第10話 宿場から
文字数 1,730文字
「僕は王都で、この大陸の歴史の
ゆったりと
「千年前の海洋神との戦いのことも調べていたけど、当時のことを
おれは黙ったまま、パナタが落ち着いた声で続けるのを聴いている。
「東の海から
「なぁ、パナタ」
「……だけど、悲劇の時がいつ終わったのか、国によって話が全く違ったりしてね。勇者が活躍して海洋神を倒したって話もあれば、実は海洋神は人の子として生まれ変わり、今も大陸の破滅を狙っているなんて話もあった」
パナタはおれの言葉を聴いてない風で続けた。
「
彼はおれをじっと見て、少し口の端を曲げながら言う。
両腕に少しの痺れを感じた。おれは少しの間、
「おれは……確かに、お前が知らないことをたくさん知ってる。でも、それを口にすることができないんだ」
「それも呪いってやつなのか?」
おれはパナタに背を向ける。彼はおれの気持ちを受け取ってくれるはずだ。
彼はしばらく黙っていた後、静かに歩き出し、両親の家へ戻って行った。
遅れてパナタの両親の家に戻ると、スワビとモアーニは、この地特産の酒でずいぶんと酔っ払っていた。
パナタはおれの席を用意していて、母親を手伝って料理を運んできてくれた。
夜遅くまで、たわいもない話をしながら、穏やかな夜は過ぎていった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
パナタの狭い部屋に4人で泊まり、
パナタは宿場リミルガンに採取した薬草や土を持ち帰る用事がある。おれ達も、いったん宿場に戻って旅の疲れを癒(いや)そうということで、全員の目的地は同じ場所に決まった。
彼の両親に礼を伝え、少しの食糧を貰い、宿場に向かうため出発した。
風の里からは、来た時と同じ飛行船で抜けた。その後は、同じ方向へ向かう荷馬車を見つけられず、3日ほど道なりに歩いて宿場に戻った。途中で一度、小さな集落に宿泊したが、近くの湖は水が冷たく、身体を洗うことができなかった。
だから、まず
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
それから幾夜かが過ぎ、
「冒険者やら行商人が王都に向かってるらしくて、今はめぼしい依頼が無いねぇ」
王都では、破壊された家や城の復旧に人手が必要で、この辺りの冒険者達も、その作業に駆り出されているそうだ。
スワビは安宿に滞在していたが、宿代の支払いができず、今は宿場近くの広場に厚布の天幕を張って寝ているらしい。
「このまま仕事が無いなら、他の街に行かなきゃねぇ」
スワビが言うには、モアーニはすでに
風の総帥の言っていた、北の極地ゴルンカダルのことが気になった。広く大陸を渡り歩いている旅商人に尋ねると、その場所は幾つもの道なき山を越えるため馬で行けず、歩くとなると数十夜はかかるという。また、海からは近付けないほど険しい高地にあるとのことだった。
長きにわたり、おれは宿命を果たす時を待ち続けた。それが北の極地にあるのならば、旅に出る覚悟をすべきだ。
狂おしいほどに