第20話 山口より愛をこめて。

文字数 7,724文字

 山口駅を背にしてパークロードを進んでいく、るるせさんとわたし。商店街のある通りを抜けると、青々とした新緑の街路樹が日差しを遮るように空高く生い茂る。
 右手には県立図書館。左手には県立美術館、博物館、歴史資料館が続く。

 るるせさんに、
「桐乃さん、お昼食べなくて大丈夫ですか」
 と聞かれてようやく気づいたのだが、昼食を食べていない。普段、仕事のシフトの関係で夕方にお昼休憩をとるので、時間の感覚がだいぶ人とはずれているのだと思う。わたしのことはどうでもいいが、るるせさんにひもじい思いをさせては申し訳ない。
「どこかお店があったら入りましょう」
 というゆるっとしたかんじで、道を進む。

 しかし、なかなかそれらしいお店がない。
 おまけに、前回の湯田温泉から山口へのひとり歩きを途中で断念した桐乃。目的地へ近づくにつれ場所があいまいになっていく。迷子である。道路標識を頼りに進むも、その表示も、まるでこうなることを狙ったかのように大雑把(おおざっぱ)なものへと変わっていく。
 ここでも文明の利器をフル活用して、るるせさんが窮地(きゅうち)を救ってくださる。他県から来たひとに現地の地図を読ませる鬼の桐乃。まさしく鬼の所業である。
 (桐乃はわかりやすくデフォルメされたもの以外、地図が読めないのである)

 るるせさんの解析を頼りに、少し勾配(こうばい)のきつい坂道をのぼっていく。しばらくして、お寺のような場所にたどり着く。
「たぶん、このあたりですね」
 お寺を通り過ぎて、すぐのところに広場へと続く入口がある。
「このなかだと思います」
 と、るるせさん。
「はい、行きましょう」
 と、わたし。

 るるせさんの見立て通り、まさしくそこが目的地、ではあったのだが。
 なんと、瑠璃光寺五重塔、屋根葺き替え工事の真っ最中だったのである。

 ガーーーーーン…………

 膝から崩れ落ちそうになるわたし。
 だって、そんなまさか、よりによって今。

「工事中のようですね」
 とつぶやくるるせさんに平謝りするわたし。
「すみません、せっかくここまで来ていただいたのに」

 瑠璃光寺五重塔(るりこうじごじゅうのとう)は、1442年、室町時代中期に建立(こんりゅう)された、日本三名塔のうちのひとつであり、国宝である。
 せっかく山口にいらしたるるせさんに、ぜひお見せしたかったのだ。それがまさか(あだ)となるとは。
 (あとで周囲の人たちに顛末を話したところ、みな一様(いちよう)に「工事中とは知らなかった」とのことである。ちなみに葺き替え工事は令和8年頃に完了の予定だそう)

 思いきりへこむわたしと、
「戻りましょうか」
 と怨み言ひとついわずに切り替えてくれる、るるせさん。
 そこでふと、とある立て看板が目に入る。
「これ、行きたいです」
 と、るるせさん。
「あ、はい、もちろん」
「どこにあるんだろう」
 キョロキョロと周囲を見渡す、るるせさんとわたし。
 すぐ近くに、なにやら(おもむき)のある建物があった。
 もしかして、これ?
「あ、ここみたいです」
「本当ですね」

 【明治維新史跡 枕流亭】とある。
 この場所で、薩長同盟のそうそうたる志士たちが密議をした、とのこと。
 こちらについては、るるせさんが『修羅街挽歌 山口県るるせトリップ』第4話「枕流亭」にて、写真とともに詳しく書かれているので、そちらに筆を(たく)することにしたい。

 https://novel.daysneo.com/sp/works/episode/f1236bfc0600272aba4912f70637600a.html

 しかし、この枕流亭(ちんりゅうてい)。普通に考えれば、かなり重要な歴史の一幕に使われた場所のはずなのに、やたらと無防備というか、無造作(むぞうさ)にポツリと存在しているのである。五重塔が工事中のためか、ちらほらと観光客らしき人たちの姿があるだけで、公園や建物を管理していると(おぼ)しき人はまったく見当たらない。
 入口からなかを(のぞ)くと、どうやら靴を脱いで上がるようになっている。灯りはついているし、入口の看板にも開館時間の表示がある。そして無人である。
「これ、入っても良いのですかね」
 とるるせさん。
「土間に靴の跡があるので、だれか出入りしたあとだと思います。入っても大丈夫でしょう」
 入る気まんまんのわたし。
 靴を脱いでなかへ入ると、密議に参加した薩長同盟の面々の写真とプロフィールが大きく展示されている。

