第18話~クリスマスイブ~

文字数 9,071文字

お腹が空いた感覚で目が覚める
あれ頬が濡れてるよ寝ながら泣いていたのか
どんな夢をみたんだろう思い出せない
覚えてないってことは無理に思い出さない方がよいのかも

サイドテーブルの時計を見ると十五時を少し過ぎたくらい
風呂で逆上せてから朝ごはんも抜きだったので腹も減るよね
サイドテーブルの呼鈴を鳴らす
数分でナタリーが来てくれた
「お目覚めですか」
”お腹空いて目が覚めたよ”
「何か取り寄せますか?」
”ちょっと気合入れ直したいから辛いのにするかな”
「辛いといえばボルケーノですね」
ボルケーノは激辛料理も売りの一つなんだよね
”ボルケーノ風ホットハンバーガーセットをポテトとオレンジジュースでお願い”
「LLセットにしますか?」
”うんお腹へってるしね”
「では届き次第お持ちします」

届いたハンバーガーは以前に注文したオリジナルのマスタードソースでなく真赤なソースが添えられている
さてどれくらい辛いのかなポテトを一本取りソースを付けて食べてみる
”うわ辛い!”
思わず声が出るレベルだけどなんとか食べれそうな範囲でよかったよ
後味で色々な旨味を感じて口の中が楽しいかも
このソースはボルケーノ激辛料理の基本なはずなんだけど物語では皆んなピリ辛レベルで食べてるんだよね
これはメネシスの辛いに気を付けないと辛さに対する耐性が違い過ぎる可能性ありだね

少し気合をいれてバーガーにかぶりつく
舌とか口内の痛みの前にドーンっと頭に響き意識が一瞬真白になる
その直後に舌と口内に辛いを通り越して猛烈な痛み
気合を入れて飲み込む
すぐに胃が熱くなる胃から全身に熱さが伝わり噴き出る汗
口の中はまだ痛いけど後味を少しずつ感じ始める
あれ?でも口の中の辛さが少しだけ引いて来るともう一口食べたい欲求が

何回も激痛から後味もう一口を繰り返してあっと言う間に食べ終えるが汗で寝着もシーツも滴る汗でビショビショだよ
ポテトとオレンジジュースで口内の火事が鎮火するのを待つ
ポテトを食べ終わる頃には口の中は平常運用に戻ったけど先にオレンジジュースを飲み切ってしまったので水差しの水を飲んで落ち着く
ふーなんか汗と一緒に色々出たのか気分もすっきりしたよ

呼鈴を鳴らす
部屋に来たナタリーが汗でビショビショの私を見て驚く
「どうされたのですか!?」
”辛さで汗が噴き出して”
「初めてですので辛さレベル1でお願いしたのですが手違いが」
”違うよ辛さの耐性がメネシスの平均より私が低すぎるだけだと思う”
「そうですか」
”でも美味しかったし汗かいて何かスッキリしたので楽しんだよ”
「よかったです次回は辛さ超抑えめですね」

タオルで全身の汗を拭いてもらい下着と寝着を着替えさせてもらい抱っこでソファーに移動
ナタリーがベッドのシーツを替えてくれる
ベッドに戻されるとサラサラが気持ちいいよ
”ありがとうナタリー”
「では失礼をいたします」

さて暇だな
窓越しにテラスを見ると以前に使った的用の案山子が数体残ってる
少しやってみるか
車椅子に乗りテラスに出る
右手を平を上で天に伸ばし魔法を通さない壁がテラスを覆うイメージをして魔力を込める
”魔法結界”
テラスを囲むように薄いピンク色のガラスみたいな幅一メートル位の六角形が組み合わさって覆われていく
よし魔法結界は出来た

”水晶乃剣よ”
右手に水晶乃剣が現れる
魔法発動補助具だから魔法がどう変化するか楽しみだね
剣に火をイメージして魔力を送る
刀身が黒と青に紫が混じった炎の色で揺らめく
あまり魔力を込め過ぎると何が起きるのか分からないので出来るだけ軽めに
さてどうする?
剣を振るか?目標に向けて発射するか?
振るなら直接攻撃の方がよさそうだから先端を目標に向けて引き金を弾くイメージをする

