第15話 剣をもってまもるひと
文字数 1,535文字
園長せんせいがお話してくれたんだけどね、徳増 学園のあるこの街をね、お護りどおしの神さまがおられるんだって。
ボクはミコちゃんを誘って探しに行ったよ。
「ボクト、アタシ聞いたことないよ。そんな神さまがいるなんて」
「ボクも初めて聞いたんだ。かんのんどう のね、お地蔵さまが並んでおられるところにお立ちなんだって」
かんのんどうはね、春になると桜並木がきれいな川の遊歩道のすぐ隣にあるんだよ。それでね、お盆とかお彼岸とかになるとね、お堂の前に街のひとたちがゴザを敷いてお酒を飲んだりしてご供養してるの。
にぎやかな場所だし、かんのんさまには何度かお参りしたことがあるけど全然気づかなかったなあ。
「なむかんのんさま・・・」
「・・・・・」
ボクとミコちゃんはお賽銭をカラン、て入れてかんのんさまにお参りしてからお隣のお地蔵さまが並んでおられる石の台にもカラン、てお賽銭を入れてお参りして、それから剣を持つ神さまがおられないか探したんだけどね。
「お地蔵さましかいないじゃない」
「おかしいなあ・・・園長せんせいは確かにここだとおっしゃったんだけどなあ・・・」
ちょっと申し訳ない気がしたけど、後ろに回ってみたらね。
「あ! おられた!」
「ほんとだ!」
もう一回前に回って見るとね、お地蔵さまとお地蔵さまのその間の後ろの方に隠れるようにしておられたよ。
剣をもって立っておられる石の神さまが。
「ボクト。すごく怖い顔」
「うん・・・なんだか怒っておられるみたい」
「ほんとにこの神さまがこの一帯の『護り神』なのか?」
「うん。きっとそうだよ」
ボクたちはあらためて護り神さまにも手を合わせたんだ。
それから1週間ほどするとね、スーパー台風っていうすごい台風がボクたちの街も直撃するっていう天気予報が出てね、寮のみんなで買い出ししたり停電になったりした時の準備をしてたよ。よくないことだけどほんのちょっとだけなんだか合宿みたいなちょっとワクワクした気持ちになっちゃった。
だけどね。
ほんとに台風が来たその日はね。
ワクワクなんてできるはずもなかったよ。
「みなさん、たった今警戒レベルが5を超えて避難勧告が出ました。これから高台にある神社に一緒に移動します」
理事長せんせいが寮生全員にレインコートを着させて災害用の長靴を履かせて避難の指揮をとられたんだ。
ボクはなんでだかよくわからないけどとても胸がチクチクして、質問したんだ。
「理事長せんせい。山の上の神社に登らないといけないほどなんですか?」
「ボクトくん。昔、神降川 は何度も氾濫して大洪水を起こしたのですよ。堤防の横にお地蔵さまが数多く建てられているのは犠牲者を供養するためなんです」
「そうだったんですか」
「そしてね、たった今アラート通知があったんです。上流で工事をしていた大型の土木作業船が流されたと。濁流の勢いで大橋にぶつかったら橋脚が崩れる危険があると」
ええっ!という寮生みんなの声がしたよ。普段とても強い気持ちを持っているミチルちゃんも顔がほんとうに怖がってる。
「橋脚が崩れたら瓦礫で川の流れが堰き止められて増水し、一気に堤防が決壊する可能性があります」
ゴウン・・・!
風に消えそうになったけど、はっきりと何か大きな塊同士がぶつかる音が届いたんだ。
「きゃあっ!」
「落ち着いて!心を鎮めて冷静に歩くんです」
ボクたちは一列になって校門を出て丘陵を目指したよ。
ゴゴゴゴウゥゥゥンン・・・!
