ。もう着くんだからいいんだぞ」
言葉を切ったあと大きく息を吸う二人の呼吸が聞こえる。蝉はシガルとシミモクが腕を交差させて荷台を掴んでいる手を見る。彼女は息を吸い顔が荷台に触れそうになる程体を傾倒させ力をふり絞る。そして踏ん張る声で言う。
「まだ格好つけれそうだから最後までやるわ」
シミモクは顔全体がしわくちゃになるほど一身に力を入れている。スクーンは瞳を開け前方に顔を向けている。だがやはり息は上がっている。
 教会の裏は墓所になっている。そこにあった瓦礫はできる限り端に追いやられている。雨に濡れぬかるみになった土の上にぽつぽつと墓がある。子供たちと男がいる最奥にある一際大きな墓石は無縁仏の遺骨が埋葬されている。どれだけの数があるかはわからない。ただ言えることはその大半が子供たちであると言うことだけだ。彼らはそこからさらに少し歩き焦げた後が残る土に着いた。子供達はようやく荷台を離しすぐ近くにある墓場の周辺地に密集する瓦礫に座った。
「いやいやこれはこれはご苦労様です」
感情があまりこもってない軽薄な声が聞こえた。子供達はぐったり疲れみな瞳を閉じ思い思いの楽な格好でいるが聞き慣れたその声は見なくとも誰かすぐにわかった。
 この声は牧師だな
と彼らはすぐに思った。牧師はうつ伏せていたり顔を上げている彼ら一人一人にペットボトルを手に当て取らせていく。
「シンさんが火葬の準備を済ませるまで楽にしてくださいな」彼らは示し合わせたかのように同時に蓋を開けみんなペットボトルを天高く上げ一気に水を飲んでいく。「いやぁ、いつもあなたたちが着いた後にこうして来るのは大変しのびないのですが見てしまえば私は絶対に手を貸してしまいますし。うーーん。困ったものですね」
 嘘だ。
 嘘でしょ。
 –––––––––––––。
 茶化さずに素直に言えばいいのに。
 相変わらずなにを思っているかわからなくて怖いなぁ。
顔にすぐ出るシャンポとシガルとシミモクに牧師はニッコリ微笑む。後の二人の反応にもニコニコしているが面白みがないなぁと思っている。ペットボトルを飲み干した彼らは水を飲むときに勢いよく吸った空気をぷはぁーと吐き出した。牧師の上っていた口角が下がり仄かな微笑みに変わる。瞼を開け偶然それを見る蝉と瞳が合わさる。蝉は自然を装いシンの方に顔を向ける。炭が残る地面に並べた八人の子供の顔を一人ずつ丁寧に濡れた布で拭いている。本当は全身を洗いたいが飲み水すら満足に手に入らないここではそれが限度となる。蝉は空になったペットボトルを座っている瓦礫の上に置き棒になった足を意思で動かしふらふらと立ち上がる。蝉の足に当たった石屑が転がり瓦礫にぶつかる虚空な音が聞こえる。四人はもうそんな時間かと思い瞼を開け立ち上がる。瓦礫が無数にかさばる墓地の周縁地には仄かに青みがある濃い影が存在する。その内側の墓所には直接太陽が当たっている。その光景はさながら鬱蒼とした森に一筋の光が差し込んでいるように見える。ご遺体の元に行った子供達もシンから貰った布を使い顔を綺麗に拭いている。暑湿が肌に粘つく夏の雨上がりは幸いにも無縁仏を仄かに暖かくさせ最期の地上の温もりを感じさせている。清涼な空に浮かぶ夏雲は太陽を避けている。なので白亜の陽光が綺麗になった無縁仏の顔に直接当たり色白くさせている。仰向けに並ぶ八人の無情な顔にシミモクの情緒は酷く掻き乱されている。同情なのか。不平等に対する怒りのか。明日の自分に重ねているのか。それら全てがあるようなないようなそんな曖昧さだけがある感情とともに深い幸福を祈る。シンと牧師が無縁仏の前に立ちそれぞれの宗派の儀礼を行う。彼らの後ろにいる子供達も彼らなりの祈りをする。二人の言葉は瓦礫の平原にとうとうと広がっていく。風に転がされた薬莢が瓦礫の間にある暗闇に落ち鉄の音が地上の下から聞こえる。瓦礫に押し潰されている溶けた鉄骨の下には影に埋もれた骨がある。彼らはこの行為に意味がないことを知っている。牧師とシンを含み特別信仰心があるわけでもない。特に子供達は天国や魂なんて知ったこっちゃではない。日々、現実で生きている彼らにとっては死んで仕舞えばそれまでだと知っているからだ。
 祈り終えた大人たちは無縁仏をひとまとめにしていく。そして、シンが彼らに火を放つとまた祈り始める。聖書を片手に持つ牧師は何も言わずに瞳を閉じて彼らを灰に変える焔を真摯に肌身で受け止めている。アンモニアのにおいが充満し始め焔が骨を割る音が鳴る。まるで彼らを咀嚼するかのようになる焔の音が寂幕と響く。焔の先から黒煙に近い煙が天に昇っている。スクーンはその煙が空に溶けていく様を見ている。焔が瞳を乾燥させるたびに瞬きをし飽くことなく露と消える煙を見つめる。シンの祈りが終わるとみんな瞳を開け焔を見つめる。揺れ動く焔は偶に炯然とした光を放ち骨を噛み砕くような音をまだ鳴らす。子供達はその焔を恐れることなく見ている。肌の表層がかさつきその上を汗がなぞり落ちていく。熱いのだが熱くない。後ろから感じられる彼らの視線にシンと牧師はこの世の残酷さを感じざるをえない。ビニールや空き缶が浮かぶ近くの汚れた川を越えた少し遠くには高層ビルがある。その眼下には大衆が思う日常がある。飢えを知らず死を知らず貧しさを知らず––––偏見を知らず彼らは生きている。同じ地上のそれも空から見ればほんの誤差程度の位置で彼らは同じ人間として生きている。違いはない。人間に差異はない。だが彼や彼女はいなくなってしまった。名前がある個人の人生があると考えられていない。彼らは移民や難民やガイコクジンとして生きている。それが大衆が思う事実だ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み