第4話 紅白歌合戦

文字数 1,995文字

 紅白歌合戦の出場歌手の発表が、先日にあった。
 悪いが、その記事は丁寧に読んでいないの。私はこの番組にあまり関心がない。数年前から見たいと思わなくなった。はっきり書くと、ミッキーマウスが登場した頃から、私は紅白歌合戦に興味を失った。ミッキーマウスは楽しいし、ディズニーランドにも行きたい。でも、ディズニーと紅白歌合戦はは何となく違うような気がする。
 最近の歌手を知らないのも、紅白歌合戦に興味を失くした理由のひとつ。ここ数年前から、初出場の歌手の名前を読むと驚くようになった。知らない名前ばかりだから。自分が時代に遅れてるとも思うよ。特に、横文字の名前は難しくて読めもしない。これ、寂しいことね。読めないのは横文字だけではない。『欅坂』というグループの名前も、実は読めなかった。名前に振り仮名をつけないなら、いっそカタカナにしてくれ、なんてことも考えてしまう。
 紅白歌合戦に関心をなくした理由は他にもある。
 忙しいのよ、大晦日。ぐうたら主婦の私だけど、することがそれなりにあってね。晩ご飯のあとから、年越しそばの用意もするし。それに、私は手早くないから時間に追われやすい。
 そんなわけで、好きな歌手だけを見ることにしていたのよ。用事しながら、テレビをチラチラ見て、好きな歌手の出場を待っていた。出場する順番が新聞に載っているから、多少のタイミングは掴めたよ。
 それも最近はしていない。子どもの頃の大晦日は、レコード大賞と紅白歌合戦を見るのが当たり前だったのに。
 大晦日、好きな歌手が晴れ舞台に立ち、豪華な衣装に身を包んで代表曲を熱唱する。やっぱり、ファンなら見たいよね。ちなみに、山口百恵さんの大ファンだった。髪型や化粧を真似したこともあったよ。
 紅白歌合戦から心が離れた理由、実は他にもある。理由と言うほどではないけど、「ガキ使」が面白くて、そっちばかり見ていたわ。その「ガキ使」もなくなるのね。やはり、残念。乱暴だとか何とか、休止する理由が書いてあった。今の時代に合わなくなったのか。『遠藤、アウト!』の声に、私はテレビの前で笑ってたけど。

 う~ん、話が段々と逸れて行きそうな気がしてきた。私はすぐに話が飛ぶの。悪い癖よ。
 ここからが私が話したかったこと。すみません。前置きが長いです。

 いつも同じ話になって申し訳ないけど、紅白歌合戦には郷愁があるのよ。懐かしい記憶。子どもの頃は、私の古き良き時代なんよね。戻れるなら、戻りたい。たとえ、それが数時間であっても。

 もう六十年近くも前の話。
 山間部の村に住んでいた私。祖父母、両親と姉二人で暮らしていた。はじめの頃は叔母さんも一緒だったみたい。私はまだ小さくて、あまり覚えていないの。
 これを書いていて、叔母さんが結婚したときの記憶を何となく思い出した。叔母さんの花嫁姿が頭に浮かんできたの。嫁ぎ先にも遊びに行かせて貰ってた。遠い昔に感じる。
 はて、五十年前というのは昔なんかな。昔としても、遠い昔と表現しても良いのかしらね。
 すみません。話がそれましたから、もとに戻ります。
 大晦日の夜は、もちろん皆で紅白歌合戦を見た。私の故郷は寒いところ。と言っても、近畿地方だからそこまで寒くないのかな。雪が積もるぐらいだから、寒いのは寒いけど。
 その寒い夜、家族で堀こたつにはいって紅白歌合戦を見たの。素晴らしい衣装をつけた歌手が次々に登場した。最後に出演者の合唱があったね。『蛍の光』だったかな。すみません、思い出せない。藤山一郎さんが指揮をされていた。『青い山脈』は名曲だと、今も思う。

 数年前に北島三郎さんのコンサートへ行ってきた。
 場所は大阪の新歌舞伎座。三階の席だったけど、たしか料金は六千円だった。けっこう高いよね。でも、六千円以上の内容で楽しかったよ。また行きたいと思った。
 すでに七十歳になられていたと思う。それなのに、三階までリフトで上がって来られて、ファンに挨拶をされていた。両手を大きく開いて、にこやかに礼をして下さったの。失礼な言い方だけど、お歳をまったく感じさせなかった。三階の高さまで上がったなら、私なら怖くてリフトにしがみつく。「凄いな」と北島三郎さんに感嘆した。素晴らしい方です。
 ラストには大きな船がステージに現れ、皆さんで楽しく歌われた。熱気があって、笑顔があって、舞台はいよいよ華やかに。
 はい、皆でワイワイ騒ぐ、本当に賑やかなお祭りでした。
 見ていて私、紅白歌合戦を連想した。ほんとうに賑やかで楽しく、あれが私の知っている紅白歌合戦なんだなと思う。昔の、それこそ国民的行事としての紅白歌合戦。古き良き時代ね。
 最近の紅白歌合戦にも魅力はあるのは、分かっているつもり。私が自分の幼少期を懐かしく思うから、当時の紅白歌合戦を好きなんやろね。
 ただのセンチメンタルなのよ。自分の感傷から、新しい時代に戸惑うだけ。
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