第13話

文字数 531文字

予想外だ。
彼が再びここに戻ってくる。
こんなチャンスは二度と訪れないだろう。
「実は以前舞台拝見したことがありまして…お仕事頑張ってください!」ぐらいは言っても良いのだろうか。
いや、でもマネージャーさんもいないということは今日来院したのは完全プライベートなのだからここはそっとしておくべきでは。
ぐるぐると思考を巡らすも正解がわからない。
誰もいない受付で私はデスクに突っ伏した。
あ、そういえば傘も持たずに飛び出して行ったけど、雨大丈夫だったかな…。
窓際まで近寄って外の様子を見てみると、雨はすっかり弱まってきていた。
「綺麗なお顔してたねー」
チーフが検査室から気配もなくひょっこり現れたので、背筋がビクッとした。
「そ、そうですね…」
「あれ?」
チーフがレジの前に置いてある診察券に気づいた。
「それ、忘れ物じゃないです、笹平さん手持ちがなくて銀行に行っててまた戻ってくるんでそのときお渡しします」
「そうなんだ、クレカや電子マネーで支払いしてる人はなかなか現金持ってなかったりするもんね」
財布の中身も確認せず、慌ててここに来たのかも。
それほど急を要する症状だったのだろうか。
「検査室の片付けやってきちゃうね」
チーフが受付から出て行き、私はまた一人で受付に残されることになった。
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