剣の先端から稲妻の様に闇の炎が的にした案山子に迸る
的の案山子に当たった炎が弾け他の案山子にも降り注ぐ
残っていた案山子すべてが炎に触れた部分から周りに向かって消えてゆく
”あっやばいかも!!”
本能的に感じた放たれた炎の威力が強すぎて標的と対消滅出来なかったのが周りも焼き尽くそうとしてる
結界があるから的以外に被害は出ないはずだけどこれでは結界を解く事が出来ない
左手の平を残り火に向け伸ばし魔力を込める
”消えろ”
残っていた火が弾ける様に飛び散り消える
よかったぁ
う~ん思い付きで魔法を使うのはまだ危険なのかなあ
今日はここまでにしよう
”結界解除”
結界が溶けるように消えてゆく
「剣よありがとう」
剣がバングルに戻る

パチパチパチ
後から拍手が聞こえ振り向く
いつの間にか後ろにルシファーが立っていた
「すごいですね」
”なんか適当にやったら危険なことになりそうだったよ”
「いきなり剣を発動補助具として鬼火を強化して使用するとは」
”この魔法は名前とかないの?”
「そのお~剣に鬼火を込めて切る魔法攻撃とかはやりますが炎を打ち出すとかは出来ないんです・・・普通は!」
珍しくルシファーが早口で捲し立てるように話す
”えっ”
「それなので新種の魔法となり名前はないですね」
”なんかまたも私やらかしてる!?”

「どれくらいの魔力を込めました?」
”表現が難しいけど本当に少しで一滴水滴を垂らすくらいのイメージかな”
「本当にもう慣れてきましたが無敵チートですね」
”今度から魔法の練習はルシファーが立ちあう時だけにするよ”
「あの残り火とか私が居ても残念ながら対処は出来ないですが」
”基礎からゆっくりきちんと教えてもらって魔力のコントロール出来ないと危険ってわかったよ”

「あっピザが冷えてしまうのでお部屋に戻りましょう」
ルシファーに車椅子を押され部屋に戻ると焼けたチーズのよい香りが漂っていた
サイドテーブルの横にLサイズくらいのピザとピッチャーサイズの陶器製容器にグラスが置かれた押し車がある
”まず色々の前に押し車で階段!?”
「このくらいは片手で持ち上げられますので」
そうだったコチラの皆様は馬鹿力が普通でした

押し車だと車椅子に座ったままの方が高さが合うので車椅子のままで椅子に座ったルシファーと推し車を挟んで対面に移動する
「お暇を余してるのではないかとお茶でもと思いまして」
ルシファーがピッチャーからグラスに注ぎ手渡してくれる
茶色で泡立ってる感じの見た目からビールな感じがするね
軽くグラスをかかげて乾杯
一口と思ったけど一気に飲み干してしまった
久々の喉越しに我慢できなかったんだよ
ビールに限りなく似てるけどアルコール度数は二十%とかあるのではないかな
かなり麦の香りが強くてホップはあまり感じないけど美味しい!
ルシファーが空いたグラスにビールを注いでくれる

「さあ冷める前にピザも食べましょう」
小皿に一切れ乗せて手渡してくれる
サイズは本当に宅配ピザのLサイズ一切れだね
一口かじると「これは普通にピザだ!」って久々にガイアに極めて近い味の食事で嬉しいよ
生地は全粒粉で小麦の香りが最高でピザソースはオーソドックスなトマトソース
トッピングはベーコンとアスパラに似てる野菜とたっぷりのチーズ
チーズは少しゴルゴンゾーラチーズとかと同じ青カビ系の匂いがするけど青カビ系大好きな私としては最高だよ
”おいしい!”
「お口に合ったみたいでよかったです」
”ガイアでもピザとビールは鉄板な組み合わせだよ”
「ビールも沢山ございますのでゆっくり・・・えーっと・・・女子会でしたっけを楽しみましょう」
”うん”

遂に迎えたイブイベントの日
朝は日常で迎えたよ
学校がある日は七時起きだけど冬休みなので少し遅めの起床で九時にベッドを抜け出してリビングへ
キッチンでは少し前に起きた七海が朝御飯とコーヒーを淹れている
「おはよう」
”おはよう”
ハグからキス・・・寝起きの幸せな時間
「もうすぐ出来るからね」
”顔洗ってくるね”

洗顔してリビングに戻ると手際よく出来上がった料理をテーブルに並べる七海
最後にコーヒーカップを並べて完成だね
朝御飯はベーコンエッグと横に添えられたグリーンサラダのプレートとトースト
”いただきます”
何種類かある七海の定番な朝御飯のメニューの一つでなんか落ち着くよね

