トラップヒロイン 十三木考
文字数 1,697文字
俺のルームメイト・小日向真は男子。
…なんだが、女子の制服を着て、女子みたいなか細い手足で、女子みたいな声と仕草。
コイツ、本当に男なのか——?
(裏サンデーより)
たった1話の最終話を出すまでにどれだけ待たされたことか。
あと1話だとわかっている状態での「おあずけ」は結構辛いものがあった。仕方ないのだけど。
そのくらい、ラストをどうするのかが気になっていたんだってば。
でもこれはこれで、これでいいかなあと思える。打ち切り作品によくあるあの違和感がなかったから。
さてさて。
君が冒頭でちらっと口にしたLGBT。
なぜこの国は、キーワードが流行り出すと判で押したように似たような作品を世に送り出しがちなのか。
これでもかってくらい執拗にね?
あの後、未成年の起こした事件をテーマにした作品が雨後の筍の勢いで増えたんだったっけかねえ……。
芸がないというのか、品がないというのか。
LGBTをテーマにした作品も、「そういうことじゃないんじゃないかな」と思わなくもないものが多いんだよな。
まあでも、結局は“大衆”にとってLGBTはその程度のものでしかないということでもあるのかなとは、ぼくは思っているんだよ。
ルルーの『オペラ座の怪人』だってそうでしょ? エリックはサーカスの見世物にされていた過去を持っている。
大衆にとって「一般と違うもの」がそのような扱いに甘んじてしまうのは、人間の社会というものが必ず敵や異質なものを作って「外」に追い出し、「内」の仲間意識を固めるよう人の防衛本能に働きかけるからなんだ。
人類のそもそもが、それほど強い種ではなかったということの名残なのでは?
弱い生き物ほど寄り添い集団化するってことだよ。生き残るために「社会」を作るんだ。ネコ科の生き物の多くが単独で生活できるのは、彼らが地上の勝者だったからだ。
犬ほどじゃないと思うけど?
……と、そんなこんなでこの『トラップヒロイン』もそんな程度の作品だろうと高をくくって読んでいたんだが、違った。
作中の主人公じゃないけど、ぼくも何度か「本当は女の子なのでは?」を疑ったからね。
あるいは、ただのBL(ボーイズ・ラブ)に甘んじてしまうのかもしれない、とも考えた。それでもいいけどね、とは思っていたよ。
作者はこれが描きたかったのか、が見事に凝縮されたラストだった。
「自分らしく」生きることが「一般」の「当たり前」にそぐわないことを認識している少年の、これは葛藤の物語であったんだね。
まあ結果、BLになってしまったねえ……(笑)
でも、ただのBLではなかったでしょ?