第16話:サブプライムローン問題と円高

文字数 1,844文字

 2007年の年末には、坂城商店の改修が終わった。一方、アメリカでは、米国住宅バブルの加熱を抑えるためにFRB「連邦準備理事会」は2004年6月~2006年6月まで17回連続で利上げをした。2006年8月の利上げ見送りで利上げはストップしたが、既に米国住宅市場には変調の兆しが現れていた。利上げに伴りサブプライムローンの延滞率は徐々に上昇していき2006年後半からは急速に高まった。

 そして、米国主要10都市のケース・シラー住宅価格指数は、2006年6月をピークに下落を始めた。翌2007年夏にはサブプライムローン関連の損失が大手金融機関で次々に発表されていった。2007年6月、当時の5大投資銀行の一画であったベア・スターンズの傘下のヘッジファンドが、サブプライム関連の商品で巨額の損失を出してベア・スターンズに取り付け騒ぎが起きた。

 7月には当時のFRB「アメリカ連邦準備委員会」議長のバーナンキ氏がサブプライムローン問題の関連損失が最大1千億米ドルに達する可能性があると言及した。8月には、ヨーロッパのBNPパリバが傘下ファンドの買付・解約と価格公表を停止し、9月には英ノーザンロックに緊急融資が行われ、イギリスで140年ぶりの取り付け騒ぎが発生した。

 やがて2008年が明け、武久さんから電話が入り新年の挨拶をした後、3月9日、弥生賞に行かないかと誘われ一緒に同行しますと答えた。その後、2月3日、関東地方の大雪で、首都高速道路、館山自動車道などが通行止、東京国際空港で140便以上欠航など交通機関に影響。秩父宮ラグビー場でのジャパンラグビーや青梅マラソンなどスポーツイベントが中止となった。

 3月9日、11時過ぎ中山競馬場のレストランで落ちあった。例によって武久さんは、競馬新聞をじっと見ていた。嵯峨夫妻が、声をかけると笑顔になり、昼食を注文した。食事しながら武久さんが、今日は、武豊を軸に買うと言い、単勝13番ブラックシェルを20枚と馬連13番と3番マイネルチャールズ「順不同可」10枚買うと告げた。

 嵯峨が、今日は、良い天気だから、波乱はなさそうですよねと武久に聞くと、いいや、わかんない、天気も競馬の勝敗も神のみぞ知ると言う世界だと言い、笑った。それを聞いた嵯峨の奥さんが、今日は機嫌が良いのですねと言うと、天気が良いから気分も良い。これで、馬券が当たれば、言うことなしなんだがなーと告げた。

 嵯峨夫妻は、少し、協議した結果、馬連13番と3番「順不同可」の一点勝負で、30枚ずつ買うと言った。そして食事を終えるといち早く、馬券売り場に行き、馬券を購入した。そして、見晴らしの良さそうな場所を探した。いつもそうだが、レース前の緊張感と言うのは、ぞくぞくするものである。そしてレースが始まった。

11番ホッカイカンティがゆったりとしたペースを作りマイネルチャールズは、終始2番手で追走していた。しかし、4コーナーを過ぎて、直線ではムチを入れられた。残り200メートルの位置で先頭にたった。直後から差を詰めようとする2番タケミカヅチと15番キャプテントゥーレを振り切り、ゴール前では、外から1番人気ブラックシェルが追い込んできた。

 しかし、最終的には、マイネルチャールズがブラックシェルを4分の3馬身差を付けてゴールを駆け抜けた。最後は、嵯峨夫妻が興奮してマイネル負けるな、行けーと大声を上げた。こうしてレースを終えた。その結果、マイネルチャールズの優勝で、馬連は、3番マイネルチャールズ、13番ブラックシェルとなった。武久さんと嵯峨夫妻とも利益が出たが武久さんは、単勝を外して悔しがった。

 帰り道、いつもの本八幡の居酒屋で競馬談義出でり上がった。その後、3月13日、東京外国為替市場で、1995年以来12年ぶりに1ドル100円を突破する円高を記録。こうして夏が終わると9月16日、アメリカ証券会社大手リーマン・ブラザーズの経営破綻した。それに伴い同社日本法人リーマン・ブラザーズ証券および関連会社が東京地方裁判所に対し民事再生法の適用を申請した。

 リーマン・ブラザーズ証券の負債総額は計約3兆9千億円と2000年に倒産した協栄生命保険に次ぐ戦後2番目の大型倒産となった。10月7日、日本人としては史上最多の4人「アメリカ国籍1人含む」がノーベル賞を受賞。南部陽一郎、益川敏英、小林誠が日本出身者で初となる3人同時によるノーベル物理学賞を受賞。さらに下村脩がノーベル化学賞を受賞。
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