第67話~年越し~

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王宮の中庭を見下ろすテラスでサタンの年越し祭り開幕挨拶を聞いてるのだけど!
なんで!それも闇の国と関係の強い王族方々の前列で闇の国王族一同と一緒にまどかの横に並んで立って居るの私達!?
「落ち着かないようだが緊張でもしてるのか?」
まどかに聞かれるけど
”なんで私達がここなの?”
「王都民であれば誰でも知ってる王国の危機を救った英雄だから」
”その襷はメイレーンに渡したんだけど”
「誰もが素直にメイレーンを指揮官として受け入れたのも彩美達の後ろ盾があってだ」
”そうでもココに立つのが相応しいのはメイレーン達と思うけど”
「急くなそれは今回の決着が付いて正式に爵位を下賜されてから」
「滅多に見れない光景なんだから楽しもう彩美」
こういう時に気持ちを切り替えるのが早い七海だね

横に並ぶまどかと真矢はお揃いで式典正装をしてオフショルの黒いロングドレスで御姫様感が凄い
何時ものクール美人な感じは変わらないけど華やかさに湧き出る王族のオーラが加わり存在感が凄いよ
「・・・・・今宵は祭りを最後までお楽しみ頂きたい」
サタンの挨拶が終わり盛大な拍手に包まれる
それから来賓の中でも闇の国と繋がりが深い国の王族による挨拶が続く
来賓挨拶の〆は光の国のカマエルだね
「今宵は素晴らしき祭りに御招待を頂き・・・」
見た目は三十歳位で貫禄が凄いけどミカエルの面影を感じる
ルシファー級の魔力を持って生まれが母に魔力と視力を封印され盲目の身になり継承権無しと第一皇女廃位と成った身
自分より強い魔力を持つ娘に恐れた父ゼウスが身を害すこと無いように母が施した処置はゼウスの死で解放された
能力と視力を取り戻したウリエルだが復位はせず光と闇の戦争から復興に尽力する為に王女となった妹ウリエルを支える存在として歩んでいる

事前に知らされている式次第では開会式の〆はまどかの乾杯で終わりだね
「乾杯はまどか様お願いします」
司会を務める書記官の声が響く
隣のまどかが最前列に向かい歩み始める
えっ私の手を取り引っ張って行く何?何なの?
逆の手は七海を引いてるけど七海は予想してた感じでシレーって感じ
声を掛ける間も無く最前列の中庭が見下ろせる位置まで連れて行かれたよ
中庭を見下ろすと多くの来賓として迎えられた各国使者や王都要人がテラスを見上げてる
七海と私を見つけた美香が大きく手を振ってるよ
中庭の奥半分は王都民に開放されているので多くの人々がすし詰めで開会式へ参加してる
その奥に見える街は明るく輝き風に乗って賑やかな喧騒も聞こえて来る

「今宵は多くの皆様に・・・」
まどかの挨拶が始まるけど突然の事で身が入らないよ
挨拶が終盤になると乾杯用のグラスをナタリーが手渡しに来た
眼下の中庭でも臨時王宮侍女を務める街人達がグラスを配っている
「さて乾杯は皆も御存知の水晶級冒険者の彩美と七海も一緒にしてもらう」
中庭奥の王都民を中心に盛大な拍手と歓声で迎えられるのはうれしいけど何か恥ずかしい
「二人へ王都民の感謝だ」
まどかが小声で私達に呟く
私は私の目的の為にで感謝とか求めてなかったけど感謝は嬉しいから素直に受け取るよ
手のグラスを軽く掲げ感謝への謝意を表す
歓声が一段と盛り上がってから落ち着くと
まどかがグラスを高く掲げると
「乾杯」
掛け声に合わせて皆グラスを乾す

来賓参列者と挨拶の為にテラスから中庭に移動する途中でルシファーに近づき
”承知済だったの?”
「驚かして済まなかったが前持って伝えていたら雲隠れしてただろ」
”まあ間違いなく”
「ならこうするしかないだろ」
まったくルシファーには敵わないよ

中庭では王都の飲食店からケータリングが準備され酒と共に来賓へ提供されて軽い立食パーティー状態
来賓の多くはサタンとルシファーに挨拶の列を成したり顔見知りの来賓同士で盛り上がってと色々だね
私達が中庭に到着すると美香が来たよ
「彩美ちゃんとねーさんへの歓声凄かったね」
”何か恥ずかしかったよ”
背後に気配を感じる初めてだけど誰だかわかるよ
「失礼します彩美様」
振り返り確認をする
”カマエルだね”
「はい御会い出来まして光栄です」
年明けに光の国で会談をするので今日は定型文的な挨拶だけをしたよ
「では年明けに我国でお会い出来るのを楽しみにしております」
”うん!よろしくね”
他にも何人かの来賓から挨拶をされたら一段落だね

