第9話

文字数 632文字

<湖の畔の小屋・19時50分>

<愛の儀式>の前に必ず誓いのキスをする。
グスタフ皇国のしきたりだ。
同意と合意をお互いに確認するために。

「俺は君の気持ちを聞きたい・・俺の事をどう思っている?」
妖精はまた、グイっと薬草リキュールをあおり、息を吐いた。

「あなたはいい人よ。ハグも良かった」
妖精はオルロフのカラになったグラスに、薬草リキュールを注いで答えた。
くそっ・・なんだ・・この微妙な回答は・・・オルロフの葛藤はまだ続く。

まず、キスの説明だ。
なんて言えばいい?どうやったら納得させられる??
薬草リキュールで、回らなくなった頭で必死で考える。

「その・・俺の国ではワインを買う時に味見をする。
産地やその年によって、出来、不出来が違うからな。
キスも同じだ。本当に好きな相手かどうか・・・お互い味見、つまりテイスティングすることだ」

妖精もオルロフの説明に、うなずきながら聞いている。
「薬草リキュールもそうね。作り手の好みで入れる薬草がずいぶん違うもの」

よし!よし!乗ってきたぞ!妖精!
「ハグが金貨1枚くらいなら、キスは金貨50枚くらいの価値があると思う」
ああ、吹っ掛けすぎているな・・オルロフは少し反省した。

「ふーん、そーなのぉ・・結構高価なのね」
「・・もちろん個人差はあるが・・価値観はひとそれぞれだし・・好みもあるし・・」
俺は何を言っているんだ!・・何を弱気になっている・・・
オルロフは手の届く位置にいる妖精を前に、悩んだ。

「で、どうすればいいの?」
妖精が直球で攻めてきた。
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