 薩摩藩からは、西郷隆盛、大久保利通、小松帯刀。
 長州藩からは、木戸孝允、広沢真臣、品川弥二郎、伊藤博文。

 そして2階もあり、普通に上がれるようになっている。昔ながらの、足場が(せま)く急な階段をこわごわとのぼり、座敷へと足を踏み入れる。
「すごい……」
「すごいですね……」
 畳敷(たたみじき)の、意外と小綺麗な座敷である。開け放たれた障子(しょうじ)。座敷の端に座りながら風流な庭のようすが一望できる。工事中でなければ、五重塔も見える。
「これは、ここに座って外の景色を眺めたでしょうね、きっと」
 といったものの、密議ならば、人目につかぬようおそらく障子は閉め切っていただろう、と思い直す。天井にはいくつもの染みが浮かんでいた。

 わたしは地元民ながら長州藩の歴史には詳しくないのだが、なんだかすごいものを見てしまった、ということだけははっきりとわかる。
 歴史に造詣(ぞうけい)が深いるるせさんは、より深く感じ入ったようすで、この思いがけない僥倖(ぎょうこう)を喜んでくださったらしい。おそらく地元民でも、この枕流亭の存在を知る人はそう多くはないのではないか、と思う。そのくらいひっそりとした(たたず)まいであった。超穴場スポットである。
 ここまで来ていただいたのに無駄足にならずにすんで本当に良かった……と、わたしはそっと胸を撫で下ろしたのであった。

 枕流亭をあとにし、来た坂道を戻る、るるせさんとわたし。
 そのとき、ふいに曇天(どんてん)の空からゴロゴロと不穏な雷鳴がひとつ、辺りに(とどろ)いた。
「雨が来そうですね」
「そうですね」
「博物館まで間に合えば良いのですが」
 そう、五重塔が見られなかったので時間が空いて、ついでに博物館へ行ってみよう、ということになったのである。
 坂道を降りて、まもなくすると博物館が見えてくる。









 山口県立博物館の庭には、蒸気機関車が展示されていた。近づいてみると、梯子(はしご)がかけられていて、どうやらなかへ入れるらしい。
「入ってみましょう」
 いそいそと梯子をのぼる、るるせさんとわたし。
「すごい」
「すごいですねぇ」
 先ほどの枕流亭のときと同様、互いにつかの間、語彙力(ごいりょく)をなくして、ただ感嘆の声を漏らす。
 各部分にそれぞれ説明が書かれたプレートが取りつけられたなかで、操縦桿(そうじゅうかん)というのか、いわゆるハンドルに白い紙が貼られており、
「帽子のわすれもの、預かっています」
 とのメッセージに、思わずほっこりと笑ってしまう、るるせさんとわたし。おそらく見学に来た子どもが忘れていったのだろう。

 貴重な機関車を見学できるよう、とくに制約もなく展示されているのがすごいと思う。先ほどの無人の枕流亭も(しか)り。荒らしたり、展示物に害をなす見学者がいないことを前提とした、秩序のある空間。
「さっきの枕流亭といい、太っ腹ですよね」
 と、わたし。
「そうですねぇ」
 とうなずくるるせさん。
「桐乃さんは、乗り鉄の素質がありますね」
「えっ」
 そんなことをいわれたのははじめてで、なぜか動揺してぶんぶんと首を横に振って否定するわたし。
「いや、たぶん、電車に乗ることが少ないから、珍しがっているんです。小さい子どもが電車を好きなのと同じ理屈で」
「なるほど」

