第3話 星

文字数 1,094文字

 時どきだが、二階の窓から星を見ている。
 ほんの少しの時間ではあるが。 

 子どもの頃に住んでいたのは、山に近い家。
 夜空には満天の星。
 綺麗なんて言葉では表現しきれないものだった。その壮大な美しさを大自然の驚異と言えば、間違いで不適切になるのだろうか。
 
 現在の私が住んでいる家も山に近いところにある。
 見晴らしの良いところに立てば、前方には素晴らしい夜景が広がっており、遠い大阪市内の輝きを見ることも出来るのだ。
 後方には山々とその上に広がる空。
 見上げる空は黒みがかった紺色。そのときの天気によるのだろうが、多くの星が見えることもある。
 地球からその星までは、想像もできないほどの距離があると聞いている。

 学生時代の私は地学がまったく分からなかった。
 もともと理数系の勉強ができない私だったが、地学の授業は特に難しくて理解できなかったのだ。黄道とか赤道、ブラックホールなどは名前を知っているだけだった。
 真面目に地学を勉強したら良かったなと、最近は思うことがある。
 白や赤に輝く星を見ても、名前が分からない。明るい光を放つ星を見ても「あれは何という星座にあって、名前は何だっけ」と考えてしまう。
 一等星や二等星などの名前を、子どもの頃は少しだけ知っていた。
 神話や民話などで、星座にまつわるお話を読んでいた。『ギリシャ神話』を特に好きだった記憶がある。

 話は変わる。
 もうタイトルも忘れてしまったが、何となく記憶に残っている物語があるのだ。
 覚えているのは、たぶん主人公が少女ということ。仲間は誰だったのか忘れた。少女の弟かもしれないし、何人もいたような気もする。ひょっとしたら、主人公は少年だったかもしれないし、仲間もいたかどうか。いい加減であるが、本当にはっきりと思い出せないのだ。
 舞台は宇宙だったと思うのだが、大きなドームらしきものが登場してくる。主人公が探す父親が、その中にいたような気がするのだ。このエッセーを書いていると、私の思いこみかもしれないが、そのドームの挿絵が何となく頭に浮かんできた。それは、色彩のないシンプルな画だったと思いだしている。
 読んだ時期はたぶん、何十年も前の小学生だった頃。
 それからの時間の長さを思えば、この年齢になった私がこの物語の内容を忘れても変ではない。しかし、同じ頃に読んだ本でも、記憶に残っているお話もあるのだ。この物語の記憶が曖昧な理由は、私には難しくて理解できなかったのだろう。
 或いは、自分で思っている以上に星が好きだったのかもしれない。
 それだから、宇宙での冒険物語に心を惹かれたのではないだろうか。そのようにも考えるのだ。
 
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