第4話

文字数 954文字

信じられない!
「いや・・発情って・・・」
オルロフはあっけにとられた。
「いつも交尾をしたがるって!!」

そう言って、妖精は自分のグラスに緑の液体を注いで口に運んだ。
魔女の国は独特の慣習や文化があるとは、聞いていたが・・・

「交尾って・・君の国では言っているのか・・?」
オルロフは薬草リキュールをゴクリと飲み、恐る恐る尋ねた。
「はぁ~」
妖精は出来の悪い生徒に、理科の授業をするがごとく言った。

「交尾は子どもをつくるためにするの。そんなことも知らないの?!
あなたは!!」

オルロフはその発言にあきれたが、好奇心には勝てなかった。
「君は、エリーゼ・・その・・交尾を・・したことがあるのか?」

妖精はオルロフを睨み《にらみ》つけた。
「あるわけないじゃない!!昨日、成人の儀式を終えたばかりよっ!」

その言葉を聞いて、オルロフは一気に力が抜けた気がした。
「そうなんだ・・・・・・」

妖精は薬草リキュールを、ごくごくっと飲んだ。
「でもっ、一か月後に交尾をしなくちゃいけないのっ!!
それもお母様が決めた相手と!」
怒りをこめて、薬草リキュールの瓶をテーブルの上にドンと置いた。

「もう一杯いかが?!それで出て行って!道はもう、戻っているはずよ!」

オルロフは慎重に言葉を選び、聞いた。
「君の国は・・不思議だな、愛情を持たないで・・その交尾をするのか?」

妖精は、ぐびっぐびっっと一気飲みをすると、その口調は、社会の授業のようになった。
「私たちはね、秋の収穫が終わると交尾をするの。
春から夏にかけて子どもがうまれるから。
愛情って何?
交尾は義務よ!納税と同じ。国民のね。
国を維持するためには、人が必要でしょう?」

オルロフはあまりの驚きに、次の言葉が出てこない。
息をするのも忘れるくらい・・・驚いた。

「その、ものすごく驚いた・・俺の国と全然違う・・」

妖精は<あんた、何いってるの?>と言ったように、眉間にしわを寄せた。
「私こそびっくりだわ。
グスタフの国は春の子も、夏の子も、秋、冬の子もいるって聞いて!」

妖精は薬草リキュールを、ドボドボとオルロフのグラスに注いだ。
オルロフもひと口飲んだ。
薬草の匂いがきついが、とろりと甘い。アルコール度数は、かなり高いだろう。

妖精は、暖炉の火を火かき棒でおこしながら言った。
「一年中発情って、どう考えてもおかしいわ」
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