 ……と答えたものの、あとからよくよく考えてみると、確かにわたし、電車を見るのも乗るのも好きだな、と気づく。ひどい乗りもの酔いをする(たち)なので、乗りもの全般苦手なのだが、そのなかで唯一、電車だけはあまり酔ったことがない、ような気がする。
 各駅停車の、いわゆる鈍行(どんこう)が好きだ。
 あと、電車も好きだが、駅も好きだと思う。(さび)れた無人駅でペンキの剥げかけた椅子に座り、一時間に一本しか来ない電車をぼんやりと待つ、その時間がさほど苦にならない。むしろ好きだったりする。
 るるせさんの「目」は、鋭いのだ。

 博物館への入口がわからず少々まごつきながらも、どうやら2階に入口があるようだとわかり、階段をのぼっていく。
 アカデミックな世界に触れることなく生きてきた桐乃、中原中也記念館に続き、実は生まれてはじめて体験する博物館である。

「この小平浪平(おだいらなみへい)というひとは、茨城県の日立製作所の創業者なのですよー」
 と、フィラメント電球のコーナーをぼんやり眺めていたわたしを呼び寄せて説明する、るるせさん。
「そうなんですか。山口県には日立製作所笠戸事業所もありますし、茨城県とは縁がありますねぇ」
 と、わたし。
「縁、ありますねぇ」
 と、しみじみとうなずくるるせさん。

 次の分野へ移動する前に、ホログラムというのか、機械に手をかざすとてのひらに吉田松陰や高杉晋作、久坂玄瑞などが現れてなにやら話しかけてくる、というものがあり、るるせさんに勧めてみるわたし。
 るるせさんのてのひらに現れる、カラーの吉田松陰。
「おお、すごいですね」
「すごいですね」
 お次は、高杉晋作。
「なんかすごい元気な高杉晋作ですねー」
 と呑気(のんき)なわたしとは裏腹に、困惑顔のるるせさん。
「どうかしましたか?」
「いや、僕、ずっとお説教されているのですが」
 ほとほと困り果てたように苦笑する、るるせさん。ゲラゲラと笑う、鬼のような桐乃なのであった。





 モーターの次は、地質学のエリア。
 ここからは写真撮影OKとの表示があり、ご自身の専門の石炭に関連する展示物などをテキパキと撮影していくるるせさん。
 一方、迫力満点の恐竜の骨格標本をぼへーと眺めるわたし。そうかと思えば、ケースのなかに展示されている、やたらとでっかい

の化石に、
「すごい大きいカメの化石が」
 となぜか興奮するわたしを生温かい目で見守る、るるせさん。メタセコイアの化石もある。メタセコイアは化石だと長年思い込んでいた桐乃だが、元々は植物なのである。最近になってそれを知った。そういえば、それをわたしに教えてくれたのも、このるるせさんなのであった。

 口を開けてぼへーと展示物を眺めるわたしに、いろいろと説明をしてくださるるるせさん。彼に聞くと、たいていのことは答えてくれる。頭のなか、いったいどうなっているのか見てみたいくらいである。
「るるせさん、守備範囲、広すぎます」
「広くないですよー」
 いやいや、と笑って否定する、るるせさん。
 ぼんやりと世界を眺めているだけのわたしとは違って、勉強家で努力家のるるせさんの目に映る世界はきっと解像度が高く、いろいろなものがくっきりと見えているのだろうなと思う。

 次は動植物のエリアである。











 お馴染みの蝶の標本(ものすごい種類が揃っている)や、さまざまな色をした昆虫、そして実際に遭遇したら悲鳴を上げるに違いないサイズのバッタみたいな虫たちの標本をおそるおそる眺めていく。
 すると、なにやらものすごくリアルな動物たちが展示されているではないか。
 大興奮の桐乃である。
「るるせさん、すっごくリアルな動物たちがいます」
「本当ですね」
「あ、ここ、ソファがあります。座れるみたい」
 中央の動物たちのエリアの向かいにソファが置かれている。早速、座ってじっくり眺める、るるせさんとわたし。
「本物みたい。毛並みもリアルですね」
「そうですね。おそらく剥製(はくせい)でしょう」
「はくせい……」
 先ほどの蝶や昆虫などもおそらく本物なのだ。この動物たちだってそうなのだろう。少ししんみりとしながらも、まじまじと観察する。こんなに間近で動物たちを見る機会は滅多にない。わが家の猫たち以外。

