幕間講義 4 改正児童福祉法四条~六条 及び 民法820条・822条 (前)

文字数 6,873文字

愛美:蒼ちゃんお疲れ様
蒼依:愛ちゃんも本当にありがとう
慶久:蒼依さん! 本当に良かったです
中条:はいダウト! 愛先輩の弟はずっと家にいて欲しいって思ってただろ
雪野:中条さんの反応が早すぎます
咲夜:あの。あたしも嬉しいんですけど
彩風:アタシ的にはまずは愛先輩が復学して下さるのが嬉しいんですけど
倉本:これで再び俺が岡本さんをデートに誘えるな
優希:は? んな訳ないだろ。お前岡本さんの友達から要注意人物になってるからな
巻本:何言ってるんだ? そんなの俺ら教師だってしっかりマークしてるぞ?
優珠:何ゆってるの? ロリコン教師なんてわたしが認めるわけないじゃない
佳奈:そやなぁ。岡本先輩にはもうお兄さんがおるからなぁ。出来ればそっとしといて
   欲しいんやけど
九重:メイン二人はしっかりと学生時代の宝物、友情を育んでるのにどうして他の連中は
   ピンク脳なのか
実祝:そう。いつも通りこの話の男は大したのがいない
倉本:それって俺も入って――
実祝:――今更。愛美の前であたしを“そこの人”扱いしたのはもう致命的
佳奈:やっぱお兄さん嬉しそうやね
優珠:そうよ。この腹黒女に毒されてお兄ちゃんまでおかしくなり始めてるのよ
愛美:ちょっと優珠希ちゃん。いつになったらその呼び方を辞めてくれるの?
優希:まあまあ愛美さん。僕はどんな愛美さんでも好きだから優珠と仲良くしてくれた方が
   嬉しいかな?
雪野:妹さん。今度から一緒に登校しましょう
彩風:こっちも早――
優珠:――ちょっとメスブタ。調子乗らないでちょうだい。なんでわたしがメスブタと一緒に
   登校しないといけないの?
佳奈:ウチもそれはちょっと考えるなぁ
咲夜:まさかの駄目出し……
中条:女子同士、仲良くしたら良いのに。それでみんなで力を合わせて男子を蹴散らし
   ましょう!
倉本:男子って、みんないなくなってしまったら、残念がる女子も多いんじゃないのか?
   そこの岡本さんの友達みたいに
中条:……会長。言っときますけど、会長の暴言の噂はあーしの耳に入ってきてますからね
彩風:そして男子の話題はしっかりとチェックしてる中条さん
咲夜:あれ? つまり二年の後輩も男子に興味が――
中条:――切り落として何も無くなった男子なら、あーし的には認めますよ
男子:(――?! 何を切り落としてなくすんだ?!)
愛美:じゃあ中条さんは男子が嫌いって訳じゃないんだ?
中条:嫌いとか好きとかじゃなくて、男子として――
蒼依:――だから理っちゃん。もうこれ何回目?
実祝:そしていつもの流れに
慶久:なんでこんな話ばっかりなんだ? これだったら俺の学校と話題に大差ねーじゃねーか
雪野:岡本さんのご兄弟と同じレベルの話題なんて……恥ずかしいじゃないですか
彩風:……冬ちゃん。言葉は丁寧でも中身はすごい毒だからね
九重:頭はともかく、思春期最後の学校生活だから多少はしょうが無いんじゃないの?
優珠:何よそれ。結局この学校もサルばっかりって事じゃない
佳奈:……じゃあ優珠ちゃん。お兄さんはどうなん?
優珠:お兄ちゃんは愛美先輩だけだってゆってるから良いのよ
優希:優珠……ありがとう。と言うわけで愛美さん今から愛美さんの部屋で二人だけで
   どうかな?
愛美:ちょっと優希く――
巻本:――はぁ? 以前俺がしっかりとした忠告を忘れてんのか? お前らはこれから
   受験なんだからそう言うのは駄目だって言ったろ
倉本:それに関しても、前に俺がしっかり論破したと思いますが
穂高:みんな恋愛に必死ね
優珠:おいショタコン。自分のした事忘れてんじゃないわよ
朱寿:そうなんだよ! もっと言ってやれなんだよ
優珠:……でも佳奈についてはお礼をゆっておくわね
佳奈:ありがとうな優珠ちゃん
穂高:なんか私も船倉さんも複雑よね
直実:大丈夫だ。朱寿には俺が付いてる
朱寿:ナオくん。ありがとう
優希:……あの。矢山さん。出来れば自分の彼女を喜ばせる方法を僕にも教えて頂けませんか?
男性:?!
雪野:……空木先輩
愛美:優希君っ!
直実:その気持ちは買うが、やっぱり好きな女子なら自分の力で幸せにしたくないか?
女性:(かっ! 格好いいっ!)
中条:(……ホントにこんな男子も存在するのか?)
男性:……
優希:確かに……そうかも知れません。ですが、僕は愛美さんを!


