第15話 morecharmy 0915という名前になった経緯

文字数 2,173文字

 はじめまして(*^-^*)
 私は『morecharmy 0915』です♡
 よろしくお願いいたします!

 このように可愛く挨拶をしてみたいものだ。
 高齢になったせいか、このような台詞を書いたり言ったりするのは勇気が必要となった。高齢であっても普通に使えば良いのだが、何となくやめておこうと思ってしまう。ブログには絵文字や顔文字をよく使っているが、それも以前よりは頻度が減ってきている。また、無難なものを選んで使うようになった。
 以前に使っていた『 (⌒▽⌒)アハハ! 』のようなタイプの顔文字は、最近は少し恥ずかしくて無理になった。今は『 (*^-^*) 』が多いかな。
 『morecharmy0915』というネーム自体が、実は恥ずかしい。どのようなイメージを、本物の私を知らないひとに与えているかと心配になる。「charmming」とか「beautiful」とかの言葉とは、若いころから縁のない私であるから尚更である。
  
 しかし、私は『charmy』から離れられない。
 メルアドやSNSのハンドルネームに、必ずと言って良いほどこの英単語を入れてきた。最近はいろいろと気になるのであまり使わなくなったが、一時はパスワードも『charmy』をベースにして愛用していた。その理由は私がお調子者だったから。

 それはもう十数年前のこと。
 私は中華食堂で働いていた。同僚は、ほとんどが学生アルバイトや若いフリーターさんだった。十代に混じっていた私は、ある意味では目立っていたらしい。あるとき、若いひと達とホールにいた私に客が話しかけてきた。
 「あんただけ、四十やろ」
 その指摘は、決して間違いではないだろう。私が五十歳になった頃の話だから。正確には五十歳直前かな。詳しいことは、もう忘れた。
 ランチのホールメンバーでは、私ひとりがおばさんだった。他にもいたのだが、皆が辞めてしまったのだ。
 それにしても、客に鋭い指摘をされたものである。おかげで、私は自分がおばさんだと再認識してしまったじゃないか。
 そんなパート生活だったが、あるときに高校生のアルバイトさんが私に言ってくれた。なんの話だったかは忘れたが盛り上がってしまい、彼女は笑顔で私を持ち上げてくれた。
 「これからはcharmyって呼ぶわな」
 冗談を本気にしたと、ひとに笑われても私は構わない。社交辞令だとクールに流すほど、私は大人ではなかったのだ。とにかく、私は単純に嬉しかった。五十歳前後の私は「charmy」というチャーミーな言葉にはしゃいでしまった。
 帰宅して娘に自慢した。
 「ママさあ、今日、『コマちゃん』に可愛いって言われたわ」
 もちろん、『コマちゃん』は仮名である。明るくて可愛く、しっかりした子だった。彼女はそれ以降も、たまには私を『charmy』と呼んでくれていた。

 何度かそう呼ばれて、私は自分が本当にcharmyなんだと勘違いしたのかもしれない。
 携帯電話のアプリでパスワードを作るときは英語や数字を使うと知り、なんの迷いもなく『charmy』の単語をいれ始めたのだ。『newcharmy2000』と普通に登録していた。思い出したら自分でも笑ってしまう。
 ( 『newcharmy2000』は、もちろんフェイク。ここで適当に書いただけね )
 このNOVEL DAYSでは、違う名前にするつもりだった。漢字だけの名前にしようかと迷っていたような気がする。それなのに、新しい名前を考えている時間がなくて『morecharmy0915』としてしまった。『charmy』はもう何度も使っていたから『morecharmy』と自分をランク上げしていたのだ。次回は『mostcharmy』にしようと、真剣に考えた私は馬鹿でした。

 昨年の四月に【家族小説】の公募を知り、私はNOVEL DAYSにやって来た。
 締め切りまでの時間があまりなく、アカウントの作成にも焦っていた。そんなわけで、今まで通りに『charmy』を使ってしまったのだ。
 ちなみに、私は【家族小説】のタグをつけ間違えて、真面目に書いた『推理小説』を投稿できなかった。たしか【】の記号を抜かしていたのが理由だった。それを知ったときは本当に悲しくて残念だったが、まあ、きちんと投稿したところで入選は無理だったと思う。そう考えたら、『推理小説』を投稿できなかったことをあっさりと諦められた。しばらくしてから『推理小説』を書き足している。それはそれで楽しかったので、投稿できなかったことも笑える思い出となった。しかし、私って本当にぼんやりだな。
 『笑える思い出となった』と書いたばかりだが、一年前の失敗を思い出して、今はちょっと苦い気分になっている。

 時期を見てこの『morecharmy0915』とも別れるつもりだ。
 他のSNSなどにも『charmy』を使ったパスワードやアドレスはほとんど残っていない。かなり変更した。パスワードを忘れたから変更したものもあり、全てが『charmy』を卒業するという潔い理由からではない。
 また、この愛しい英単語をひとつぐらいは何かのパスワードに残しておきたい。
「次は『morecharmy』ではなくて『becharmy』がぴったりかも」
 そんな笑えないことを真面目に考えもする、今日この頃なのだ。
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