闇の国の式典で来賓に提供されるのは軽食程度の食事と酒だけで本格的な食事は街中の飲食店でしてもらう
これは街の治安が良いのもあるが売り上げによる経済活性化や色々な国々の特産品をPRする場としての意味もある
メインストリートでは空きスペースに来賓で訪れている各国が露店を出して特産品や国の料理を提供して特産品販路拡大や観光客誘致をしている
さて私達も何処に行こうかな?
”何処に行く?”
「冒険者デビューの年を締めく括るのは決まってないかい」
やっぱしそうだよね七海
「よしギルド酒場に行こう!」
美香もわかってるね

うわ~予想はしてたけど年越しはここって冒険者でギルド酒場はパンク状態だね
”こりゃ河岸を変えるかね”
二人に確認を入れるようとすると
「彩美様!ここどうぞ!」
声の掛かった方を見ると第一師団の団員が数人で食事をしてる
”私達は大丈夫だからゆっくり飲みな!”
「俺らもうすぐ巡回当番なんで行かないとで良いタイミングですよ」
”では遠慮なく!”

テーブルを運良く譲り受け食事に有り付けるね
ここであれば二人もメニューはある程度覚えてるので各々食べたい物を注文してるよ
七海と私が無理なので美香に激辛は我慢してもらったけどね
毎度だけどジョッキ代わりのピッチャーで乾杯すると二人は爆食モード
「このステーキは厚くても柔らかいけど何の肉なのかな?」
他のメンバーがいると争奪戦の人気で落ち着いて食べる事の少ないステーキで美香が気になったみたいだね
そういえばステーキだけで注文してて気にしたこと無かった
”メニューには「塩胡椒だけで美味い極厚ステーキ」としか書いてないね”
「まあ美味しければ何の肉でもいいんじゃないか」
美味しければで細かい事は気にしない七海でした

こんな能力の使い方は無駄使いかもしれないけど御遊びも時にはいいよね
目が赤くなり先史代の視界に切り替わる
ステーキの方程式を読み解くと「牛」だね
ってまあ味がそうだったから方程式を調べなくてもで本当に御遊び
”うん!牛だね”
「方程式を見たのか?普通にウエイトレスに聞けばいいのではないか?」
”それを言われてしまうと・・・”
「ネタってわかってるから本気にしないでよ」
時々だけど七海のボケはわかりにくいよって私も言われるからココも似た者でいいのか!?

そろそろ爆食タイムも終わりのタイミングで
「彩美ちゃん年越し蕎麦とかあるのかな?」
”う~ん蕎麦や天婦羅は物語に出した事ないからなあ”
メニューを改めて見るけど蕎麦は無いね
ガレットは蕎麦粉に近い感じだったから麺状にすれば蕎麦に近いのは出来そうだけど
”材料としては蕎麦粉に海老もあるから来年は蕎麦打ちして年越し蕎麦作ってみようか”
「それは楽しみだな」
「蕎麦まで打てちゃうの彩美ちゃん?」
”去年の年越し後に今年は手打ち蕎麦でと思って練習してたよ”
「相変わらず凝り性だよね」

”あっ!”
キッチン横の「今日のお勧め」を見て追加でちょっと遊んだ注文をしてみたよ
「なんか企んでるな」
あえて念通を消して闇の国語だけで注文したから七海が気になったみたいだね
”うん!届いてからのお楽しみ”
すぐにピッチャーで無くてジョッキが届く
”まず年越しはやっぱし米酒でね”
「確かに気分は華やかになるな」
「で本丸は何が届くのか楽しみだね」
”二人にも闇の国語と文字を教えないとだね”
「それだが念通を切って会話を聞いて発音だけでも真似をしようとやってみたが無理だったがどうするの?」

そうなんだよ普通の方法では日本語と全てが違い過ぎて難しいよね
一日にどの程度までいけるかな
”今から少しだけ送り込むから”
まずは七海だね
先史代に意識を切り替えて光る線で構成された七海へ新たな方程式を書き込む
「うわ何か入って来た」
同じ事を美香にも
「うきゃ」
さてどうかな?
”〇△◇×☆”
「こんばんは・・・かな?」
「私もそう聞こえたよ」
”挨拶の基本を送り込んでみたけど気分はどう?”
「少し脳が熱い感じでいいのかコレは?」
「ちょっと軽い風邪気味な感じだよ」