直実:分かった分かった。その話はまた今度続きをしようか。それよりもそろそろ本題に
   入りたいんだけど
巻本:そ! そうだな! それで今回の議題は
倉本:【児童福祉法四条~六条】それに【児童福祉法三十三条】と【民法820条・822条】
   及びその他、だったな
中条:……何か矢山さんとあーしらの学校の男子とでは格が違いますね
実祝:もちろん。この学校の男子は大したのが少ない
咲夜:え?! そうかな? 良い男子もいると思うけど
優珠:何ゆってるの? わたしのお兄ちゃんをそこら辺のサルと一緒にしないでちょうだい
愛美:大丈夫だよ。優希君はこの学校の中で一番格好いいんだから、もっと自信を持って!
佳奈:この二人もますます仲良うなるだけや無くて、息も合うてきてんねんな
蒼依:咲ちゃん。ここで空木君を見るって事は、やっぱり私の敵だって認識で良いんだね
彩風:……本当に清くんって全く話題に上がらないんだ……
実祝:そりゃあれだけ声を荒げたら駄目。無理。論外! 以上!!
雪野:そうですね。暴力と暴言だけは何があっても駄目です
倉本:ひょっとして俺って崖っぷちだったりする?
愛美:崖っぷちって言うより、もう谷?
朱寿:愛さんに声を荒げた時点で、わたしは認めてないんだよ
穂高:そろそろ進めないと、矢山さんが困ってるわよ
朱寿:そ?! そんな事穂っちゃんに言われなくても分かってるんだよ
優珠:思った以上に余裕がないのね
佳奈:んなこというたらアカンで? 優珠ちゃんかていつも岡本先輩が~とか言うて情緒不安定
   やんか
雪野:空木先輩の妹さんが……これは良い事聞きました
愛美:ちょっと雪野さん。今の発言、私もちゃんと聞いたからね
咲夜:これは……再三のバトル勃発か?!
実祝:咲夜。もう辞めた方が良い。次レッドカード出たら間違いなく退場
蒼依:……ちっ
慶久:!? だ……だったら俺の部屋で――
中条:あーしらの学校の男子だけじゃなくて、この矢山さんだけが特別?
直実:ありがとうな。でも俺以外にもいい男はいるから、そう言う決めつけは良くないぞ。
   それよりも今回の定義の内、まずは【児童福祉法】から行きたいんだけど良いかな?
巻本:はい。特別講義をお願いします
穂高:今回私は全く活躍の場がなかったから、主に聞き役なのよね
朱寿:もちろんなんだよ! (な?! なんなんだよこの激しい性格の子は。こんな子、
   愛さんの口からも出てきた事がないんだよ!)
直実:ありがとう朱寿。それじゃ今回の講義を始めるな
咲夜:これであたしの活躍も終わりか
慶久:大丈夫です! 俺もです!!
二年:やっぱりどう考えても今年の三年……ひょっとしてやばい?

直実:それでは作中にも出てきたけど、児童とはいくつまでかな?
慶久:はい! 義務教育の終わる15歳までです! それを超えたら働けるので大人と同じ
   です! したがって俺ももう一人前の大人です!
愛美:(……恥ずかしい)
優希:(恥ずかしがる愛美さんはやっぱり可愛いなぁ)
実祝:いくら愛美の弟でも少し酷すぎる。作中でしっかりと18歳未満だって愛美に秘密を
   作らせない先輩が言ってた
朱寿:そうなんだよ。愛さんのお友達が言う通り、児童福祉法により18歳未満が児童と
   定められてるんだよ
倉本:もっと言うと以前“子供の権利条約”でも触れた通り、たった一つの例外を除き、
   基本18歳未満は全員“児童”扱いなんだ
巻本:これは前々回くらいの講義でも話したから、そろそろ覚えておいてくれな
直実:今回の根拠条文がこれだ

