第3話 ミコちゃん

文字数 1,250文字

 ミコちゃんはねえ、ボクのことあいぼう(相棒)なんだって。ふんいきを出したいときは、バディ、って呼ばれたりするけど英語はよくわからないよ。

 ミコちゃんはお父さんもお母さんも仕事が忙しいから夜までボクと一緒にずっと幼稚園にいてくれるんだ。
 ボクは幼稚園の隣に建ってるお寺の、そのまた隣に建ってる寮のリョーボさんだから、いろいろ仕事があって、ミコちゃんはお父さんかお母さんがお迎えに来るまでずっと一緒に手伝ってくれる。

「ボクト、今日の晩ご飯、何人分?」
「今日はカズヨお姉ちゃんとダイチくんが剣道部の出稽古に行ってるから11人分」
「ふうん。ボクト、あの2人ってデキてるよね」
「?うん。すっごい剣道上手だよね」
「まあいいや」

 寮に入ってるのは中高等部のお兄さんお姉さんたち。全部で12人。

 え? さっきの晩ご飯のけいさんだとひとり足りない?
 それがボクだよ。

 お兄さんお姉さんたちはおうちが遠くて寮に入ってる人と、合宿みたいに部活にうちこみたいっていう人とかかな。ボクみたいにお父さんとお母さんがいなくてここに暮らしてる、っていう人はいないよ。

 あ。でもね。
 ミチルちゃんはちょっと特別かな。

「ボクト。ミチルといちゃいちゃしてないだろうね」
「? ミコちゃん、ミチルちゃんのことを好きなのはクルトくんだよ」
「クルトはまったく相手にされてないじゃないの」
「そうかなあ・・・ミチルちゃんとクルトくんって仲よしだと思うけどなあ・・・」

 そんな話をしながらボクたち寮生のご飯を作ったり施設の管理をしたりお世話してくださるレイジさんと一緒にキッチンに立って、ボクとミコちゃんはじゃがいもの皮を剥いたり出汁を取る煮干しのはらわたをとったりするんだ。

「おお。ボクトくんもミコちゃんも ずいぶんと包丁捌きが上手になったな。もうしばらくしたらもっと色んなこと任せられそうだ」
「レイジ、ラクしようと思ってるね?」
「はは。ミコちゃん、俺が作るより美人のミコちゃんが作った方が寮生のみんなも喜ぶさ。ボクトくんだってそうだろう?」
「ボクはレイジさんの味加減したきんぴらとか筑前煮が好きだよ」
「そうか、ありがとう。ところでミコちゃんはなんでいつも料理を手伝ってくれるんだい?」
「ひ、暇だからよ」
「へえ。暇なら他の仕事頼もうかな」
「ダ、ダメよ! 調理場の人手が明らかに足りないでしょ!」
「ボクがいるけど」
「ボ、ボクトひとりじゃ役に立たないわよ! わたしがサポートしないとボクトはダメなのよ!」
「へえ。ボクトくん、信頼ないのかな?」
「うーん。確かにボクはまだまだ頼りないかもしれないかなあ」
「ち、違うわっ! とにかくボクトはわたしと一緒にいなきゃいけないのよっ!」
「そうかあ。じゃあ、下ごしらえが終わったらココアとオレンジピールを煮たやつをクッキーにつけてあげるから2人でおやつにしておいで」
「レ、レイジのくせに気が利くじゃない」
「へいへい」

 ミコちゃんはレイジさんにこんな感じだしボクにもなんだか大きい声出すし、もしかして男の子が嫌いなのかな・・・
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