目覚まし時計の証明②

文字数 893文字


   ☆★☆★☆

「これが問題の目覚まし時計です」
「問題の、ね」
「きちんと鳴るのよ。聞く?」
「はあ。……それにしても、目つき悪いね、これ」
「お目覚めギコくん、ていうの。デパートで見つけて、可愛いから買っちゃった」
「可愛いかなあ」
「可愛いわよ」
「なんか、君の趣味ってさ、いまいちよくわかんないんだよね。変というか奇妙というか」
「なんてったって、あなたとつきあってるんだものね」
「……」
「睨まないの」
「……」
「泣かないの」
「……」
「踊っても駄目。あぴょーん禁止!」
「ちぇ」
「人前でやったら、別れるわよ」
「そんなに嫌?」
「訊くこと自体間違ってると思うわ。……ともかく、目覚ましがきちんと鳴るのを確認してね。『起きろゴルァ』って言って起こしてくれるの。……ほら」
「憎たらしい声だなあ。……ん、二度寝防止機能ついてるじゃんか。こっちの後ろの方のスイッチを切らないと、また鳴るんだろ?」
「そうよ。『遅えぞゴルァ』って言うようになるの」
「それでも、起きれないの?」
「だから、鳴ってないんだってば。それに、止める時はメインスイッチ切っちゃうから、この機能意味ないのよね」
「なんでだよ。サブスイッチにしとけば、また起こしてくれるのに」
「だって、うるさいじゃない」
「……」
「……なによ?」
「いや、君、今、目覚まし時計の存在意義そのものを否定した気がするんだけども」
「気のせいよ」
「そうかなあ」
「そうよ」
「ま、いいけど。……んで? 鳴るのはわかったけど、朝には鳴らないってのは、どうやったらわかるの? セットして、朝まで待つ?」
「それもいいんだけど、起きてたら、鳴りそうな気がするのよ」
「……どういうことだよ」
「だから、起きてたら鳴るんだけど、寝てたら鳴らなそうなのよね」
「いや、どういう目覚ましだよ、それ。あのさあ、いい加減諦めなさいって。な? 無意識に消しちゃってるだけだって」
「だって」
「いいじゃん。な? もうレポートやろうぜ。早くしないと、時間なくなっちまうよ」
「……」
「お代わり、淹れてくるよ。砂糖、二杯でいい?」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み