第25話 探偵小説を探偵しましたのぢゃ!【9】

文字数 794文字

【9】

 前回から『マースドン荘の悲劇』を取り上げておる訳ですがの、この題名は原作の短編の方でしてな、テレビドラマの方は、『マースドン荘の惨劇』となっておりまして、どうやら、より一層のおどろおどろしさを演出しておるようですわい。

 と、ここでまた話は変わって申し訳ないのですがな……、儂しゃ、一昨日(おととい)『ABC殺人事件』を読み終えたばっかりでしてな、昨日は「次は何を読もうかな〜」などと思案しておった矢先、昨夜の『名探偵ポワロ』が、『ABC殺人事件』だったので、いささか驚きました次第ですわい。

 で、「読んでから観た」結果はですな、圧倒的に「小説の方が、えがったのぉ」つーのが、第一の感想でございますな。
 ドラマの『ABC殺人事件』は、かなり原作に忠実に作り込まれておりましてな、それなりに頑張っておるのですがな、原作自体が持つ仄暗(ほのぐら)く不穏な雰囲気が表現しきてれおらん感じもいたしましたし、原作を読んでおる時のワクワク感もあまり感じられませんでしたのう。

 加えてですな、原作を読んでいた際にはあまり気にならなかった点、特に殺人トリックにおける、「いや〜、そりゃちょっと無理があるっしょ〜」と言うような若干の矛盾点が、映像によって(あら)わになってしまいましてな、その点でも、少し萎えてしまう儂でございましたぞな。

 発表当時、革新的と絶賛されたミステリー小説の長編を、1時間40分のテレビドラマに凝縮して仕立て上げるには、やはりちょっと無理があるように思われましたなぁ。

 さて、話は戻って『マースドン荘の悲劇』ですがな、ドラマの『マースドン荘の惨劇』の方は、原稿用紙40枚程の短編を50分のテレビドラマに仕立て上げておるのですがの、そのせいか、原作にかなり手を加えておりましてな、「ん? 原作と一緒なのは、殺人トリックだけかいな?」と思える程の改変ぶりなのぢゃが、その改変が結構面白いのでございますのぢゃ!
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