第13話

文字数 952文字

「そ、そ、それは確かに、わかるよ。そこんところ、不安になるのは。
よくわからん野郎が、しかも3人で、入れ替わり立ち代わりで・・・
そりゃそう思うのは当然だよ」
そう言いながら、オルロフはうなだれている妖精を、絶対に救い出すと決心を固めていた。

明日、朝一で、この妖精をつれてこの国からでる。
でも、それをするには彼女の「同意」が必要だ。
オルロフはうなりながら、戦略を練った。

「俺の国では、結婚相手を選ぶときは、お互いが好きだということももちろんだが、
相性も大事だって、言われるんだ。
結婚前に、相性を確かめる事は重要だ」

「相性・・・ってどんなことなの?」
妖精の疑問は続く。

「一緒にいて、お互いの思いやりが感じられるとか、癒されるとか、信頼できるとか。
これから家族になるし、将来的に、子どももできるから・・・」
妖精は「そこは理解できる」というように、コクコクうなずいた。

オルロフは心の中でつぶやいた
<カラダの相性も重要なのだが>

「でもね、みんな言っているわ。結婚すれば、何とかなるって」
妖精はため息をついてから、薬草リキュールを飲んだ。
彼女の不安を受け止め、解消するために、俺は何ができるのか?

「俺たちの国では、付き合うと、二人で一緒に食事をしたり、遊んだり、たまには、こうやって酒を飲んだりもする。それはとても楽しいんだ。
それをデートって言っている」

オルロフはそう言って、目の前に自分のグラスを掲げた。
グラスの向こうに、妖精がどしゃぶりの雨のなかにいるように、ゆがんで見える。

「それで、ある程度親しくなったら、ハグして、お互いどんな感じか、確認作業をするわけだ。
もし、そこで、「やっぱり違うな」って思ったらやめればいいし」

「確認作業?」
妖精は小首を傾げた。
「最初はモチロン、挨拶のハグだよ。
でも、もうちょっと親しくなりたいなって思ったら・・・」

オルロフの脳内会議では、熱い議論が飛びかっている。
この妖精をオトす、自分のものにするにはどうしたらいいのか。
脳内メンバーは口角に泡を吹き、槍や剣を掲げて、雄たけびを上げている状態だ。

オルロフはあえて、冷静である自分をアピールするように、方向を定めた。
「実際に練習というか、確認作業手順を体験してみる、っていうのはどうかな?」
狡猾な提案だが、もう退却はできないと考えていた。
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