サイキックの証明①

文字数 850文字

「あれ、君か。どうしたの? こんな時間に」
「恋人の部屋を訪ねていくのに理由がいるわけ?」
「いや、そうじゃないけど。だって、連絡もなしに来るなんて初めてじゃない」
「何事も初めてが無いと二回目もないのよ」
「それはそうだけども。まぁいいや、とにかく入んなよ、寒いだろ?」
「凍りそうだわ」
「今コーヒーでも淹れるよ。コートはそこらへんに置いといて」
「……相変わらず汚いわね。整理整頓とか、そういう単語を知らないわけ?」
「別に困らないしね」
「コートの置き場所に困るわ」
「そこまで言うか。よっと……」
「あ、濃いめにしてくれる?」
「あいよ」
「……」
「……」
「今、どうしてだろう、って思ったでしょ」
「……は?」
「あたしはアメリカンが好きなはずなのに、どうして濃くしろというのか、疑問に思ったでしょ」
「はぁ……そうだね」
「やっぱりね。そうよね……」
「うん……えっと、どうして? あ、そか。今夜は遅くまで、ってことだろ」
「にやけるな。まったく、どうしてすぐそういう方向へいくかなぁ」
「違うの?」
「はいはい残念そうな顔しなーい」
「いや、まあ。……んで、どうして? なんか悩みごとでも?」
「悩みというかね……。ちょっと頭をすっきりさせたくて」
「ふうん」
「……」
「……なんかあったの?」
「まあね。大変なことに気づいちゃって、ちょっと困ってるのよ」
「大変なこと? それで相談に来たの?」
「そうよ。だからあなたのしたいことは、もうちょっと待ってね」
「……」
「オレをそんな奴だとでも思ってるのか? と言いたげね」
「いや、べつに」
「思ってるでしょう。わかるのよ。実はね、相談って、このことなの」
「このこと?」
「そう」
「オレが飢えたオオカミだっていうこと?」
「違うわよ、まあそれも多少の問題ではあるかもしれないけど」
「じゃあなにさ」
「あのね」
「うん」
「あたしね」
「うん」
「テレパシーが使えるようになっちゃったの」
「……」
「……」
「……は?」
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