「あっ!」
「ボクトくん!?」
「ミチルちゃん!ボク行かなきゃ!」
「えっ!ボクトくん!どこ行くの!?」
ミチルちゃんの叫ぶ声が聞こえたけど、でも、ボクは強く感じたんだ。
ボクの役目なんじゃないかな、って。
だから、かんのんどうに、全速力で走ったんだ。
ボクはミコちゃんを誘って探しに行ったよ。
「ボクト、アタシ聞いたことないよ。そんな神さまがいるなんて」
「ボクも初めて聞いたんだ。
かんのんどうはね、春になると桜並木がきれいな川の遊歩道のすぐ隣にあるんだよ。それでね、お盆とかお彼岸とかになるとね、お堂の前に街のひとたちがゴザを敷いてお酒を飲んだりしてご供養してるの。
にぎやかな場所だし、かんのんさまには何度かお参りしたことがあるけど全然気づかなかったなあ。
「なむかんのんさま・・・」
「・・・・・」
ボクとミコちゃんはお賽銭をカラン、て入れてかんのんさまにお参りしてからお隣のお地蔵さまが並んでおられる石の台にもカラン、てお賽銭を入れてお参りして、それから剣を持つ神さまがおられないか探したんだけどね。
「お地蔵さましかいないじゃない」
「おかしいなあ・・・園長せんせいは確かにここだとおっしゃったんだけどなあ・・・」
ちょっと申し訳ない気がしたけど、後ろに回ってみたらね。
「あ! おられた!」
「ほんとだ!」
もう一回前に回って見るとね、お地蔵さまとお地蔵さまのその間の後ろの方に隠れるようにしておられたよ。
剣をもって立っておられる石の神さまが。
「ボクト。すごく怖い顔」
「うん・・・なんだか怒っておられるみたい」
「ほんとにこの神さまがこの一帯の『護り神』なのか?」
「うん。きっとそうだよ」
ボクたちはあらためて護り神さまにも手を合わせたんだ。
それから1週間ほどするとね、スーパー台風っていうすごい台風がボクたちの街も直撃するっていう天気予報が出てね、寮のみんなで買い出ししたり停電になったりした時の準備をしてたよ。よくないことだけどほんのちょっとだけなんだか合宿みたいなちょっとワクワクした気持ちになっちゃった。
だけどね。
ほんとに台風が来たその日はね。
ワクワクなんてできるはずもなかったよ。
「みなさん、たった今警戒レベルが5を超えて避難勧告が出ました。これから高台にある神社に一緒に移動します」
理事長せんせいが寮生全員にレインコートを着させて災害用の長靴を履かせて避難の指揮をとられたんだ。
ボクはなんでだかよくわからないけどとても胸がチクチクして、質問したんだ。
「理事長せんせい。山の上の神社に登らないといけないほどなんですか?」
「ボクトくん。昔、
「そうだったんですか」
「そしてね、たった今アラート通知があったんです。上流で工事をしていた大型の土木作業船が流されたと。濁流の勢いで大橋にぶつかったら橋脚が崩れる危険があると」
ええっ!という寮生みんなの声がしたよ。普段とても強い気持ちを持っているミチルちゃんも顔がほんとうに怖がってる。
「橋脚が崩れたら瓦礫で川の流れが堰き止められて増水し、一気に堤防が決壊する可能性があります」
ゴウン・・・!
風に消えそうになったけど、はっきりと何か大きな塊同士がぶつかる音が届いたんだ。
「きゃあっ!」
「落ち着いて!心を鎮めて冷静に歩くんです」
ボクたちは一列になって校門を出て丘陵を目指したよ。
ゴゴゴゴウゥゥゥンン・・・!
「あっ!」
「ボクトくん!?」
「ミチルちゃん!ボク行かなきゃ!」
「えっ!ボクトくん!どこ行くの!?」
ミチルちゃんの叫ぶ声が聞こえたけど、でも、ボクは強く感じたんだ。
ボクの役目なんじゃないかな、って。
だから、かんのんどうに、全速力で走ったんだ。