第4話 仮面ライダーを探偵しましたのぢゃ!【4】

文字数 1,218文字

【4】

 例のNHKのドキュメンタリー番組については、庵野大先生監督の静かなる暴君ぶりに、多くの視聴者から、「あれは、パワハラではないか?!」などの庵野批判が巻き起こり、映画公開時の舞台挨拶では、当の本人が「正直辛い」と弱音を漏らす始末。

 かてて加えて、オリジナル『仮面ライダー』の生みの親である東映テレビ部門プロデューサーであった平山亨氏のご子息がTwitterに、

(シン・仮面ライダーについての)「SNSなど不特定多数の方に目に触れる場でのネガティブな書込みは、お控えいただきたい」

 との援護射撃的コメントを公表なされましたところ、援護射撃になるどころか、逆に火に油となって、更に炎上しちゃったのも記憶に新しいお話でございますのう。

 しかしですな、あのドキュメンタリーでの庵野大先生監督の言動なんぞ、昭和の大巨匠監督らに比べたら、平成&令和的にマイルドなもんでございますぞ。

「あー、あの家、画角に写り込んで撮影の邪魔だな。
 助監督、家どかせるか、今すぐ家主に聞いて来い!」

 と言って、家一軒ぶっ壊してから撮影を開始した、つー武勇伝を持つ大巨匠が、かの「世界のクロサワ」こと、黒澤 明ですな。
 まあ、この逸話、かなり尾ひれが付いた話でしてな、実際は、

「いやー、あの家の二階が画角に写り込んで邪魔だな。
 明日から撮影だよ、助監督、どうする? どうする?」

 と盛んにボヤく巨匠の意を忖度した助監督と大道具さんらが、自らその家に赴き、

「今日一日だけ、お宅の二階を取り壊させて下さい。
 明日の撮影が終わりましたら、元の通りに復旧いたしますので。
 お願いします! お願いします!
 日本映画のためにお願いします!」
(日本映画のために、は儂の演出ぢゃがな)

 と三拝九拝して頼み込み、「そこまで言うのでしたら……」と承諾して貰い、その民家の二階はその日のうちに解体され、翌日は無事に撮影となり、その翌日からは二階の復旧開始となったそうなのぢゃ。
 ちなみに、その民家を建てた大工さんを探し出して復旧して貰ったと云うご丁寧さ。

 頼む方も頼む方ぢゃが、頼まれた方も考える間もなく、その日のうちに了承しちまうんですから、昭和と云う時代……、いったい暢気(のんき)なんだかワイルドなんだか……?

 こんな事、今の令和の世にあったら、ここぞとばかりに、マスコミやネットに取り上げられて批判の嵐、監督はおろか映画会社まで吊るし上げられ、映画は制作中止になることは必至でしょうなあ。

 そんな経緯(いきさつ)で生み出された映画が、日本犯罪ミステリー映画の不朽の名作『天国と地獄』ぢゃ。
 ちなみに、この映画の身代金の受け渡し方法を、後のグリコ森永事件の犯人グループ「怪人二十一面相」が参考にした形跡がありますのぢゃよ。

 『シン・仮面ライダー』で始まった話が、『天国と地獄』の話で終わると云う、まったくオチない閑話になりましたがの、今日はここらでおしまいですのぢゃ。
 ふぉっふぉっふぉっふぉっふぉっ
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