朝御飯を食べ終わるとコーヒーを飲みながら少し雑談
話す事は日によって違うけど昨晩のお店話が多いかな
コーヒーを飲み終えると私は洗い物で七海は二杯目のコーヒーを淹れる
洗い物を終えるとコーヒーを準備して待ってるソファーの七海の横へ
七海にもたれかかるように座ってコーヒーカップを受け取る
七海はサイドテーブルに置いてあった雑誌を読み始める
時々一言二言は話すけど私は七海の温かさに身を任せて過ごす安らぎの時間

三十分位安らぎの時を過ごす
そろそろ十一時だね
スイッチを切り替えてキッチンに向かう

フライパンにバターを多めに溶かして
バターが溶けたら小麦粉を入れて炒めるよ
バターと小麦粉が馴染んだら牛乳を少しずつ加えてダマにならない様に混ぜては少し牛乳を加えるを繰り返す
全体が馴染んでトロミがでたらホワイトソースは完成だね
別のフライパンで剥き小エビとタマネギを炒めてホワイトソースを入れて塩胡椒で味を調えるね
朝御飯を片付ける時にセットしておいた御飯が炊けてるのでボールに移してバターを入れて混ぜてバターライス完成

グラタン皿にバターを塗ったらバターライスを半分くらい盛り付けてバターライスの上に薄くこれは手抜きだけど既成のピザソースを薄く塗るね
その上に小エビの入ったホワイトソースをたっぷり入れてピザ用チーズをこれでもかー!って乗せてからパン粉を全体に振りかけたら準備完了でラップをして冷蔵庫へ
これを五回繰り返して
えっなんで五回は後でわかるからね

キャンベルのオニオンスープ缶を小鍋にあけて弱火で温める
「相変わらず手際がいいな」
”美味しいって食べてくれる顔を見たいだけだよ”
そろそろオーブンを予熱しとくかな

ピンポーン
「鼻が効くな」
インターフォンに出る七海
まあ今日は予定の来客なので驚かないよ
ピロリンピロリン
オートドアから玄関に到着したね
七海が玄関に行き出迎える
私は冷蔵庫からグラタン皿を三皿取り出しオーブンに入れる

玄関につながるドアが開くと美香が登場
「ハロー!彩美ちゃん」
”いらっしゃい美香ちゃん”
「ってぇ主夫が板について来たねぇ」
なんか分からないけど顔が赤くなるよ

この面子なら酒は水みたいなもんなんで今晩のことなんか考えないでいいよね
ワインにはまった私のために七海がリビングに設置してくれた家庭用ワインセラーに向かう
何がいいかなチーズを考えると赤だけど・・・ある程度重いけどランチなのでテーブルワインで飲める気軽さのワインがいいよね
あった!「クラレンドル・ルージュ」がいいよね
ビンテージ関係なく安定した味でドッシリと重みもあるけど華やかな香りで飲みやすい私的にはテーブルワインの王様

抜栓してテーブルにグラスと一緒に持って行く
グラスも私のワイン趣味に合わせて七海が色々と揃えてくれたんだ
このワインなら香りも楽しんで欲しいので底が深めなリーデルのカルベネかな
グラスにワインを注いで二人の手に渡す
”料理はもう少し仕上げに時間かかるから飲んで待ってて”
「彩美ちゃん乾杯は一緒だよ」
お言葉に甘えて私の分もグラスに注ぐ
「「かんぱーい」」
「何これ!メチャ美味しくて飲みやすい!」
「彩美のお気入りのクラレンドル・ルージュだな」
”うん高くて美味しいのは当たり前だけどテーブルワインの価格でこの味わいは本当に奇跡だと思うワインなんでね”

スープが温まったので先にカップに注いでテーブルへ
チーズの焼ける食欲を誘う匂いがオーブンから漂い出してきたよ
「彩美ちゃん!なんかすっごい胃袋を刺激する匂いが!!」
そろそろかな
オーブンからグラタン皿を取り出し敷紙をした平皿に乗せてテーブルに持って行く
”熱々なんで気を付けてね”
キッチンに戻り残りの二皿を冷蔵庫からオーブンに入れてテーブルに戻て私も食べるよ
「熱々だけどスプーンが止まらないけよ上顎の粘膜がデロデロになってヤバイかもでもスプーンが止まらないよ」
「ホワイトソースから手作りとか本当に彩美は凝り性だけど味に手間が反映されてて最高だな」
うれしいな二人の美味しい笑顔
これが見たくて見たくてだよね

