第16話

文字数 741文字

<2か月後・グスタフ皇国の王宮・10時>

それから2カ月後、オルロフ皇太子は、王宮で執務をしていた。
時々、頭をよぎるあの想い。
美しい幻影・・光をまとう妖精の姿。
あれから、何度もあの場所に行った。
が、何の痕跡もない。

「魔女の国では、代表が変わったようですね」
白髪まじりの外務大臣と、官房長官が話をしている。
「魔女の国?!誰が、選ばれたのだ?!」
オルロフ皇太子がすぐに反応した。

外務大臣は、戸棚から外交親書を取り出し、机の上に並べた。
「ご覧ください。これを・・・魔女の国はグランビアの当主ですね。
エリーゼ・グランビア」

エリーゼ?・・まさか・・
あの妖精が!
「その、当主の肖像画とかは、ないだろうか?!」
皇太子が勢いよく立ち上がったので、外務大臣は怪訝な顔をした。

「魔女の国は、本当に情報がないのですよ。
魔女たちは成人になると、他国に行く時は、老婆に姿を変えるので。
本当の姿がわからないのです。」

「でも、何か・・・正式なものでなくても!情報をとにかく全部出してくれ!!」
食い下がる皇太子の姿を見て、外務大臣は困り顔で、自分のひげをねじった。

「お待ちください。何かあるか確認してみますから」
しばらくして、大臣が小さな額縁に入った絵を持ってきた。

「この絵は、国際交流の親善会の時のものです。
各国代表の子どもたちが参加をしたので、記念に描かれたものです。
ただ、ずいぶん前の事ですから」

オルロフは10人ほどの子どもたちが、集合している絵を手に取り眺めた。
そこには、不機嫌そうなあの妖精・・
まだ幼さを残してはいるが・・・所在なさげに、端っこに立っている。

絶対に手に入れることができない・・・あの人は・・・
オルロフは、頭を抱えた。

そして、妖精の魔力で後片付けが、完璧に行われたことを理解した。

おわり   
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