かなり手探りだったけど送り込む量は適度だったかな
やっぱし無理が出ない範囲だと一度に送り込める量は少ないね
”やっぱし少し無理やりなんでゴメンね”
「まあ異世界物で強制学習は地面を跳ね回る激痛から昏睡も普通だから手加減してくれたのかな」
私が転移してから美香から聞いたけど七海は異世界転生アニメとか時間があれば見て来る日に備えていてくれたんだよ
”御希望があれば一回で送り込めるけど地面を跳ね回るというか死を望むレベルな激痛の一瞬から数日は意識が飛ぶレベルかな”
「それは勘弁してもらおう」
”時間はあるし無理が出ない範囲で少しずつやっていこうね”
「〇△◇×☆・・・発音も出来るのか謎の発声方法だが」
”どうも呼吸法が少し違うみたいで私達の声帯では発音出来ないので魔力で声帯を動かしてるから慣れるまで違和感はあるかも”

おっネタの本丸料理が来たね
「これは!見た目だけなら年越しうどんに見えなくは無いね」
スープ多めにしてもらったボンゴレスープパスタに白身魚のフライが乗ってるよ
透明に近いスープだから頑張って脳内変換すれば関西風うどんに見えるはず!
「蕎麦は来年の楽しみで今年は年越しパスタで楽しむとするか」
ズズゥ~
気分だけでもで蕎麦みたいに啜って食べて見たけどパスタだね
貝の出汁で少し和風を感じるけど蕎麦とかうどんのイメージは諦めよう
「気分だけでも年越しな感じになってきたよ」
来年は気分だけじゃ無くで頑張るね美香

王宮に戻り新たに王都警備本部として準備された部屋へ
まだ間に合わせな感じで部屋には執務用の机と椅子に八人掛けの応接セットだけ
部屋に入るとメイレーンとセレンが応接机に王都の地図を広げて打ち合わせをしてる
”おつかれ~差し入れだよ”
テイクアウトで買って来たピザとかフィッシュアンドチップスを机の空いてる場所に並べる
「ありがとうございます」
少し顔が青くて疲れが見えるメイレーンだね
「いい香り~」
セレンは一目散にピザへ飛び付いたよ
ボトルからグラスに赤ワインを注いで二人に渡す七海
二人揃って爆食モードだね

「ごちそうさまでした」
食事をして顔色が戻ったメイレーンでよかったよ
”今晩が山場だもんね”
「これで朝の交代まで元気に行けます!」
今晩の祭りが終わり夜が明けるまでは気を抜けないもんね
「状況はどうだい?」
七海の質問にメイレーンが答える
「今日は西と北門から十数名の邪教徒が侵入を試みましたが全て始末は完了してます」
”予想より邪教団の規模が大きい感じがする”
「そうですね合計で二百名以上は邪教徒を始末してますし」
”祭りが終わっても当面は気が抜けないか”
「ルシファー様から新年御前会議で今後の方針に関してお話しがあるとお聞きしてます」
”さてルシファーは今後どうするかな”

ゴーン!ゴーン!ゴーン!
王宮にある大鐘が鳴る音が響き街からの歓声がここまで聞こえてくる
”おっ年が明けたね”
「「明けましておめでとうございます」」
と皆で一斉に新年挨拶
”夜が明けたら休み?”
「はい二日の御前会議まで休みになります」
”じゃあ温泉入りにおいでよ”
「よろこんで!セレンも行くよね!」
「はい!」
コンコン
扉がノックされ第一騎士団の団員が入って来る
「あっ来客中でしたか」
”私達は気にしなくていいよ”
「では失礼します定時連絡会議の時間ですので訓練所へお願いします」
「わかりましたすぐに行きます」
”じゃあ後でね”

飲みに街へ戻るのもいいけど激混みだし部屋飲みをすることにしたよ
年越すぐだけどナタリーがワインとチーズを届けに来てくれた
「今年もよろしくお願いします」
”去年以上に色々とある一年になると思うけど今年もよろしくね”
「突然に彩美様が転移して来て女体化した事より驚く事は少ないと思いますが」
”まあ確かにね”
「七海様も美香様もよろしくお願いします」
「こちらこそ!」
「今年も彩美が無理を色々頼みそうだがお願いする」

