15:自分を見つめる

文字数 1,508文字

 なんか、モヤモヤする。
 今日1日の感想はそれだった。1日中、なんとなく胸がざわざわして落ち着かない。
 原因があるとすれば、多分、いや、間違いなくあの2人だ。今日1日、頭のほとんどが梅崎くんとさわっちの事でいっぱいで、授業に全く集中できなかったのだ。

 今日の朝、クラスで2人がちょっとした噂になった後、事あるごとに2人は一緒だった。移動教室はもちろん、ペアを組んでやる授業も一緒、終には休憩時間や昼休みまで一緒。
 朝に2人で話していた時は、一度見た光景だったのであまり驚かなかったけれど、こうもずっと一緒にいるのを見ればさすがに気になってくる。あとで訊いてみようかな。そう思ったけれど、それも難しそうだった。
 ……あの2人が、本当に楽しそうだから。
 実のところ、昨日から梅崎くんに話しかけようか迷っていた。さわっちとどんな事を話しているのか、さわっちとどんな関係なのか。訊きたい事は山ほどあるけれど、いざ話しかけようとすると、2人の笑顔が邪魔した。
 今来ないで、いいところだから、と。
 実際は2人とも優しいし、そんな事を言うような人たちでない事も分かっている。でも、あの2人の纏う幸せそうな空気は、私にそんな言葉を連想させた。
「やっぱいい感じだよね、あの2人」
 2人の事を頭から追い出そうとクラスメイトたちのもとへ話しに行っても、話題はあの2人の事ばかり。たまにテストの話になる時もあるけれど、基本的には2人の進展具合の話だった。
 正直、学校が息苦しい。
 あの2人の事を気にしないために来ているのに、どこへ行っても頭から離れてくれない。教室にいても、廊下に出ても、トイレに行っても同じ。いつの間にかクラスだけでなく、学年全体へと噂は広まってるようだった。

「はぁ………」
 ダメだ、集中できない。
 テストまで残り2日だというのに、全く勉強が進まない。このままだと、過去最低の成績になってしまいそうだ。
 チラリと時計をみると、もう11時が近い頃で、ゆっくりと睡魔が襲ってきた。瞼が落ちそうになる。
 でも、まだ寝れない。ワークを見れば、あと数問だけ。解き終われば今日の分が終わる。寝るまであと少しの辛抱だ。
「えっと、X(4X+Y)=……」
 ペンを握り直し、一度ギュッと目を瞑ってから勉強を再開する。時間の方を気にしだしたからか、さっきよりは勉強に集中できた。
 あと7問、3問、1問……。
 最後の回答欄に答えを書き込むと、溜まっていた疲れがどっと押し寄せてきた。勉強の疲れもあるだろうけれど、気持ちの疲れの方が大きい気がする。それらを吐き出すようにため息をつき、ベットに横たわった。
 眠るまでの間、私が私自身に気になっていた事を考える事にした。私が私自身に抱く疑問―――それは、私が梅崎くんをどう思っているのかだった。
 新しいクラスになった頃なら、友達だと即答できると思う。けれど、最近は違う。友達である事に間違いはないけれど、何故かそれだけじゃ物足りない。もっと仲良く、ずっといたいと思うようになってしまっている。
 この気持ちを、なんていえばいいんだろう。男子の友達は何人かいるけれど、こんな気持ちになったのは初めてで、どう表せばいいのかがよく分からない。
 少女漫画と照らし合わせてみれば、これは私が梅崎くんを気になっていて、片思いの一歩手前の状態だ。
 これが、"好き"っていう事なのかな。
 もしそうだとしたら、私にとって"ハジメテ"の恋。つまり、初恋という事になるけれど、いまいちピンとこない。
 このモヤモヤの正体がよく分からないまま、私の意識は遠のいていく。

 今日は満月の夜で、真夜中にも関わらず、少し明るい夜だった。 
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