第15話&エピローグ
文字数 1,823文字
「いらっしゃい、颯希ちゃん!」
拓哉が玄関で颯希を出迎える。
「この度は、本当に申し訳ありませんでした!!」
リビングに通された颯希は開口一番に、自分の無謀な考えで静也に怪我を負わせてしまったことを深く頭を下げながら拓哉に謝った。そして、昨日買ってきたお菓子を渡す。
そのことに拓哉は笑いながら返事をする。
「なぁに、颯希ちゃんを守るために負った怪我だから、名誉の怪我だよ。そうだろ?静也」
リビングにいる静也に拓哉が声を掛ける。
「た……ただ単に気付いたら体が勝手に動いてただけだよ!」
静也はソファーに足を投げ出しながら、ぶっきらぼうに答える。そして、颯希の服装を見て、静也が声を発した。
「……今日のパトロールは休みにしたのか?」
颯希の今日の服装は私服だった。水色のハーフパンツに白のシャツを合わせている。実は静也は颯希の私服姿を見るのは初めてだった。制服姿ではないのでいつもより緊張が増している。
「ところで颯希ちゃんはこのデザイン、どう思うかな?制服をモチーフにしたタキシードとウエディングドレスなんだけど♪」
どこから取り出したのか、拓哉がデザインしたウエディング用の服のデザイン画を颯希に見せる。
「わぁ~!素敵なのです!!これ、拓哉さんが考えたのですか?」
「僕の仕事は服のデザイナーなんだよ。それで、今回は颯希ちゃんと静――――」
パシッ――――!!
拓哉の頭上をめがけて、静也がそばにあった剣道に使う竹刀で拓哉の頭を叩く。静也の行動に颯希は驚きで言葉が出ない。
「変なこと言い出すんじゃねぇよ!!」
「痛いなぁ~、別にいいじゃないか……。だって、颯希ちゃんは将来静也の――――」
ドスッ――――。
「うぐっ……」
今度はお腹に竹刀を突く。拓哉から変な声が漏れる。
「これ以上、変なこと言うんじゃねぇよ……」
「ハ……イ……」
静也が明らかに怒りモードな事を察した拓哉はお腹を腕で覆いながら大人しく静也の言葉に従うことにした。
颯希はその様子に頭の上ではてなマークが飛び交っている。
拓哉が夕飯を振舞うというので、颯希はその言葉に甘えて夕飯を頂くことになった。
和やかな食卓で楽しく会話をする。
事件が幕を閉じ、どこか久々の楽しいひと時を過ごした。
理恵はあの後、更生施設に送られた。今回のことは、母親の育て方にも問題があったとされ、本人は事件を起こしたものの更生の可能性は十分にあるとされた。なので、更生施設で心の傷を癒しつつ、社会復帰できるようにしていこうということになったのだった。
理恵の母親は娘が事件の犯人だと知り、半狂乱になって精神科に入院しているという。そして、ブツブツと「世間に笑いものにされる」「世間の恥よ」ということを言っているらしい。警察も「あの母親では確かに娘が可哀想だな」という雰囲気になり、理恵を擁護するような声もあるという。
ある晴れた日の午後、理恵は施設の担当者と施設の中にあるベンチに座って空を眺めていた。その瞳は闇が消えて僅かながら光を含んでいるようにも見える。
「本当のヒーロー……か……」
颯希の言葉で、自分のしたことが間違っていたんだということを感じる。そして、颯希の言葉は理恵の背中を少しだけ押してくれたようにも思える……。
優しい日差しを浴びながら、「母親の虚栄心」という籠に閉じ込められていた理恵は間違った形ではあるがその籠から抜け出すことができた。
そして、同じ境遇の子たちから「希望」となるヒーローを夢見る……。
~エピローグ~
次の日曜日、颯希と静也はいつもの公園で待ち合わせた。
「おはよう!静也くん!」
「おはよー、颯希」
久々のパトロールに颯希は嬉しそうな様子だ。
「今日もパトロール頑張りましょう!中学生パトロール隊、出動なのです!!」
颯希が元気よく声をあげて歩きだす。その顔はとても楽しそうに見える。
「なんか、いつも以上に張り切っているな」
静也がいつもより元気な颯希に声を掛ける。
「だって、静也くんとパトロールは嬉しいのです!だって……、静也くんは……」
颯希が少し照れたような感じになる。
「な……なんだよ……」
颯希の態度に静也がドキドキしながら少し顔を赤らめて聞く。
「漫才のつっこみ役なのです!!」
予想してなかった回答が出てきて、静也が口をあんぐりさせる。
そして、叫ぶ。
「なんだそりゃぁぁぁぁーーーー!!」
静也の声が空に響く。