【改正児童福祉法】
第四条 この法律で、児童とは、満十八歳に満たない者をいい、児童を左のように
    分ける。

一号 乳児 満一歳に満たない者
二号 幼児 満一歳から、小学校就学の始期に達するまでの者
三号 少年 小学校就学の始期から、満十八歳に達するまでの者

穂高:補足だけど、18歳以上20未満。つまり児童でない成人するまでの人をなんて言うか
   分かる?
優珠:たしか児童以外の……特定……何だったかしら
佳奈:優珠ちゃん。そこまで出てくるだけでもすごいんやけど
慶久:んなの“大人の手前”で良いんじゃねーの?
咲夜:へぇー愛美さんの弟君って結構物知りなんだね
彩風:いや。さすがに違うって事くらいはアタシでも分かるんですけど
雪野:人の話を聞かない岡本さんの弟さんですから、これくらいは想定の範囲内です
九重:頻繁に噂の聞く雪野さんって結構すごいキャラしてるのね
倉本:それをまとめ上げてる俺ってすごいと思うんだけど
実祝:すごくない。それよりも早く講義を進める
倉本:……
愛美:ありがとう実祝さん――それから慶。あんたご飯無しね
慶久:はぁ? 今はババァがいるから関係ないだろ
朱寿:慶久くん?
慶久:――! 分かったよ! しばらくは大人しくしてるよ!
蒼依:(私の単元だったのに、私の入る隙間がなかった!)
優希:……優珠。ひょっとして“児童以外の満二十歳に満たないもの”じゃないかな
直実:お?! 普段使う機会が無い言い回しなのに、よく分かったな
優珠:そんなのお兄ちゃんなんだから知ってて当たり前じゃない
佳奈:その割には嬉しそうやね
穂高:そう。2022年の4月(※)からこの呼称はなくなってるけど、以前はそう呼んでたのよ
彩風:誰も清くんの相手はしないんだ……
直実:劇中でも注釈を付けたけどその根拠文がこれ。

【改正児童福祉法】
第六条の二 この法律で、小児慢性特定疾病とは、“児童又は児童以外の満二十歳に満たない
      者(以下「児童等」という。)”が当該疾病にかかつていることにより、長期に
      わたり療養を必要とし、及びその生命に危険が及ぶおそれがあるものであつて、
      療養のために多額の費用を要するものとして厚生労働大臣が社会保障審議会の
      意見を聴いて定める疾病をいう。

中条:あれ? これだと「児童等」でも良いんじゃないですか?
巻本:中々良い質問だけどそれでは駄目なんだ
朱寿:「児童等」と言うと、乳児・幼児・児童・児童以外の満二十歳に満たないものとして
   扱われるから、もし満18歳・満19歳を指したい場合には“児童以外の満二十歳に満たない
   もの”と指定しないと、児童福祉法からは外れてるから少し意味合いが変わるんだよ
直実:そう言う事。だからまもなく使う事はなくなる言葉だけど、こう言う言い回し、根拠
   条文があった事だけでも覚えてもらえるとありがたいよ
中条:ありがとうございました。とても分かりやすかったです
彩風:あのぅ……例外って……
直実:それは、解釈の応用と別の法律だからまた別の機会で説明するな
朱寿:このお話で最後の方でキッチリと説め――
優珠:――是非お願いします。“直実さん”
朱寿:?!?!
優希:ちょっと優珠?!
佳奈:優珠ちゃん?!
直実:分かった。また説明するからな
中条:――……――……
九重:(う……迂闊に突っ込めないわね)

穂高:それからこれは空木さんに質問だけど
朱寿:(さすが穂っちゃんなんだよ!)
優珠:――
佳奈:今は劇中ちゃうねんから普通にせなアカンで
穂高:……妊婦さんって“妊娠してお腹の中に赤ちゃんがいる婦人“を指すのは知ってる?
雪野:そんなの当たり前じゃないですか
咲夜:いくら何でもそれくらいあたしたちにでも分かりますって
蒼依:今の私が人ごとじゃないからちゃんと調べたんだけど――
朱寿:(何て質問の仕方なんだよ)
愛美:あの。優希君? 何で私のお腹を見てるの?
優希:?! あ! いや。別に理由なんて無いけど――
中条:副会長? って言いたいところですけど……
彩風:……中条さんが迷ってる?!
愛美:優希君? まだ私たち学生なんだから、“そう言う先の事”はもう少し後ね
優希:……もう……少しっ!
中条:はいアウト! 
彩風:あ。いつも通りの答えに
中条:もちろん! 愛先輩が駄目って言った以上、いくら副会長でも駄目!
優珠:あのねぇ。アンタらみんな何考えてるのよ。そもそもこのショタコン教師が嘘ついてる
   ってどうして考えないの?
咲夜:え? お腹の中に赤ちゃんいたら妊婦さんじゃん
雪野:……
優珠:例え出産しても、産後1年間は社会的には妊婦さんとして扱うのよ
愛美:優珠希ちゃん物知りだね。私知らなかったよ
直実:よく知ってたな。さすが優珠ちゃん
優希:――
佳奈:お兄さん顔が怖なってますよ?
優珠:ふ。ふん! わたしは法学部を目指してるんだからこれくらい知ってて当然じゃない。
   愛美先輩もそんな知識で、お兄ちゃんとの元気な赤ちゃんを産めるの?
優希:優珠!!!
佳奈:岡本先輩が絡むと、お兄さんの表情もよう変わりますね
愛美:~~っ!! ごめんっ! ちょっと席外すねっ!
実祝:愛美が逃げた
男子:(岡本さんの……子供?! それって岡本さんとっ?!)
咲夜:すげぇ! 空木君の台詞に「!」が三個も並んでる!
中条:ちょっとそこのアホな先輩。反応するのはそこじゃないですよ。こいつらみんなつまみ
   出しません?
蒼依:私もそれで良いと思う。もうこの講義は女子だけでした方が良いと思う
朱寿:でもこう言う事こそ男性にも知って貰わないと、今みたいに勝手な想像ばかりして
   しまうんだよ
穂高:巻本先生。どうして生徒と一緒になって驚いてるんですか?
巻本:え?! ぼ、わ、俺は動揺してませんよ?
雪野:……動揺しすぎなんじゃないですか? 途中何が言いたいのか判別出来ません
教頭:巻本先生。少しこちらへ
巻本:?! はい分かりました……
女子:(あーあ。岡本さんがせっかく応援してくれてたのに)
男子:(おっしゃ! ライバル一人脱落!)