「桐乃さんは、動物が好きですよね」
 と、るるせさん。
「えっ」
 びっくりするわたしに、違うんですか? という不思議そうな目を向ける、るるせさん。
 わからない。考えたことがなかった。
「好きというか、えっと……」
 ここで「はい、動物が好きです」と素直に答えられないのが、わたしの面倒な性格を表している。
「生きている動物は、怖い、です。こうして遠巻きに眺めるくらいがちょうどいい、のです」
「なるほど」
 好きかどうか、という問いの答えにはなっていないが、わたしの生きものに対するスタンスは基本的にこういうかんじ、なのだと思う。おそらく猫以外は。

 次は天文学のエリアである。この空間だけ照明が落とされていて薄暗い。そのなかに、小さな星や惑星が浮かび上がる。
 わたしは星や空を眺めるのが好きだ。これについては自覚がある。子どもの頃に学校行事で一度だけ行ったことのあるプラネタリウムがとても楽しかった。星にまつわる神話も好きだ。漫画では『聖闘士星矢』が好きだった。十二星座はこの漫画で覚えた。

 博物館、すごいな、とあらためて思う。
 こんなにたくさんのジャンルの世界を見られるとは思っていなかった。

 最後のエリアは歴史である。
 山口県の歴史といえば、毛利氏、大内氏。そして長州藩である。
 るるせさんが『修羅街挽歌 山口県るるせトリップ』第5話「山口県山口博物館」のなかで触れられているが、「毛利氏が皇族の血脈であることはあまり知られていない、ということが書いてあった。」という一文に続く見解を読んで、なるほど、と納得した桐乃であった。

 こうして博物館を堪能(たんのう)したるるせさんとわたしは、山口駅へと向かう。先ほどは雷鳴に驚かされたが、幸いにも雨は降っていない。なんとか持ちこたえてくれそうだ。時計の針が16時を指し、サビエル記念聖堂の鐘の()が鳴り響く。
 新山口駅を経由して、わたしの地元で遅い昼食兼夕食をとる予定である。
 駅のホームで電車を待つあいだに雨が降り始めた。なんとか降られずに済んでホッとする。夕方の電車は、途中の停車駅で乗り込んでくる学生たちの集団で混み合ってきた。るるせさんとわたしは無事に座れたが、混雑しているのと、歩き回った疲れが出てきて口数は少ない。
 新山口駅で山陽本線へと乗り換える。車窓から見る景色は雨に濡れている。とうとう本降りになってきたか、と思いながら電車に揺られる。

 地元の駅に降り立つと、雨はほとんど止んでいた。
 僭越(せんえつ)ながら、わたしの勤務先にるるせさんをご案内して、ここでようやく食事にありつく。散々あちこち連れ回したせいで、さぞかし疲労困憊(ひろうこんぱい)に違いない。本当に申し訳ない。
 事前に話は通していたが、わたしがお客さんの立場で職場を利用することはまずないせいか、なんやかやと至れり尽くせり、文字通り、上げ膳据え膳のVIP待遇である。申し訳ないが、ありがたい。サービスで提供された食べきれない料理は、あとでホテルで食べてもらおうと、容器に詰めてるるせさんにお渡しする。

 19時を過ぎて、だんだんと日が暮れていく。
 スマホで時刻表を調べて、新山口駅行きの電車に乗るためにふたたび駅へと向かう。時間があればほかにも行きたい場所があったが、一日にすべてを詰め込むには少々ハードなスケジュールだった。