その近くを小さな女の子がフラフラと歩いていた……。
拓哉が玄関で颯希を出迎える。
「この度は、本当に申し訳ありませんでした!!」
リビングに通された颯希は開口一番に、自分の無謀な考えで静也に怪我を負わせてしまったことを深く頭を下げながら拓哉に謝った。そして、昨日買ってきたお菓子を渡す。
そのことに拓哉は笑いながら返事をする。
「なぁに、颯希ちゃんを守るために負った怪我だから、名誉の怪我だよ。そうだろ?静也」
リビングにいる静也に拓哉が声を掛ける。
「た……ただ単に気付いたら体が勝手に動いてただけだよ!」
静也はソファーに足を投げ出しながら、ぶっきらぼうに答える。そして、颯希の服装を見て、静也が声を発した。
「……今日のパトロールは休みにしたのか?」
颯希の今日の服装は私服だった。水色のハーフパンツに白のシャツを合わせている。実は静也は颯希の私服姿を見るのは初めてだった。制服姿ではないのでいつもより緊張が増している。
「ところで颯希ちゃんはこのデザイン、どう思うかな?制服をモチーフにしたタキシードとウエディングドレスなんだけど♪」
どこから取り出したのか、拓哉がデザインしたウエディング用の服のデザイン画を颯希に見せる。
「わぁ~!素敵なのです!!これ、拓哉さんが考えたのですか?」
「僕の仕事は服のデザイナーなんだよ。それで、今回は颯希ちゃんと静――――」
パシッ――――!!
拓哉の頭上をめがけて、静也がそばにあった剣道に使う竹刀で拓哉の頭を叩く。静也の行動に颯希は驚きで言葉が出ない。
「変なこと言い出すんじゃねぇよ!!」
「痛いなぁ~、別にいいじゃないか……。だって、颯希ちゃんは将来静也の――――」
ドスッ――――。
「うぐっ……」
今度はお腹に竹刀を突く。拓哉から変な声が漏れる。
「これ以上、変なこと言うんじゃねぇよ……」
「ハ……イ……」
静也が明らかに怒りモードな事を察した拓哉はお腹を腕で覆いながら大人しく静也の言葉に従うことにした。
颯希はその様子に頭の上ではてなマークが飛び交っている。
拓哉が夕飯を振舞うというので、颯希はその言葉に甘えて夕飯を頂くことになった。
和やかな食卓で楽しく会話をする。
事件が幕を閉じ、どこか久々の楽しいひと時を過ごした。
理恵はあの後、更生施設に送られた。今回のことは、母親の育て方にも問題があったとされ、本人は事件を起こしたものの更生の可能性は十分にあるとされた。なので、更生施設で心の傷を癒しつつ、社会復帰できるようにしていこうということになったのだった。
理恵の母親は娘が事件の犯人だと知り、半狂乱になって精神科に入院しているという。そして、ブツブツと「世間に笑いものにされる」「世間の恥よ」ということを言っているらしい。警察も「あの母親では確かに娘が可哀想だな」という雰囲気になり、理恵を擁護するような声もあるという。
ある晴れた日の午後、理恵は施設の担当者と施設の中にあるベンチに座って空を眺めていた。その瞳は闇が消えて僅かながら光を含んでいるようにも見える。
「本当のヒーロー……か……」
颯希の言葉で、自分のしたことが間違っていたんだということを感じる。そして、颯希の言葉は理恵の背中を少しだけ押してくれたようにも思える……。
優しい日差しを浴びながら、「母親の虚栄心」という籠に閉じ込められていた理恵は間違った形ではあるがその籠から抜け出すことができた。
そして、同じ境遇の子たちから「希望」となるヒーローを夢見る……。
~エピローグ~
次の日曜日、颯希と静也はいつもの公園で待ち合わせた。
「おはよう!静也くん!」
「おはよー、颯希」
久々のパトロールに颯希は嬉しそうな様子だ。
「今日もパトロール頑張りましょう!中学生パトロール隊、出動なのです!!」
颯希が元気よく声をあげて歩きだす。その顔はとても楽しそうに見える。
「なんか、いつも以上に張り切っているな」
静也がいつもより元気な颯希に声を掛ける。
「だって、静也くんとパトロールは嬉しいのです!だって……、静也くんは……」
颯希が少し照れたような感じになる。
「な……なんだよ……」
颯希の態度に静也がドキドキしながら少し顔を赤らめて聞く。
「漫才のつっこみ役なのです!!」
予想してなかった回答が出てきて、静也が口をあんぐりさせる。
そして、叫ぶ。
「なんだそりゃぁぁぁぁーーーー!!」
静也の声が空に響く。
その近くを小さな女の子がフラフラと歩いていた……。