サイキックの証明②

文字数 1,551文字


   ☆★☆★☆

「今、何言ってるんだコイツ、って思ってるでしょ?」
「いや、ええと」
「また馬鹿なこと言い出した、って言って溜め息つきたいでしょ?」
「いや、あのさ、ちょっと待ってよ。ごめん、もう一回言ってくれる?」
「あたし、テレパシーが、使えるように、なったの」
「はあ」
「聞こえたわね?」
「まあ」
「そういうことなのよ」
「えーと……。なんか、君のジョークには絡みづらいな」
「ジョーク?」
「そうだよ、ジョークを言う時にはさ、なんかこう、いろいろと下準備みたいなものがあるものだろ? 雰囲気を作るとかなんとか」
「ジョークじゃないわよ」
「いや、だからごめん、絡みづらいって。いきなりテレパシーとかなんとか言うんだもの」
「違うって言ってるでしょ?」
「ごめんごめん、んで、誰と交信してるの? ETとはもう接触した?」
「……」
「……なんで睨むんだよ?」
「信じてくれないから」
「いや、えっと……?」
「本気に受け取ってくれないんだもん」
「あの、いったい、なんなの? なんの話なの?」
「だから、テレパシー」
「テレパシー」
「あたしが、テレパシーを、使えるようになった、ってこと」
「うーん」
「なによ」
「いや、ここは笑うべきところなのかと」
「あたしのこの表情を見ても、まだそう言うわけ?」
「いや……えっと、マジで言ってるわけかい?」
「マジよ。本気と書いてマジと読むのよ」
「はあ……あとで、嘘ぴょーん、ひっかかったー、とか言って踊りまわる、ってんじゃなく?」
「じゃなく。あと、嘘ぴょーん、はまずいわ。化石言語よ」
「はあ。……えっと、テレパシー?」
「テレパシー」
「……なんでまた」
「昨日ね、気づいたの。人の心が読める、って」
「ほう」
「サークルの、コンパでね。こう、他の人の言うことが、わかるのよ」
「わかるっていってもな。オレも、君の言うこと、わかるぜ。いや、今はちょっと怪しいけれども」
「違うわよ、そういうわかるじゃないの。なんていうのかなあ、予期する、っていうのかなあ」
「予期する」
「そう。相手が何か言うでしょ? その言うことが、あたしにはわかるのよ」
「……」
「気味悪いかしら」
「いや、気味悪いというかなんというか。じゃ、つまり君は今オレが喋ってることが、予想できているということ?」
「うーん、まあ、そんな感じかしら」
「はあ……じゃあ、この会話も無意味なのでわ」
「なんで」
「いや、だってオレの言うことがわかるんだったら、口に出して話す必要もないってことになるだろ」
「違うの。だってそうすると、あたしの言うことが、あなたはわからなくなっちゃうもの。なんていうかな、発信する力はないの。受信はできるけれど」
「はあ」
「それにね、言うまでわからないの」
「……は?」
「つまり、あなたの言葉を聞くまで、あたしが予期してた言葉だ、ってことはわからないの」
「……ごめん、何言ってるのかわかんねえよ、勘弁してくれよ」
「だから今の言葉も、あなたが言うのを聞きながら、ああ、あたしが予期してたのと同じ言葉だ、ってはじめてわかる、ってこと。聞くまでわからないの」
「……」
「わかった?」
「いや……あの、それってテレパシーっていう?」
「厳密には違うかも。でも、言葉って人の考えから創られるものでしょ? だったら、その言葉が読めたら、考えの一端が読める、ってことじゃない? つまり、テレパシーよ」
「いや、聞くまでわからない、ってのは」
「それは能力の強さの問題よ。あたしがそこまで強い能力者じゃない、ってだけのこと」
「能力者」
「そう」
「能力者」
「そうよ」
「……あのさ」
「なに」
「君、近頃、なんか変な映画か本でも読んだ?」
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