転寝の箱

文字数 362文字

転寝をしていた。
脇に駆けて来たのは男児であるが、どこか見覚えがあると、よくよく観察するに自分であった。
小生意気なメガネをかけた刈り上げ頭の、まだ五つに満たない自分であった。
男児は、大切そうに。抱えていた小箱を開けて見せた
中には、子供向けの辞典が、真新しくピンとそこにあった。
次に歩いて来たのは青年である。
型は変われど、小生意気なメガネを、飽きもせずにかけて、何が誇らしいのか胸を張っている自分であった。
青年は、ニヤリと笑うと、抱えていた小箱を開けて見せた。
中には、六法全書が、読まれたフリして、そこにあった。

男児と青年は、私の右手を指差した。
いつの間にやら、そこに小箱が存在していた。

やや躊躇い、たっぷり10秒ほど要して蓋をこじ開けると
中には鏡が入っていた。
生意気なメガネをかけた、何も変わらぬ自分が、少し怯えてそこにいた。
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