第13話 現代の不思議を探偵しましたのぢゃ!【2】

文字数 1,311文字

【2】

 ではでは、三本指のミイラ、“マリア”の話の続きぢゃがな、

 名は“マリア”というが、性別は男とテレビでは言っとった。
 ただし、男性器が付いていたかどうかは言及しておらんぢゃった。
 現在、儂が知っておることは以下の通りぢゃ。

 ペルーはナスカの、岩山の洞窟の中で発見された。
 2017年には、イギリスの調査チームがそのミイラの、レントゲン撮影、CTスキャン、放射性炭素年代測定、DNA分析などを行っている。

 CTスキャンの結果、人工の作り物ではなく生物であり、内臓も残っていることが判明。
 放射性炭素年代測定では、ミイラが1800年から1600年前のものであることが判明。
(日本の古墳時代に相当)
 
 身長は、推定168㎝。
 目、鼻、口はあるが、耳は無く、耳の穴が開いてるだけ。
 手の指の関節は5個あって、掌は無くて手首から直接三本の指が出ている。
 足の指も三本で、指先が90度に曲がっていて地面をつかみながら歩行していた。
 体表が白いのは、死後すぐに身体全体を海藻で包んだため、そのミネラル分が残り、体表に残っている。
 そのミネラル分が、遺体の腐敗を防ぎミイラ化させた。

 テレビでは、2017年に発見されてすぐに、イギリスの研究チームが調査を行っていることを言及しておらず、現在ミイラを保存している地元の大学の研究結果を番組内で放送していた。

 番組では、「DNA検査の結果、人間との一致が33%しかない、未知の生物」と放送していたが、2017年のイギリスの調査チームのDNA分析の結果は、「人間との一致は98.5%で、新種の霊長類」という調査結果だったとのこと。
 その調査チームの調査の様子は、ちゃんとネットに動画で上がっておりますぞな。

 どうしても「未知の生物」「宇宙からの生物」に結び付けたいのが、テレビの視聴率稼ぎの怪しいところなのぢゃな。

 しかし、このミイラ、2017年の発見当時は純白で完全な姿だったのに、4年経った現在は、体表が薄汚れていて足の指も折れていて、ペルーの地元の大学の保管状況の劣悪さがうかがえるのぢゃ。
 発見当時の動画を見ると、目の瞼の構造がはっきり分かったのに、現在の姿では瞼がぜんぜん分からないようになっておったわい。
 しかし、その発見当時の瞼の構造を見ると、まるで遮光器土偶のように見えたわい。
 儂としては、未知の生物であった方が面白いのぢゃがな……。
 
 やっぱり、生物の進化とは、手脚の指、目、耳、口などのインターフェイス(境界面)が顕著に変化するんぢゃなぁ、と思った次第ぢゃ。
 
 ラヴクラフトという、戦前に活動していたアメリカの作家がおるのぢゃが、パルプマガジン(読み捨ての週刊誌や月刊誌)に怪奇小説や幻想小説をたくさん書いた人でな、「人類文明前に、地球には宇宙からの来訪者がまったく別の文明を構築していた」という概念を打ち出して、現代のSF小説の先駆者なのぢゃ。
 その一連の作品を、後世のSF愛好者が「クトゥルフ神話」と名付けて愛読しておるのぢゃが、今回のミイラ“マリア”が発見された一連の経緯が、そのラヴクラフトが書くSF小説とあまりにも類似していることに、儂は驚いておるのぢゃ。
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