目覚まし時計の証明⑥

文字数 910文字


   ☆★☆★☆

「わかんないね」
「うん」
「ネットも万能じゃないわね」
「貝に聴覚があるかどうかがすぐにわからないようじゃ、ネットも情報システムとして、まだまだ未熟だってことさ」
「……まあ、勝負はおあずけね」
「ていうかね、ちょっと考えたんだけどさ」
「なに。まだなにかあるの?」
「そもそも前提条件として、君を抜かしたことは正しいんだろうか」
「……どういうことよ」
「だってさ、寝てたってさ、音は聞こえるんじゃない?」
「……認識はできないわ」
「それは木だって同じことだよ。音が聞こえてても、あ、聞こえてるなー、とか認識してるとは思えないけど」
「さあ、木になったことないからわかんないわね」
「まあね。小学生ん時、劇で木役になったことだったらあるけれども」
「……」
「クラス全員一致で、木役はオレに適任、ってなった」
「……あなた、いじめられっこだった?」
「……そうだったのかな。いや、そんなことなかったけど」
「まあ、意味不明なクラスだった、ということで理解しておくわ」
「ともかく、重要な点なんだけども、存在について、どうするのさ。無意識の認識と、意識的な認識に分けてみようか? 前者は認めない? そうすると、随分この世界は欠落しちゃう気もするけどね」
「うーん……」
「犬なり鳥なり魚なり虫なり、どこからが意識的な認識をしてて、どこからが無意識的な認識なのか、わかんねぇし。犬は意識的だと思うけど、虫は無意識的な感じがすんなあ。音が聞こえたぞゴルァ、とか考えてるとは、あんま思えねえもん」
「わかったわよ。無意識も認めるわよ」
「そうすっと、寝てても音は無意識的に認識してるんだから、音は存在した。つまり、目覚ましは鳴った、ってことで、いかが?」
「無意識的に、認識してるのかしら」
「夢とかに出るじゃん。周りでうるさい音がしてたらさ、夢ん中でもその音が聞こえてたりさ。無意識に認識してるからっしょ?」
「……そんな夢見てない」
「忘れてるだけだって」
「……」
「観念しました?」
「……ねぇ」
「……ん?」
「……忘れてることって、存在したのかしら?」
「……」
「……」
「……は?」
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