第41話 蒲への刺激
文字数 1,745文字
【毎日の天十郎と夏梅の小競り合いに蒲が参戦して来た】
「おい、バル乳」
「おい、デカマッチョ、肩削れ」
「二人とも朝から何をやっている?夫婦漫才か?」
「蒲、こいつ捨てて来て」
「夏梅、やめろ、俺を刺激するな」と蒲が夏梅を止めようとした。
「なんで、刺激なのよ」
「天十郎、俺に嫉妬して欲しいのか?」
「こいつ」二人同時に蒲に向かって叫んだ。
「やめろ、仲良くののしりあっているんじゃないぞ、夫婦喧嘩みたいなことするな」
「おい、蒲、お前は何を言っている。こんな乳お化け捨てろよ」
「クソマッチョ、シネ」夏梅が毒つと、蒲が切れた。
「やめないと叩き殺すぞ」二人を追いかけまわし始めた。
「キャー」
【二階の衣裳室の箪笥に逃げ込んだ】
夏梅に続いて、天十郎が飛び込んで来た。天十郎を追いかけてきた蒲は、殺気立っている。蒲が、怒り狂って箪笥をそのまま動かそうとしている。狭い箪笥の中で、夏梅の胸に押しつぶされそうになっている天十郎だ。
「デカマッチョ。動いている。怖いよ」
「まったく、何を怒っているのやら…」
「もう嫌だ。あんた、マッチョなのだから、どうにかしなさいよ」
「マッチョは関係ないよ」
「どうしてよ」
「つまりだな、簡単に説明すると、蒲を怒らせたらオレは殺されるってことさ、あいつ可愛い顔して、すっげー強いし、やることは、えげつないから」
「そうなの?」
「知らなかったのか?」
「知っている。蒲は、いつもは仮面を被っているから。人殺しなんて簡単にする人だ」
「そうか?」箪笥が斜めになった。
「まずいなこのまま、二階から放り出される」
「あんたが、どうにかしなさいよ」夏梅は、足で天十郎を箪笥の外に押し出そうとした。
「お!バル乳!やめろ」
「バル乳言うな!蒲に殺されろ」斜めになった箪笥のドアが壊れ、天十郎が外に転がり落ちた。その、転がった天十郎に蒲が覆いかぶさって、殴ろうとして手を挙げた。
その時、壊れた箪笥の中から、目を見開いた夏梅が怒りを込めて叫んだ。
「二人とも、家を壊すな!私の家から出ていけ!」
その声に蒲と天十郎の動きが止まった。
僕は天十郎と蒲の間に入り込み、天十郎を見つめた。
蒲は大きく深呼吸すると「今日の夕飯なににしようか?」と立ちあがり「おい、天十郎、直しとけ」と言うと、険しい顔の僕を見ながら、下のキッチンに降りていった。夏梅は「今日はバターソースパンを食べるからいらない」蒲の後ろに向かってヒステリックに叫び、下に降りた。
【おい、冗談だよな、怒るな】
蒲の声が遠くなる。ため息をつきながら天十郎は「蒲を怒らせると本当に怖い奴だけど、夏梅も相当だな」呟いている。
天十郎が一人、壊れた箪笥の片づけをしていると、こそこそと蒲が下から二階に上がって来て僕を見ると安心したような顔を見せた。
「おい、まずいよ、バターソースパン食べるって言っているから、夏梅は本気で怒っているよ」
「怒るだろ、これだけ壊せば。だけど…バターソースパンってなんだ?」
「夏梅の父さんのソウルフード」
「うん?」
「亡くなったお父さんが好きだった。単純に食パンにバターを両面塗ってフライパンで焼いてソースをかけて食べるだけ。昔はバターも貴重な時代にはそれなりの地位を占めていたさ」
「それが何」
「あいつ、怒るとそれを延々焼いては、食べ。と気分が落ち着くまで続く、ひどい時は一斤くらい食べる」
「ただ食うの?ふーん、怒り狂ってもそれで済めばいいな。無害な奴だな」
「天十郎、わかってないな。明日の朝食のパンをあいつがみんな食っちまう」
「俺、片付けているから、蒲が買ってくればいいだろ。だいたい、なんでこんな事になったのだ」
「もともとはお前だろ。お前が夏梅と仲良くするから、我慢が出来ない」
「仲良くないだろ、頭に来て『バル乳』って言ったら夏梅が怒りだして」
「バル乳ってなに?」
「バルーン乳」
「お前、バカなの?夏梅が一番嫌がる事を言ったの?」
「ああ?」
「それは怒るだろ」
「でも夏梅がデカマッチョって言った」
「お前ら幼稚園児か?そうやっていちゃつけば、俺が怒るのをわかってやっているのだろ」
「蒲、誤解するなよ!だからさ、いい機会だから二人で出て行こうよ?」
