第5話

文字数 682文字

<湖の畔の小屋・18時>

「誤解がないように言っておきたいが・・・」
オルロフはゆっくり言った。
「俺たちは<愛の儀式>と言っている。子どもをつくることだけが目的ではないんだ」

妖精はオルロフのそばに立った。火かき棒を持っている。
危険だ。

「えー、なにそれ、じゃぁ、何のために交尾するわけ?
消耗するし、時間の無駄でしょ!」

妖精はかなり合理的な思考をする。
どうしたらこの妖精に理解させることができるだろう。
オルロフは考えていた。

「本当に好きな相手と、愛を確かめ合う。すべてを分かち合う。喜びだ」

「それって興奮すること?興奮はさめるでしょ!すぐに!」
妖精は即答した。

確かに事実ではあるが・・・男には賢者タイムが訪れる。
「口で言っても説明できない。体験がすべてだ。体験すればわかる」
俺には無理だ。オルロフは判断した。

「ふーん」
妖精は納得がいかないようだ。

「なぜ、君はあの時、指輪を投げたんだ?それにすごく怒っていた」
オルロフは聞いた。

妖精の声が少し小さくなった。
「大人になりたくなかった・・だから成人の証の指輪を捨てちゃおうと思って。
私たちの子ども時代はとても自由なの。
でも、成人すると、結婚すると、いろいろな縛りがきつくなる。」
妖精はうつむいた。

「でも、失くした事がばれたら、大変なことになるし・・
あの時は、やっぱり拾いにいくしかない・・と思って」
妖精は自信無げに言った。

「・・あなたには迷惑をかけたわ」
妖精はまた薬草リキュールを飲んだ。
相当強いのだろう。

オルロフはその様子を見て言った。
「俺の国とは逆だな。ガキの頃は剣術とか学問をみっちりしこまれるが、
成人になると自由になる」

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