第41話 懐かしの建物を探偵しましたのぢゃ!【2】

文字数 924文字

【2】

 儂が、地方在住のつまらん老人であることは、皆の衆もご承知のことと存じますがの、サラリーマン時代には、東京にはかなり出張しておりましてな、多少土地勘のある地域もあるのですわい。

 で、赤坂界隈もそんな地域の一つでしてな、赤坂見附駅から外堀通りを通って右手に折れ、赤坂商店街に入り、商店街を抜けて赤坂小学校を過ぎ、乃木神社から乃木坂を上って外苑東通りに抜けるまでのルートは、こうして書きながらも、そのルートの景色がありありと思い浮かぶのでございますのぢゃ。

 赤坂は別に取引先があった訳ではないのですがな、商店街にある赤坂陽光ホテルつーのが、儂の定宿でしてな、青山に用事があった儂は、タクシー代は経費で落ちんので、そのルートをてくてく歩いておりました訳ぢゃ。

 しかし、てくてく歩いたからこそ、街の景色が脳裏に焼き付いておる訳ですわい。

 外堀通りのアンナミラーズで、スーツを着た中年オヤジの儂は、恥ずかしげもなくクリームパイなんぞを頬張ったりして、あの頃は、アンナミラーズの向かい側は、ホテルニュージャパンの跡地が、まだ広大な空き地でしたのぢゃ。
 で、その空地には外資系の高層ビルが建ち、アンナミラーズは閉店したと云う昨今でございますわい。

 黄昏れ時の赤坂商店街の小料理屋の前で、デカい声で携帯電話で話す小柄なオヤジをよく見ると、シャイニング・スーツに身を包んだ麻生太郎だったり、赤坂小学校の交差点の手前に、小綺麗とは言えない居酒屋があって、そこからパッと出てきたのが、ビートたけしだったりと、そんな思い出も湧き起こる訳でございます。

 赤坂は、商店街を抜けて赤坂小学校を過ぎたところから、なんだか急に寂しい感じになって、乃木神社・乃木坂・外苑東通りの旧乃木邸までの界隈は、なんとなく昼なお暗い感じがしましてな、そこらを通るたびに儂しゃ、「こりゃ、江戸時代なら、さしづめ狐や狸が出て、人を化かした場所ぢゃな」なんぞと妄想したものぢゃ。

 で、後に知ったことぢゃがな、その乃木坂は江戸時代は違う名前が付いておったそうでな、その名も「幽霊坂」。
 当時の儂の妄想もあながち外れてはおらんようでしたわい。

 あ、本題のTBS界隈の話は、また次回となりましたのぢゃ。
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