第15話 新生騎将編

文字数 1,854文字

「国は整いつつあるのに、一つの謎が残るだけか……」
「自分なら、いっその事エルヴァスを逃して追跡する方法が確実かと思います」
「逃がした所で、目的の場所へ案内するとは思えないな。だから拘束したまま尋問するほうが理想的だろ」
「ですが答えてくれるか解らないのですよ」
「待つ事だけが全てじゃない。こちらで全てを吐かせる準備くらいしてから望むつもりだ!」
 アルフィードは眼を細くし、レオスの猛反発を押し倒す。当人は聞く耳を持ってはいない。
「それなら、シャルナにも聞きたい事がある。お願いできる?」
 (こうべ)を下げてアルフィードに懇願する。この動作からエリオットも未だにシャルナ・オルバードの事を気にしている事が伺える。余程愛情込めて育てられたようだ。そんなエリオットの心も汲み取ってか、
「いいぞ。シャルナとエルヴァスの二人ならば、どちらかが答えるだろうからな」
 了承を得たエリオットは満面の笑みでありがとうと囁く。
「それで、あの二人からどう情報を聞きだすの? まさか王位を譲るつもりじゃ……」
 何の策も無しに問い詰めても答えるような人間ではない事を熟知している。ならばこそ対策があるのだろう。その期待に答えるべくアルフィードは解答する。
「譲ったところで、国民は誰一人として仕えない。これは明白な事実」
「ならばどうするの?」
「オレの力をアイツは欲していた。故に力を貸してみようと思う。そこから先はオレ一人で聖導兵器を見つけてぶっ壊す」
「どちらか一人が吐くとも思えないのは誰もが知ること。力を貸すなんて、殿下は国を滅ぼす気ですか?」
 レオスの疑問に対して熟知していたのだろう。アルフィードはその問いに答える。
「滅ぼす気はない。だけどこちらは力も武器も使わないことを条件で会談を望むことになる。相手にとって、このチャンスを逃すはずはないよな。そして聖導兵器の場所を知る機会もこちらにある」
「それで、もし一歩でも間違えて兵器が発動したらどうするの?」
 アルテミスの追求にアルフィードも答えを述べる。
「その時のためにお前がいるんだろ。期待しているぞ」
 あまり笑顔を見せないアルフィードがアルテミスに笑みを見せる。その滅多に見られない笑みに負けて、アルテミスは女神としての役割を全うする言葉を放つ。
「そう、それがアルフィード君の決めた覚悟なんだね。それなら私も全力で援護させてもらうね」
 続けてアルテミスは予感を伝えようと口を開く。
「罠があるかもしれない。聖導兵器の名を知っている以上、本体か設計図があるはず。そこから察するに嫌な予感しか浮かんでこない。アルフィード君でも手の施しようのない何かがあるように感じるの。だからアルフィード君一人で行動させるのは絶対駄目」
 アルテミスの瞳には今までに感じた事のない悲愴が見て取れる。
「そんな危険な事、アルフィードにさせるのは嫌だよ」
 エリオットでさえ心配をみせる。アルフィードにとって唯一人の妹エミリーと誓った守る子孫がエリオットなのだから。エリオットの心を汲み取り、
「エリオットもシャルナに聞きたいことがあるんだ。とりあえずは皆でかかれば怖くはないだろ。何があっても今は六聖騎将のレオスがいるからな」
 そう言い放ち、視線を向けられるレオスも照れ隠しせず、
「エリオット陛下とアルフィード殿下の命は守りぬくと誓いました。陛下と殿下の盾になることも厭いません!」
「そこまで畏まる必要はないと思うぞ。レオスを選んだのは強さのほかにエリオットの年齢と差がないから良き友になってくれればと思った訳だし……」
 レオス自身が忠誠心を言葉で示すもアルフィードの「良き友になってくれれば」から彼なりに答えを見つけ出そうと思考をめぐらせ、
「それはつまりエリオット陛下と王臣の関係ではなく、友人としてですか!?」
「そうなるが、エリオットもその方が安心できるよな」
「うん、ボクも王臣の関係だと今も慣れていないから、友達として居てくれたら良いかな……と。よろしく」
 六聖騎将が裏切ったのはログワルドの口車に乗せられた為であり、王臣の関係ではなく友情を築けば、裏切りも起きなかったであろう。
「レオス、お前にしか頼めないけどエリオットと友として接してくれ」
 シャルナに裏切られた事を今も引きずっているエリオットに、せめてもの幸せを願うアルフィード。その想いに応えるべくレオスは、
「俺、いや自分でよろしければ御力に!」
 友情を結んだ。
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登場人物紹介

クラウディア王国・王子アルフィード


世界はドリュアスと呼ばれる樹木の使いに脅かされる。

千年前、妹エミリー・クラウディアを救う為、

女神アルテミスと儀式を行ない、不老不死となり、神の力「聖法」を授かった。

この物語はそれから千年の世界での出来事となる。​

女神・アルテミス


人々を見守る十二の神の一柱。

アルフィードに力を与え不老不死にした存在。

全知(ゼウス)の命令でクラウディア王国復興の手助けをする。

エリオット・クラウディア(エリー)


クラウディア王国、真の王族。

百年前、欲望に飲み込まれたログワルド家が内乱を起こし、国は瓦解。

生き延びたクラウディア王家の末裔であり、

数多くの子供達が偽りの王の奴隷として使われている。

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