第3話

文字数 497文字

受付に座った瞬間、電話が鳴った。
チーフは別の作業をしていたので、私が受話器を取ることになった。
この時間だったら新患の予約だろうか、新患が来ても比較的空いているので今日は迅速に対応できる。
「お電話ありがとうございます、」
眼科の名前を伝えようとしたが、先に相手が早口で捲し立ててきたので私はグッと言葉を飲み込んだ。
「足を滑らせて転びそうで怖いから、今日の予約を来週に変更させてくれないかしら?」
定期的に来院する鈴木さんだった。
ざらついた声が特徴的だから私はすぐに聞き分けることができた。
電話に出るまですっかり忘れていたが、鈴木さんは外出時に杖を使う。
もともと元気な人で、一人でスタスタ歩き通院していたが春先に骨折してから歩くときに杖を使うようになっていた。
確かにその状況で雨の日に来院するのは危ない。
カルテを見ながら、前回の処方で目薬も多めに出ていること、症状を確認し、1週間延期しても大丈夫だと判断した。
来週の同じ曜日、同じ時間帯に予約を変更して電話を切る。
いつの間にか雨も勢いを増している。
予想外だ。
10時の予約が突然キャンセルになってしまい、また何をしていいかわからない時間ができてしまった。
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