2 幽体離脱はしない
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それも解離の一つではあるけれど、症状としてはもっと幅広だ。
特徴的(代表的)なものとしては、(1)自分がやったことを覚えていない解離性健忘ってのがある。
たとえば、友だちにLINEしておきながら、メッセージを送ったことをまったく覚えてなかったりする。
しかも、だ。その内容が、普段の自分が言いそうなこととは、かけはなれたものだったりする
そうだな。たとえば覚慶悟さんの『離人症日記』(彩流社、2007)とか読んでみるといいかな。よくわかる。
覚さんは「気力がない、現実感がない、自分が自分でない感じがする。周囲と自分の間に膜が張った感じがする」と訴えている。「時間が連続しているということを、実感することができない」とも・・・・・・
いささか好事家的になってしまい恐縮だが、解離の症状(言動)から、いわゆる心霊現象とフィットするものを拾うことができるんだ。
まず、幻視や幻聴がある。実際の言動から拾っていくと、たとえば「そこの階段に小さい女の子がいて、話しかけてくる」とか
柴山さんは、悪魔憑きの9割以上は「特定不能の解離性障害」のうち「憑依トランス障害」と診断されるだろう、と言っている。
ちなみに、「憑依トランス障害」では、憑りつかれるのは悪魔オンリーではなく、神様だったり、精霊だったり、じつに様々らしい
いや、そうでもないよ。ぼくらだって経験するときがあると思う。
たとえば、ぼくは中学生の頃、車にはねられたことがあるんだよ。
そのとき、まさにこの体外離脱体験をした。なんていうかこう、車にはねられて倒れている自分を、その真上から、ぼく自身が眺めているんだよ。
うまく言えないけど、そのとき、ぼくは空に浮かんでいたと思う
うん。解離とぼくらとの間に、なんというか、断絶、壁があるのではなく、ぼくらの体験というのは、地続きなんだよ。ある閾値を超えると、日常生活に支障をきたすほど苦しくなってくる。
どこまでが普通で、どこからが異常かなんて、じつにグレーで曖昧だ
もっと具体的にいうと、ぼくらの脳は存在しないものの存在をリアルにそこに感じたり、あるいは見たり、声を聞いたりすることがある。
実際、そういった症状に苦しんでいる人たちが精神医療の現場にはいる。
なんというか、そういう事例を紹介していること自体が不謹慎で、恐縮ではあるがね
で、いま脳の話がでたから、ついでに付言しておくと、脳科学では、頭頂葉と側頭葉の間の領域(側頭頭頂接合部)を電極で刺激すると、幽体離脱する(幽体離脱感を味わう)ことがわかっている。
まるでスイッチのように幽体離脱感をオン/オフすることができる
幽霊話のついでに、心身二元論を否定しておきたいと思ったんだ。
そうしておいて、<わたし>に魂なる本体がないとするなら、じゃ<わたし>とは何なのか?
といった問いにつなげてみたいと思った。
しかし、ん~、そうだな、今日はもう遅くなったから、この続きはまた明日話そう