ナタリーが戻ったあとはソファーで飲みなんだけど
少し飲んだら・・・やばい眠い
横の七海にもたれ掛かったら温かくて急に眠気が
「お眠かな」
”う~ん疲れるほど何かしたとは思えないけど眠いよ”
「メイレーン達が来るまで時間あるから少し寝ときなよ」
”うん”
寄り掛かる七海に身を任せると数秒で意識が闇に落ちる

爆睡になった彩美を膝枕にした七海が美香と談笑をしていると
「少しよろしいですか」
「どうしたアーク」
ソファー横の空間が歪みアークが現れる
「年明けなのですが光の国から戻りましたら彩美が実体の元へ行く時間を頂きたく」
「邪教団の追跡に関しては緊急ではないので時間を作るのは問題ないけど何か急ぎかな?」
「再調整の準備が出来たので早い方が彩美の負担が減るので」
突然の眠気は魂と体を繋げるインターファイスになる方程式が両者のバランスを上手くとれず無駄な疲れを生み出してる
先史代として解放後に付き添うアーク幻体が状態をモニターしてアーク実体に報告した事で現状より最適化された方程式が準備出来たのでインストールのタイミングを待っていると
「何せ前例の無い方程式ですので何回か調整は必要な前提でしたから」
「しかしアークから直接に伝えればいいのは?」
「自分の事は後送りにしてしまいそうで七海さんからならと」
「それはあるな必ず行くように伝えよう」
「なんだか彩美ちゃんに関する用語がコンピュータ系ばっかしでサイボーグ化したんじゃないかと思っちゃうよ」

おはよう・・・二人が来たよ・・・
耳元で囁く声が意識を闇から引き戻す
”う~ん”
こら!囁いた後に耳たぶを甘噛みするんじゃない!
「どう?」
目を明けると少し心配そうな七海の顔
”かなり楽になったよ”
返答で笑顔になった七海が身を起こすのを七海が手伝ってくれた
「三人は先に風呂へ行ってるよ」
水を注いだグラスを手渡してくれた
一息に飲み干すと少し微睡んでいた意識が一気に覚める
ゆっくりソファーから立ち上がりながら
”よし私達も風呂行きますか”

昨日の朝から徹夜で疲れているはずのメイレーンとセレンだけど無事にやり切った興奮から元気一杯だね
「皆さんの手助けでなんとかなりました~」
湯舟に到着すると湯舟では既に酒盛りが始まってる
”おつかれ~!”
「「お疲れ様です!」」
無事に邪教徒から年末の王都を守り切った二人の表情は自信に満ちて輝いてる
祭りも無事に終わったけど安堵してる虚を突かれる可能性もあるので王都の警戒は続いてるけど邪信徒に対する警備も手順化出来て来たので二人も休息をゆっくりだね
風呂でのんびりしてご飯と行きたいけど昨晩遅くまで営業だった飲食店は夕方からなので風呂上がりは少し仮眠するよ

「よしナデナデの時間だ!」
もう慣れて来たけど美香と二人の関係も不思議だけどいいよね
三人が美香の部屋に行くと残された七海と私
少し仮眠した私は少し回復してるけど七海が眠そうだね
ベッドへ行き横になり七海を軽く抱きしめ目を閉じる
七海の温もりと寝息を感じながら意識が闇に落ちて行く・・・

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感想を一言でも頂けるとうれしく執筆に熱が入ります
掲載サイトによっては匿名で感想を書けないのでマシュマロを用意しました
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登場人物紹介

彩美<主人公>

女装癖のある男子高校生

平穏な高校生活が崩れた時に出会い救ってくれた七海と恋に落ちる

七海との出会いで高校生活を送りながらニューハーフとして生活することを決め新宿のMIXバーで活躍する生活を送る

少し普通ではないけど七海と一緒に平穏な日々を過ごしていたが突然の異世界転移で女体化する

異世界転移で与えられたご都合主義は「無敵チート」だけで苦労満載の異世界生活が始まる

唯一与えられた無敵チートの意味を日々考えている

七海<ヒロイン(純女)>

新宿二丁目にあるMIXバー「セブンシー」のオーナーでママ

店を開くまでは歌舞伎町で伝説級のキャバ汝として活躍していた

絶望の淵にいる彩美を愛し救いの手を差し伸べ恋人になる

少し特殊な性癖を持つため彩美と少し不思議だけど幸せな同棲生活を楽しんでいた

ある日突然の異世界転移した彩美の帰りを待ち続けている

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