第1話 とりとめのない話

文字数 2,451文字

 若かった頃の思い出達。辛いこともあったけど、時間と共に忘れるのが自然なんだわ。実際に忘れてるし。寂しいけど、そんなもんかと。

 話は逸れるけど、私の話し言葉には統一性がない。私は生まれは和歌山県。大阪や京都府で育ち、神奈川県にも十年近くいたのよ。学生時代は他府県から来た同級生も多くいて、言葉にも影響受けてる。短大での二年間に仲良かったひとの言葉を、いまだに私は使ってるよ。
 ここでは、すみません、話し言葉を使うつもり。書きやすいから。

 話はもとに戻って。
 懐かしかったり、悲しかったり。いろんな思い出がある。
 それらの思い出を書きたくなった。備忘録にもなるし。ブログに書いた話も、ここにもう一度書きたい。



 子どもの頃に住んでいたのは、京都府下のある町。海が近くてね、魚が美味しいところ。
 でも、私が暮らしていた家は山の中だった。駅からバスに乗って行った山間部の村。家のまわりは、子どもの私には素敵な遊び場だった。裏山には私の秘密基地があったの。倉の横を通って山に登ったすぐそこに、秘密基地を私は作った。秘密基地を作ったなんて書いたけど、地面の窪みを利用しただけ。その窪みのなかの段差の一ヵ所が私の椅子みたいになった。花が咲いている場所を選んでたなあ。
 ひとりで遊ぶことが多かった。田舎で子どもの数も少なくて、近所は何故か男の子が多かったのよ。
 私の楽しかった時代。
 「人生で楽しかった時代はいつ」
 そう聞かれたら、私は答える。
 「高校時代と、故郷にいた頃」
 私は活発だった。ひとりでも裏山に登って遊んだ。今なら小さい女の子がひとりで山で遊ぶなんて、危なくて無理なことだけど。
 山だけでなく、野原でもひとり遊んでいた。そのあたりに座って、花の首飾りを作ったのを思い出せる。シロツメクサを編んで、首飾り。当時の私にしたら、女の子らしい遊びだったと思う。
 あの村ではのびのびと暮らしていた。私は末っ子だったせいやね、周囲に甘やかされ、可愛がられ、好き勝手にしてたから。今でも私は我が儘、自分で分かっている。一緒に暮らしている家族は、ほんと我慢強いと思う。
 外遊びから帰ったら、読書を楽しんでいた。もう昔だから記憶に自信はないけど、私には懐かしい風景がある。
 いや、風景じゃないな。これは情景と書き換えたほうが良いかも。
 堀こたつに入って、寝転んでいたような気がする。おばあちゃんが火鉢の横に座って煙草を吸い、テレビからは『みんなのうた』が流れていた。土間を降りた向こうにある台所では、母が夕飯の用意をしていたと思う。しつこいけど、記憶は鮮明ではない。私の大切な思い出なんだけどね。
 やがて、私は本を読みだす。それは小学校から借りてきた本だった。学校の図書室( 図書館かも )で使っていた私の貸し出し帳は、更新が早かったのを覚えている。あの頃はテレビも今ほどバラエティに富んでいなかった。自然と本を読む環境になったみたい。
 小学校の2年生か3年生だった。私は父親の転勤で大阪にきた。
 故郷にいた頃とは、環境はかなり変わったわ。故郷では薪や新聞紙でお風呂を焚いた。ちなみに、お風呂の火が消えないように私は見ていた。私の仕事だったのよ。大阪ではガスでお風呂を沸かした。えらい違いやわ。
 学校のレベルもこわいぐらいに違っていて、私はあっという間に劣等生。算数は特についていけなかった。
 何かにつけて、田舎に帰りたかったわよ。布団の中で泣いた夜もあった。
 それが、今では自分が大阪人であることに歓びを感じている。不完全な大阪弁しか話せない私だけど、この街を愛することに変わりはない。
 ブログに書いたことがある。
 「私は大阪のおばちゃんです。豹柄の服は着てないけど。似合わないからよ」
 うん、私のバッグには飴ちゃんが入っていた。今でもそうだけど。
 そうなのよ、私には二つの故郷があるんだよね。京都府下にある山中の村と、この大阪という都会。現在の私は大阪府の東部に住んでる。この街、奈良県と間違えるひともいるんよ。それはそれで面白いから、私は笑って聞いている。
 「うちは奈良やない。大阪やねんで」
 念のためにそれは言ってある。
 最近はあの村が懐かしくて堪らない。歳を取ったからかな。
 あの村にもう家はないの。写真でしか見ることは出来なくなった。
 あるとき、パソコン見ていて思い付いた。ストリートビューで、私の故郷を見たのよ。私は不器用だから、パソコンやスマホの操作が下手。いわゆる、機械オンチって話よ。ストリートビューも、思うようにはならない。
 それでも、懐かしい場所を見れたわ。いろいろ変わってたけどね。便利になったみたい。通っていた小学校も見た。嬉しかったな。
 田舎暮らしをしたいと、よく思う。でも、面倒くさがりな私には無理やろうね。夢はあるけど。
 私の高校時代のこと。担任の先生に話したことがある。
 「将来は山のなかの家で、本を読んで暮らしたい」
 先生は怒ったわ。
 「それは俺もおんなじや。けど、そんなことを考えるには、今のお前は若すぎる」
 ほんまやね。先生が怒るのも当然やわ。今は、先生の言葉の意味が分かるような気がする。でも、あのときは怒られてびっくりした。
 さて、山の中に家と多くの本が用意されたら、今の私はどうするだろうか。
 たぶん、退屈して困る。正直、そう思っている。
 実は、最近は読書をしていない。恥ずかしながら、もう何年もしていない。結婚してからも、スローペースながら読書はしていた。それが、漫画やゲームに夢中になってしまったのよ。DVDもよく観たし。読書の素晴らしさは知っていたけど、娘達が読む漫画に私も夢中になったの。
 「月に代わってお仕置きよ」
 面白かったね。セーラーマーズが好きだった。あとは、『ふしぎ遊戯』とか『からくりサーカス』が大好きでね。
 ゲームもRPGなら、私はエンドレスナイト。
 その結果は顕著に出たよ。
 長くなるから、ここでいったん終わります。
 とりとめない話で申し訳ないです。








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