第51話 元服

文字数 454文字

 闇夜を照らす一晩の大役を果たした灯台のランプは今は消え。
 代わりに冬でありながら熱量ある太陽が丘を照らす。

 彼女が、駆けてくる。

「ボクト!」
「ミコちゃん・・・」
「ボクト!心配したよ!」
「ごめん」
「ボクトくん」
「はい。大鯛(だいたい)さま」
「お母さんには会えましたか?」
「いいえ」
「そうですか」
「ボクト、お母さんは?」

 ボクは彼女に母の死は告げなかった。

「もう、いいんだ」
「でも・・・」
「もういいんだ、キミがいるから」

 そうさ。
 多分、僕と彼女は結婚する。
 でも、それは夫と妻という関係じゃない。

 彼女は僕の相棒(バディ)
 僕は彼女の相棒(バディ)

 ほんとうの僕と彼女との間柄は、世を遍く照らし尽くす太陽と月としての役割。

 僕は、わかった。僕のほんとうの心の底の意思が。

 どうしたって止めることのできない渇望が。

 そう。
 世を遍く照らし尽くす。

 時として日の光をもって。
 時として月の光をもって。

 誰一人漆黒の闇で泣くことのないように。
 それを、彼女と一緒に、一生かけて、自分の務めとして果たし尽くす。

 さあ。

 ふたりで行こう。

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