私が半分も食べてないけど予想のハモリだね
「「お替わりお願いします!」」
”はーい”
見越してオーブンに入れていた丁度焼き上がりの二皿を持って行く
”味変で唐辛子を漬け込んだオリーブオイルもどうぞ”
「これ思ったより辛いけどチーズとの相性が抜群だね」
七海がキッチンに行き別のオイルポッドを持って来た
「これもいいよね」
こっちはオリーブオイルに唐辛子と燻製したニンニクを漬け込んでるよ
「うわあニンニクの香りが食欲をさらに刺激するよ」

私が洗い物をしてる間は残ったワインを飲みながら雑談しながら過ごす二人
水道から出る水がシンクに弾ける音で途切れ途切れににしか聞こえないけど今晩着るドレスの相談をしてる感じだね
クリスマスイベントといってもキャストがコスプレしてスタッフはトナカイのカチューシャ付けるとかだしね
ハロウィンの流れだと御客様もコスプレで御来店も多くて店内は華やかになりそうだけど

洗い物を終えてテーブルに行き七海の横に座る
「はい彩美ちゃんのゴメンねワイン美味し過ぎて最後の一杯になちゃった」
”ありがとう!いいよ私のお気に入りを気に入ってくれてうれしい”
「彩美ちゃんはコスプレどうするの?」
”七海が赤サンタなんで同じデザインで色違いの黒サンタだよ”
「うわあ夜が楽しみだね」

”あっこれ”
美香に手の平サイズのジュエリーケースを渡す
「開けていいの?」
”うん”
中には完成したばかりのマリッジリングはが入ってる
「綺麗」
しばらく眺めてから蓋を閉めて手渡される
「ねーさんとか彩美ちゃんのイメージのままだね」
”えっ”
「超華があるけど目立ち過ぎずだけどしっかり存在感があるみたいな感じかな」
「妹にそこまで褒められると照れるな」

ワインからコーヒーに切り替えてワイワイとしていたら時間は十五時だ
今日は色々と準備があるので十七時には店にいかないとなんで準備を始める

といっても七海と私はコスプレ衣装に着替えはお店でなので普段着でいいからメイクとヘアセットだけ
七海がウオークインからドレスを持ってくる
薄い紫色が基調のオフショルで胸元が大きく開いているけど肩から胸元までレースで覆われているので露出は多いけどエレガントに着れるマキシ丈のワンピースだね
「これでいいかな」
「わー!って私これ着こなせるかな」
”絶対に似合うよ!”
「寝室で美香に着替えてもらうので彩美のメイクはリビングでお願い」
”はーい”

「さてパンツ一丁になってもらおうか」
「えっ!ねーさん・・・ついに」
「ってそーじゃない!ブラだとこのタイプのドレスは難しいから」
パンツ以外の服を全部脱ぐ美香
「はいコレ」
「ヌーブラ?」
「使ったことない?」
「うん」
「じゃ今回は私が着けるね」
「お願いします」

「最近のヌーブラは昔に比べて簡単になってるから・・・粘着面のホック横に★があるでしょ」
・・・・・
「★をトップに合わせて少し縦気味に脇に向かって貼り付けてホックをはめるとね」
鏡を見て美香が驚く
「すごい谷間ができてるよ」
「もともと巨乳だから色々しなくていいから楽でいいな」
「いろいろ?」
「谷間作るのに足りないとアッチコッチからヌーブラの中に脂肪集めたりとかする技もあってね」
「なんかブラと比べると不思議な感覚」
「慣れないと汗とかでムズ痒くなるけど我慢ね」
「これ剥がれないんですか?」
「普通にしてれば大丈夫だけど痒いからって掻いたりすると外れやすくなるから注意かな」
「頑張る」

「ねーさん!無理だ背中のチャックとホックがあ」
七海が背中のチャックを上げてチャックの上にあるホックを閉じる
「これ本当に一人で出来るの!?」
「慣れだね」
「一生出来ない気がします」
「さてメイクして仕上げちゃおう!」

”綺麗”
準備を終えて寝室から出て来た美香はモデルのようで見惚れてしまった
しかし見事な谷間だ・・・いかんいかん
パールのネックレスが大人の感じを強調してベースの美香もだけど七海のセンスも凄いなあ
「ありがとう」
「さて彩美も準備は大丈夫だね」
”うん”

