主人公・その求められしもの
文字数 4,515文字
ではまず初めに主人公に求められているものとは何でしょう?
ええはい。
皆さん色々書きたいこと、表現したいことは山ほどあるからこそ話を作りたい。
それは重々承知の上で。まずは「読み手」が何を欲しているのか。
それをしっかり押さえておかないといけません。
そりゃそうですよね。誰かに読んでもらわないことには始まらない。
どんなに良いことを書こうとしても、入口でシャットアウトされてしまってはお手上げです。
主人公はまさにその作品の入口であり、さらには案内役、果ては出口でもあるわけですから、ヘンなやつにするわけにはいきません。
まぁそうですね。そういう作品でもウケの良いものは沢山あります。
でもそれで読者を引き込めるのは筆者の技術が高いからです。そういうのはいわば変化球なわけで。素人が放り投げてもストライクは入りません。
まずはストレートを投げられるようになってからチャレンジするのが良いかと私は思っております。
何事も、まずは基礎を大事に。でないと一回沈むと二度と浮かんで来れなくなります。
さて爽快感を出すために、とにかく単純に強い主人公。これだと薄っぺらいにもほどがあります。
一方的に強すぎると、敵がどんなに憎たらしい完璧悪役であっても展開が単純になり、爽快感とはほど遠い「ふーん」という感想に繋がりかねません。
まぁ、さすがにそこまで単純なのはさすがに無いと思いますが。
んー、これについては時代の流れかなぁと。
昔は通じたけど今の時代はウケにくい。そんな感じ?
大ヒット作品のウケた部分をそのまま参考にしてもコケることがあるのはそのせいですね。
昔は斬新だったけど、皆が真似して手垢にまみれて凡策になるという。
また、自分が好きな作品と流れが似通ってしまうのは、ある意味仕方ないこと。
意識した上で乗っかるのは良いですが、無意識に引っ張られてると劣化コピーになりかねないので要注意です。
だって覚醒ってそんなもんなのですもの。
覚醒なんてインパクトを与えてなんぼであって、細かい理屈を重ねた覚醒なんて、与える衝撃が弱すぎます。
伏線を散りばめておくのはありかもしれませんが、個人的には予想ができる覚醒ならやらん方が良いと思ってます。
伏線一切ありませんが問答無用のインパクト。そしてその後の圧倒的な爽快感。それらが全てをかっ攫っていきます。
まぁご都合主義との批判もありますが、支持者の方が多いはずです。調べてませんが。
何故ならば読者が欲するのは細かい理屈ではなく「爽快感」だからです。
共感といってもキャラの一挙手一投足に共感される必要ありません。
むしろ全ての行動において万人に共感されるキャラなんて存在し得ませんので安心してください。
言動・行動が乱暴で「これ無理だわー」と思っていたキャラだとしても、行動理念に信念があるなど、ここ一番の見せ場でぐいっと心を掴まれる、なんてことも良くあると思います。
「共感性」という言葉が正しいのか分からず使ってますが、ようは「キャラが感情を持って行った行動」を「読み手が同じ感情を持って」読めるかどうか、です。
では現実的じゃないのでリアリティが薄れるとしておきましょう。
まぁ共感が得られるキャラにし難いところであることは間違いないです。
人間だもの、あわよくばダラダラ生きていたいのが本音という人が大半です。完璧なんて目指していると、やってる本人も見てる周りも息が詰まります。割とマジで。
あ、ひとつ以外を完璧にしても良いわけではないので誤解のないように。
共感を得るには、やはり人間味が大事です。
また、粗についても、もちろん何でも良いわけではありません。
話に絡めやすいもの、そして親しみが持てるものを。
乱暴なのや性的なもの、どうでも良いものはよろしくないかと思います。
ああ、あとは主人公以外のキャラにも通じることなんですが、タイプは違えど読み手の心を掴むのは、やはりキャラごとの「信念」に基づいた行動であるということは常に心に留めておきたい。
それが一番、読み手の共感性を生み出す原動力となります。
また、それゆえに、自分が描きたい展開の為にその信念を曲げることは許されません。
違和感が出るということは、キャラの作りが甘いということ。ひいては作者のそのキャラに対する愛が足りないということです。
主人公の行動に説得力がないと読者の気持ちとリンクできず、カッコ良いと思って書いた主人公の行動もすべってしまい、非常に薄っぺらい出来になってしまいます。
そして、逆にそれさえできてしまえば、どんなに外道なキャラであっても、そのキャラの信念を通すことにより、本来共感を得られない外道の所業に対してもそれに似た感覚を読み手に与えることができるはずです。