天十郎はお願いするように蒲に言った。蒲は黙ったまま、天十郎のそばに張り付いている僕を見つめていた。
「おい、バル乳」
「おい、デカマッチョ、肩削れ」
「二人とも朝から何をやっている?夫婦漫才か?」
「蒲、こいつ捨てて来て」
「夏梅、やめろ、俺を刺激するな」と蒲が夏梅を止めようとした。
「なんで、刺激なのよ」
「天十郎、俺に嫉妬して欲しいのか?」
「こいつ」二人同時に蒲に向かって叫んだ。
「やめろ、仲良くののしりあっているんじゃないぞ、夫婦喧嘩みたいなことするな」
「おい、蒲、お前は何を言っている。こんな乳お化け捨てろよ」
「クソマッチョ、シネ」夏梅が毒つと、蒲が切れた。
「やめないと叩き殺すぞ」二人を追いかけまわし始めた。
「キャー」
【二階の衣裳室の箪笥に逃げ込んだ】
夏梅に続いて、天十郎が飛び込んで来た。天十郎を追いかけてきた蒲は、殺気立っている。蒲が、怒り狂って箪笥をそのまま動かそうとしている。狭い箪笥の中で、夏梅の胸に押しつぶされそうになっている天十郎だ。
「デカマッチョ。動いている。怖いよ」
「まったく、何を怒っているのやら…」
「もう嫌だ。あんた、マッチョなのだから、どうにかしなさいよ」
「マッチョは関係ないよ」
「どうしてよ」
「つまりだな、簡単に説明すると、蒲を怒らせたらオレは殺されるってことさ、あいつ可愛い顔して、すっげー強いし、やることは、えげつないから」
「そうなの?」
「知らなかったのか?」
「知っている。蒲は、いつもは仮面を被っているから。人殺しなんて簡単にする人だ」
「そうか?」箪笥が斜めになった。
「まずいなこのまま、二階から放り出される」
「あんたが、どうにかしなさいよ」夏梅は、足で天十郎を箪笥の外に押し出そうとした。
「お!バル乳!やめろ」
「バル乳言うな!蒲に殺されろ」斜めになった箪笥のドアが壊れ、天十郎が外に転がり落ちた。その、転がった天十郎に蒲が覆いかぶさって、殴ろうとして手を挙げた。
その時、壊れた箪笥の中から、目を見開いた夏梅が怒りを込めて叫んだ。
「二人とも、家を壊すな!私の家から出ていけ!」
その声に蒲と天十郎の動きが止まった。
僕は天十郎と蒲の間に入り込み、天十郎を見つめた。
蒲は大きく深呼吸すると「今日の夕飯なににしようか?」と立ちあがり「おい、天十郎、直しとけ」と言うと、険しい顔の僕を見ながら、下のキッチンに降りていった。夏梅は「今日はバターソースパンを食べるからいらない」蒲の後ろに向かってヒステリックに叫び、下に降りた。
【おい、冗談だよな、怒るな】
蒲の声が遠くなる。ため息をつきながら天十郎は「蒲を怒らせると本当に怖い奴だけど、夏梅も相当だな」呟いている。
天十郎が一人、壊れた箪笥の片づけをしていると、こそこそと蒲が下から二階に上がって来て僕を見ると安心したような顔を見せた。
「おい、まずいよ、バターソースパン食べるって言っているから、夏梅は本気で怒っているよ」
「怒るだろ、これだけ壊せば。だけど…バターソースパンってなんだ?」
「夏梅の父さんのソウルフード」
「うん?」
「亡くなったお父さんが好きだった。単純に食パンにバターを両面塗ってフライパンで焼いてソースをかけて食べるだけ。昔はバターも貴重な時代にはそれなりの地位を占めていたさ」
「それが何」
「あいつ、怒るとそれを延々焼いては、食べ。と気分が落ち着くまで続く、ひどい時は一斤くらい食べる」
「ただ食うの?ふーん、怒り狂ってもそれで済めばいいな。無害な奴だな」
「天十郎、わかってないな。明日の朝食のパンをあいつがみんな食っちまう」
「俺、片付けているから、蒲が買ってくればいいだろ。だいたい、なんでこんな事になったのだ」
「もともとはお前だろ。お前が夏梅と仲良くするから、我慢が出来ない」
「仲良くないだろ、頭に来て『バル乳』って言ったら夏梅が怒りだして」
「バル乳ってなに?」
「バルーン乳」
「お前、バカなの?夏梅が一番嫌がる事を言ったの?」
「ああ?」
「それは怒るだろ」
「でも夏梅がデカマッチョって言った」
「お前ら幼稚園児か?そうやっていちゃつけば、俺が怒るのをわかってやっているのだろ」
「蒲、誤解するなよ!だからさ、いい機会だから二人で出て行こうよ?」
天十郎はお願いするように蒲に言った。蒲は黙ったまま、天十郎のそばに張り付いている僕を見つめていた。