第9話

文字数 530文字

予想外のことが現在進行形で起きている。
突然目の前にイケメンが現れると、人は挙動不審になるということを改めて思い知った。
数分前に「あー!イケメン見たいなー!」と思っていたが、実際に自分と同じ世界線に何の前触れもなくイケメンが現れると頭が真っ白になってしまう。
いつもならすんなりパソコン入力できるのに、今日に限って何度も同じ変換ミスを繰り返し、先程あんなに丁寧に書けていた文字も緊張で手が震え、少しふにゃふにゃになってしまった。
私が手続きをしてる間に、チーフが院長を呼びに行ってくれたらしい。
悪戦苦闘しながらカルテを作成し、隣の検査室に戻ってきた院長に渡した。
しばらくして院長が彼の名前を呼び、彼は「はい」と小さく返事をして検査室に歩いていく。
「受付の方が会話するチャンスあるでしょ、私が検査担当変わるよ」とチーフが耳打ちしてきた。
チーフも検査室に少し遅れて入っていく。

誰もいない受付で私は天井を見上げた。
いつの間にか神経が張り詰めていたのかもしれない。
この数分間、うまく酸素も取り込めていなかったようなそんな感覚を覚えた。
私は小さく頭を横にふるふると振り、思いっきり深呼吸した。
空気をゆっくり吸い込みながら、私は3ヶ月前に見た彼の公演をぼんやりと思い出していた。
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