直実:それじゃ続きなんだけど、優珠ちゃんが答えてくれたように、妊婦さんの定義も
   ちゃんと決まってるんだ。その根拠条文がこれ

【改正児童福祉法】
第五条 この法律で、妊産婦とは、妊娠中又は出産後一年以内の女子をいう。

穂高:だから産後に関する健康状態に関しても、社会的に保証されてるのよ
優珠:そう。だからそこら辺でサルみたいな想像ばかりしてる男子たちはお兄ちゃん以外
   何も分かってないの
雪野:さすが空木先輩です。ワタシが元気な赤ちゃんを産んでも空木先輩がちゃんと守って
   下さいね
彩風:雪野さんの意地でもぶれないこの胆力。本当に本編で意識出来たら全部解決なんじゃ
愛美:……優希君。そう言う話は、後でちゃんとしようね
優希:?! 分かった!!
朱寿:(この二人なら、上手くやっていけると思うんだよ)
直実:朱寿も嬉しそうだな
朱寿:愛さんのお話なんだから当たり前なんだよ
蒼依:(私の単元なのに……私の単元なのにっ!)
咲夜:……あの。蒼依さんが怖いんで席替わって欲しいんだけど
実祝:ん。替わる


直実:それじゃここからは上記を踏まえた上で、当単元のポイントを押さえていこうかと思う
朱寿:わたしが活躍したお話なんだよ
蒼依:私が主人公のお話なのに……
愛美:大丈夫だよ。私と蒼ちゃんの絆の深さをおばさんたちにもちゃんと分かってもらえた
   じゃない
蒼依:そうだけど……
愛美:蒼ちゃんは私との仲が深まるのだけじゃイヤ?
蒼依:そんなこと無いよ。それはとっても嬉しいけど、愛ちゃんの一番の――
朱寿:――!!――
蒼依:――親友だからこそ、愛ちゃんの不安に気付きたかったかな
咲夜:この二人の絆というか、信頼関係も相当だけど、そこに普通に割って入れるこの
   お姉さんもすごすぎる
実祝:その代わりあたしは咲夜と親友する。咲夜が間違ったことしたらあたしが叱る
咲夜:実祝さんっ! ありがとう! その時は迷惑かけるだろうけどよろしくね
男子:(……笑顔の女子って……)
中条:(……なんだ? 今の空気は)……なんか三年の友情とか親友とか見せつけ
   られたら、あーしらも負けてられないって気持ちになります
彩風:それは間に男子がいないからだよね
中条:もちろんだろ。異性の友達なんて所詮成立しないんだ
雪野:中条さんが今までどんな男性とどうされたか垣間見える一言でした
優珠:何をゆい出すかと思えば……そんなのわたしと佳奈の関係の方が無敵に決まってる
   じゃない
佳奈:優珠ちゃんありがとうな。でもそう言うんは争うもんと違うて、お互い育むもんや
   思うで?
九重:みんなこんな進学校でもちゃんと友達関係出来てるのね
蒼依:本当に今回は迷惑かけてごめんね。でもたくさん力と勇気をもらえて嬉しかったよ
愛美:そんなの気にしないでよ。蒼ちゃんの力にだったらいつでもどれだけでもなりたいん
   だから
蒼依:本当にありがとう愛ちゃん
朱寿:……

―――――――――――――――――中編へ―――――――――――――――――
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