トラップヒロイン  十三木考

文字数 1,697文字

俺のルームメイト・小日向真は男子。

…なんだが、女子の制服を着て、女子みたいなか細い手足で、女子みたいな声と仕草。


コイツ、本当に男なのか——?


(裏サンデーより)

https://urasunday.com/title/381

このごろ流行りのLGBTかと思いきや、ラストで「なるほど」になったこの作品。
たった1話の最終話を出すまでにどれだけ待たされたことか。
休載からようやく復活した、と、思った瞬間にまた休載しちゃったからねえ……。
あと1話だとわかっている状態での「おあずけ」は結構辛いものがあった。仕方ないのだけど。
そして復活と同時に課金で最終話を読んだと?
そのくらい、ラストをどうするのかが気になっていたんだってば。
しっかし、休載を挟んだせいで完成を急いだようにも見えてしまうんだよね?

いじけた見方をしすぎかな?

でもこれはこれで、これでいいかなあと思える。打ち切り作品によくあるあの違和感がなかったから。
まあ、確かに。

さてさて。


君が冒頭でちらっと口にしたLGBT。

なぜこの国は、キーワードが流行り出すと判で押したように似たような作品を世に送り出しがちなのか。

一人の女が男性の資金力にパラサイトして用が済んだら次々と殺していく話なんかもすぐにドラマのテーマになったよね。
これでもかってくらい執拗にね?
もっと古くは未成年が神戸で起こした連続殺傷事件もそうだった。
あの後、未成年の起こした事件をテーマにした作品が雨後の筍の勢いで増えたんだったっけかねえ……。
3億円事件だって何度もテーマになってるよね。だから次に流行るテーマはパンデミックだとぼくは思ってる。

ショッキングな出来事って創作欲を刺激するのは確かだろうけど、芸がないなって思うことも多いんだ。

芸がないというのか、品がないというのか。

LGBTをテーマにした作品も、「そういうことじゃないんじゃないかな」と思わなくもないものが多いんだよな。

サーカスの見世物じゃないんだから。
まあでも、結局は“大衆”にとってLGBTはその程度のものでしかないということでもあるのかなとは、ぼくは思っているんだよ。
大衆? また出たねそのキーワード。

ルルーの『オペラ座の怪人』だってそうでしょ? エリックはサーカスの見世物にされていた過去を持っている。

大衆にとって「一般と違うもの」がそのような扱いに甘んじてしまうのは、人間の社会というものが必ず敵や異質なものを作って「外」に追い出し、「内」の仲間意識を固めるよう人の防衛本能に働きかけるからなんだ。

何度も思ってるけど、人間って悲しい生き物だよね。
人類のそもそもが、それほど強い種ではなかったということの名残なのでは?
ん?
弱い生き物ほど寄り添い集団化するってことだよ。生き残るために「社会」を作るんだ。ネコ科の生き物の多くが単独で生活できるのは、彼らが地上の勝者だったからだ。
あれえ? でもぼくら猫は、人間がいないと生きていけそうもない気がするんだけどなあ?
犬ほどじゃないと思うけど?
そうかなあ? まあいいや。
……と、そんなこんなでこの『トラップヒロイン』もそんな程度の作品だろうと高をくくって読んでいたんだが、違った。
まあでも、途中まではそんな感じの作品のように見えなくもなかったけどね。
作中の主人公じゃないけど、ぼくも何度か「本当は女の子なのでは?」を疑ったからね。
疑ってたね。ストーリーの流れが見えにくかったこともあり、そっちに転ぶ分岐ルートでも違和感はなかったと思う。
あるいは、ただのBL(ボーイズ・ラブ)に甘んじてしまうのかもしれない、とも考えた。それでもいいけどね、とは思っていたよ。
そしたらラストが、凄かったね。
作者はこれが描きたかったのか、が見事に凝縮されたラストだった。

「自分らしく」生きることが「一般」の「当たり前」にそぐわないことを認識している少年の、これは葛藤の物語であったんだね。

だから結果がBLでも、ぼくはこれ、かなり満足だな。

まあ結果、BLになってしまったねえ……(笑)

でも、ただのBLではなかったでしょ?

休載をこれだけ挟むといろいろと心配なんだけど、ぼくは次の作品も、本気で期待してる。
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