 人の(まば)らな駅のホームで電車を待つ。
 そういえば、と気づく。
「るるせさん、あの、ピースの写真、わたしも撮らせてもらっても良いですか」
「いいですよー」
 新山口駅で初顔合わせのときは、わたしは写真を撮っていなかったのだ。


 ピースなのに指をしまい忘れている間抜けなわたし。なんならブレブレである。うちの猫たちもよく舌をしまい忘れて、ペロッと先っちょがはみ出したままになっているが、あれはたぶん間抜けな飼い主に似たのだろうなと、納得した次第である。

 電車がホームへと近づいてくる。
 ふいに、隣に立つるるせさんが、
「人生というのは、こういう思いがけない出会いやできごとをもたらしてくれることがあるのですよね」
 みたいなことを唐突にいいだすので、
「藪からスティックになんですか」
 と思わず突っ込んでしまう。
「いや、もうすぐお別れだから、締めに入ろうかと」
「この状況でいきなり人生を語り出すから、なにごとかと思いましたよ」
 そんな軽口を叩きながら電車に乗り込む。昼間とは違う、やけにきれいな電車だった。一号車だが、運転席はまったく見えない。
 ボックス席に向かい合って座る。
 揺れは小さい。
「電車が新しいせいか、あまり揺れないですね」
 と、わたし。
「そうですね」
 と答えるるるせさんは眠そうで、言葉数も少ない。
 窓の外を眺める。辺りはすっかり暗くなって、街を離れていくにつれ(あか)りが(まば)らになっていく。窓ガラスに自分とるるせさんの顔が反射している。車内は静かだ。

「なんだか、銀河鉄道みたいですね」
 夜を走る列車、からのイメージを、なんとなく口にする。松本零士も、宮沢賢治も、どちらの銀河鉄道も、実はわたしはよく知らないのだが。
「銀河鉄道、よく知らないのですけど」
 とわたしがつけ加えると、るるせさんが少し目を伏せるようにして苦笑いを浮かべる。最後の最後までアホなことをいうやつだな、と呆れられたに違いない。
 夜のなかを列車はひた走る。
 もうすぐお別れだ。

 中原中也記念館から足湯へ行き、道に迷いながらもたどり着いた先は工事中で。そこでたまたま見つけた枕流亭を見学し、博物館へ。
 そしてわたしの地元で一緒にごはんを食べながら、
「おいしいですね」
「楽しかった」
「足湯、最高でしたね」
「中原中也記念館、すごく良かった」
 と今日一日を振り返って、あらためて、濃い一日だったなとしみじみと思ったばかりである。

 新山口駅へと到着する。ホームから改札口を抜けて、垂直庭園へ。券売機の前で、るるせさんとお別れする。
「今日は本当にありがとうございました」
「こちらこそです。ありがとうございました」
「今度は関東にも来てください」
「はい、ありがとうございます。お気をつけて」
「では、また」
「はい、また。おやすみなさい」
「おやすみなさい」
 こうして、るるせさんいわく「にゅるっとお別れ」して、わたしはふたたび電車に乗って、来た道を戻る。

 さっきまではるるせさんがいたのに、急にひとりになると、なんだか妙なかんじがした。
 そのくらい、楽しい一日だったということだ。
 散々やらかして、さぞかし呆れられたに違いないが、それでも山口県でのこの一日が、るるせさんにとって少しでも楽しい思い出となってくれたら良いなと願うばかりである。

「人生というのは、こういう思いがけない出会いやできごとをもたらしてくれることがあるのですよね」
 というるるせさんの言葉のように、人生、なにが起きるかわからない。たとえハードモードであろうと、そう悪いことばかりでもないのだ。

 るるせさんとの今回の旅のエピソードはここで幕を下ろすが、るるせさんの山口を巡る旅の記録は現在も続いている。作家としての鋭い目を持つるるせさんが、山口で見たもの、掴んだもの、その思索に読者のひとりとして触れることができるのは、この上ない喜びであり、楽しみでもある。

 旅先での貴重なお時間を割いて一日お付き合いいただいたるるせさんに、そして、ここまでの長いルポに最後までお付き合いいただいた方々に、心からの感謝を捧げたいと思う。

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