第6話

文字数 557文字

「ちょっとバックヤードの備品も確認してくる」とチーフが席を立ったので、私は一人で受付の留守番を任されることになった。

10時15分。
次の予約までまだ時間がある。
腕時計をチラチラ確認するが、なかなか時間は進まない。
時間をたっぷりかけたはずなのに、先程まで取り掛かっていた作業もすでに終わりが見えている。
手元にある書類をファイルに収納して、棚に片付けたら作業は終了だ。
あの後から電話も一切鳴らず、待合室には叩きつける雨の音とBGMのモーツァルトの曲だけが小さめの音量で流れている。
院長の趣味で毎日同じ時間に同じモーツァルトの曲が流れるため、メロディもすっかり覚えてしまっていた。
確かこの曲の次はちょっと暗めの曲が流れるんだよなぁ、この天気で暗めの曲は気分まで落ち込んでしまうような気がする。
私はぼーっとしながらパソコンの前に座っていた。
今朝はアラームが鳴るギリギリまで寝ていて朝食を抜いたのでお腹もすいてきた。
お昼ごはんはボリュームたっぷりの親子丼にしようか。
でも、親子丼のお店はここから結構歩くんだよなぁ…、この雨の中あの場所まで歩いていくのはちょっと嫌だなぁ。
完全に油断していた次の瞬間、エレベーターの扉が開く音が少し遠くで聞こえた。

えっ。
この豪雨の中、誰か来た…?
予約外の患者さんだろうか。
私は慌てて立ち上がった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み