第31話 せんそうに勝つってどういうこと?
文字数 1,426文字
燃える街を雲の上から見ながら清廉 さまはボクにこんなことをお聞きになったよ。
「ボクト。そなたは神速 の闘いを見たであろう。どう思った?」
「すごく、辛かったです。どうして戦わないといけないんだろうって」
「だが神速は神ぞ。その神が闘うのだから闘いはこの世に必要なものだということだろう?」
「清廉さま、ボクにはわかりません。ほんとうは神速さまの闘いをとてもざんこくだと思っていました」
「ふふ。ボクトは戦争が起きたら一番最初に死ぬ人間だろうな」
「なあおい清廉。生憎だがボクトは一番最初に死んだりしない。賢いからな」
「ほう・・・クルト。賢いとはどういうことだ」
「ウチの学校の理事長が言ってたんだがな。親切にしたり相手の悲しみを思ったりすることは賢さなんだそうだ」
「ふふ。そういう甘いことを言うのは月影 だな」
「おい!どうしてウチの理事長を知ってるんだ!」
「言わずともよいであろう」
ボクはもしかしたらそうじゃないかな、って思うことを言ってみたよ。
「精錬さま。ボクたちの理事長せんせいはもしかして神さまですか?」
「いいや。そうではないな」
「じゃあ・・・仏さまですか?」
清廉さまがボクの顔をじっと覗き込んだよ。
「人間の分際で余計なことを訊くでない!」
「はい。すみませんでした」
「おい。理事長は人間ではないってことかよ?」
「訊くなと言った言葉が分からぬのかっ!」
清廉さまが本気でお怒りになるとね。口元から炎がもれてたよ。
でも、それでもやっぱり気になるよ。
だってボクたちの理事長せんせいなんだから。
その時ね、声が聞こえたの。
『クルトくん、ボクトくん、こちらにおいでなさい』
「ボクト。聞こえたか?」
「うん。聞こえたよ。理事長せんせいの声だよ」
「間違い無いな・・・街の方から聞こえたけど・・・どうする?」
「飛び降りれるかな」
「飛び降りるって・・・こんな高いところから落ちたら死ぬぞ?」
「でも、どうしうち をするよりはいいよ」
「クルトにボクトよ。このわたしの創った平等の世界に居ても、それでも月影を慕うのか」
ボクはね、どうして平等の世界をつくれるぐらいに力をお持ちの清廉さまがここまで理事長せんせいを気にかけるのか、いくら考えても分からないよ。だから、理事長せんせいに直接聞きたくなったの。
「清廉さま。ボクたちを理事長せんせいのところに
ボクはやっぱり甘かったよ。
「わたしよりも月影を取るのだな!ならば堕ちよ!」
しっと 、っていうのかな。
足もとにじゅうたんみたいにしてあった雲が消えてね、ボクとクルトくんはスカイダイビングをするみたいにして堕ち始めたよ。
「うわぁあああっ!あああああーっ!!」
「クルトくん!ココロをしずめてみて?いがいと落ちるスピードは遅いよ!」
「ぁあああああぁぁぁ・・・って、ホントだな?これってもしかして理事長の力なのか?」
「さあ・・・それはボクなんかじゃ分からないよ。ボクは人間だもの」
そんなことを言いながらゆっくりゆっくりと地上が近づいてきたよ。
着陸地点はもしかしたらあの田んぼかな?
「うわっ!」
「わ!」
クルトくんとボクはふたりしてお尻から、どてっ、ってまだ火が燃え移ってない田んぼの柔らかい泥の中に落ちたんだ。稲刈りをそろそろ控えた穂の黄金色の中にね。
そしたらまた声が聞こえたよ。
「ふたりとも、お疲れさまでしたね」
それはね、錦のきものを幾重にも着た、理事長せんせいと同じ顔をした不思議な姿のひとだったよ。
「ボクト。そなたは
「すごく、辛かったです。どうして戦わないといけないんだろうって」
「だが神速は神ぞ。その神が闘うのだから闘いはこの世に必要なものだということだろう?」
「清廉さま、ボクにはわかりません。ほんとうは神速さまの闘いをとてもざんこくだと思っていました」
「ふふ。ボクトは戦争が起きたら一番最初に死ぬ人間だろうな」
「なあおい清廉。生憎だがボクトは一番最初に死んだりしない。賢いからな」
「ほう・・・クルト。賢いとはどういうことだ」
「ウチの学校の理事長が言ってたんだがな。親切にしたり相手の悲しみを思ったりすることは賢さなんだそうだ」
「ふふ。そういう甘いことを言うのは
「おい!どうしてウチの理事長を知ってるんだ!」
「言わずともよいであろう」
ボクはもしかしたらそうじゃないかな、って思うことを言ってみたよ。
「精錬さま。ボクたちの理事長せんせいはもしかして神さまですか?」
「いいや。そうではないな」
「じゃあ・・・仏さまですか?」
清廉さまがボクの顔をじっと覗き込んだよ。
「人間の分際で余計なことを訊くでない!」
「はい。すみませんでした」
「おい。理事長は人間ではないってことかよ?」
「訊くなと言った言葉が分からぬのかっ!」
清廉さまが本気でお怒りになるとね。口元から炎がもれてたよ。
でも、それでもやっぱり気になるよ。
だってボクたちの理事長せんせいなんだから。
その時ね、声が聞こえたの。
『クルトくん、ボクトくん、こちらにおいでなさい』
「ボクト。聞こえたか?」
「うん。聞こえたよ。理事長せんせいの声だよ」
「間違い無いな・・・街の方から聞こえたけど・・・どうする?」
「飛び降りれるかな」
「飛び降りるって・・・こんな高いところから落ちたら死ぬぞ?」
「でも、
「クルトにボクトよ。このわたしの創った平等の世界に居ても、それでも月影を慕うのか」
ボクはね、どうして平等の世界をつくれるぐらいに力をお持ちの清廉さまがここまで理事長せんせいを気にかけるのか、いくら考えても分からないよ。だから、理事長せんせいに直接聞きたくなったの。
「清廉さま。ボクたちを理事長せんせいのところに
下ろして
いただけませんか?」ボクはやっぱり甘かったよ。
「わたしよりも月影を取るのだな!ならば堕ちよ!」
足もとにじゅうたんみたいにしてあった雲が消えてね、ボクとクルトくんはスカイダイビングをするみたいにして堕ち始めたよ。
「うわぁあああっ!あああああーっ!!」
「クルトくん!ココロをしずめてみて?いがいと落ちるスピードは遅いよ!」
「ぁあああああぁぁぁ・・・って、ホントだな?これってもしかして理事長の力なのか?」
「さあ・・・それはボクなんかじゃ分からないよ。ボクは人間だもの」
そんなことを言いながらゆっくりゆっくりと地上が近づいてきたよ。
着陸地点はもしかしたらあの田んぼかな?
「うわっ!」
「わ!」
クルトくんとボクはふたりしてお尻から、どてっ、ってまだ火が燃え移ってない田んぼの柔らかい泥の中に落ちたんだ。稲刈りをそろそろ控えた穂の黄金色の中にね。
そしたらまた声が聞こえたよ。
「ふたりとも、お疲れさまでしたね」
それはね、錦のきものを幾重にも着た、理事長せんせいと同じ顔をした不思議な姿のひとだったよ。