隣の彼女が悪魔であることの証明

文字数 920文字


「魔性の女」に会ったことはあるか?
思慮深く、妖艶で、自分を魅力的に、かつミステリアスに見せることに長けた女性のことである。
おそらく、周りに1人くらいはそれらしき人物がいるだろう。
では「悪魔」に会ったことは?
そいつは一見して掴み所がなく、人懐っこく、まるで君に気があるかの様に振る舞うだろう。
しかし、そいつを理解する事は不可能なのだ。
他人を弄ぶかのように奔放に行動し、男を惹きつけておいて、素知らぬ顔をしたりする。
そいつに惹かれたら、泥沼である。理解しようと追いかけるうちに、大切な物を持っていかれる事になる。「途方もない時間」「膨大な金」あるいは「人生」
気がつけば、骨も残らない。
こんな話がある。
あるストーカーの男が捕まった。
この男は真面目で、明るく、顔も悪くない。
決して女性に困る部類ではない。
しかし、男は何年にも渡って一人の女性に固執した。初めの極わずかな期間は、交際した事もあったらしい。この女性には真剣な話をしても、ぬるりとかわされ、曖昧な理由で別れを告げられた後も「大切な人」と呼ばれた。
嫉妬に狂い、がむしゃらに追いかけ、気がついたら、牢屋に居た。
男は言った。「あいつは、悪魔です」
厄介で、奇妙で、不気味な点がある。
それは、そいつには【悪気】や【自覚】がないことである。
だから、仮にこの話を当人が聞いても「これは私のことだ」とは決して思わないだろう。
忠告しておく、そいつに出会って、心を奪われそうになったら、策は一つしかない。
走って逃げることだ。
君が立ち去る間際、そいつは「寂しい」だの「行かないで」だの、しおらしい事を宣うだろうが、構うな。振り向くな。
ここで、先述の「魔性の女」であれば、逃げた後に追いかけて来て「怒ってるの?」や「大丈夫?」等、何かしら接触してくるだろう。
その方が、理に適っている分、血の通った人間であると思える。
では、「悪魔」はどうだろう。
逃げ出した後、仮に振り向いたとすれば、こんな光景を見ることになるはずだ。
先ほどまで君に、しおらしい言葉を投げていたそいつは、まるでそんな事など無かったかのように、既に他の人間と楽しそうに話しているだろう。
惑わされてはいけない。悪魔に。
君には僕のようになって欲しくない。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み