七海が美香にバッグはこれねとかコートはこれでとかをやっていると
ピンポーン
インターホンに出てオートロックを解除
しばらくするとピロリンピロリン
玄関に行きお出迎え

「おー美香!凄いな!」
徳さんが登場
”七海と私は準備があるので同伴出来ないので徳さんにお願いしたよ”
「うん!よろしくお願いします徳さん」
「おう!準備出来てるなら行くか」
「はい」

「あっちょっと待って」
七海がウオークインから箱を持ってきて美香に渡す
美香が開けると黒革の八センチくらいヒール高があるハイヒールが入ってる
「うわヒール高い」
「マキシ丈だと高めのヒールじゃないと裾を地面に擦ってしまうから頑張れ!」
ヒールを見るとデカヒールでアンクルストラップだね
美香のサイズで履きやすいの準備しておいたんだね
”これデカヒールでストラップあるから歩くの難しくないよ”
「新品だから気にせずにここで履いてみて」
美香が履くと七海がアンクルストラップの長さ調整をする
数歩室内を歩く美香
「あっ少し怖いのはあるけど歩ける」
「よし大大丈夫だな!いってらっしゃい徳さんお願いしますね」
「おう」

二人が部屋を出ると七海が飛びついてきたあ
ハグからキスの定番コース
七海は興奮してるのかいつもよりキスが激しい
唇が離れると少し赤ら顔の七海が可愛い過ぎるよ
”いよいよだね”
「うん」

お店に着くとスタッフが総出で店内の飾りつけ中
「おはよう」
「「おはようございます」」
既に出勤してるキャストとスタッフに挨拶してバックルームへ

衣装ラックから七海と私のコス衣装を見付けて着替える
七海はクリスマスではオーソドックスな赤で私は黒
オフショルだけど胸元は隠れるタイプなんでパッドでも問題ないデザイン
肩口と胸元に白のフワフワな装飾で御嬢様感があるのもいいよね
ロングのタイトワンピースだけど太腿まで入ったスリットがかなり大胆な印象になってるかな
スリットからスカート裾にも白いモフモフ装飾でスリットが目立つのは少し恥ずかしいけど
七海ならもっとセクシーなのが似合うけど私とお揃いで着れるってこのデザイン選んだでくれたんだ

「コーラルさんと琴音ちゃん到着です」
フロアーから声がかかる
しばらくすると琴音ちゃんと黒スーツをビシッと決めた整った顔立ちの中年女性がバックルームにやって来た
「コーラルの武井です本日の担当をさせて頂きます」
コーラルは高級貸衣裳屋で今日は出張で来てもらったの
「21時までしばらく待ってもらう事になりますがよろしくお願いをします」
武井は持って来た衣装ケース等をバックルームの隅に置くと
「ではお時間近くになりましたら再度参ります」
とバックルームを出て行く武井

琴音ちゃんは奥のメイクテーブルにブラシやドライヤー等のヘアセット道具を準備し終えると
「七海さん彩美ちゃんおめでとうございます!今日は最高に仕上げるから楽しみにしててね」
”うんお願いします”

「琴音ちゃーんセットお願い!」
自分でヘアセットが苦手なキャストが早めに出勤して順番で琴音にセットしてもらういつもの光景が始まる
いつもと違うのはドレスでなく皆んなサンタコスプレだね

店内装飾の邪魔にならないテーブルに七海と私にマキとフロア長の恵子が集まる
今日のメインイベントの打ち合わせ
こんなイベント初めてなので細かいところまで確認してたらオープン時間ギリギリだったよ

朝礼も終わり
「さあ開店」
マキの声が店内に響く

流石イブイベントデーだね開店から大盛況
「ママと彩美ちゃん10番テーブルお願いします」
10番テーブルは団体向けの八~十人は迎え入れられるテーブル
広いテーブルに徳さんと美香がポツンとだけど今日はコレも理由があるんだよね
まずはジャックのストレートで乾杯
「うわあ二人ともセクシーで可愛い!」
”少しスリットが恥ずかしいよ”
「ショーパンで太腿丸出しより露出低いし」
”あれはあれってね”
多分私少しずつ緊張して来てる
それが分かるのか徳さんも美香も他愛ない会話で心をほぐしてくれている

「よっ!」
黒服に案内されて信さんがやって来る
”信さん御来店ありがとうございます”
今日は会議とかないけどイベントの為だけにやって来てくれたんだ
「まずはビールをもらおうかなシャンパンはあとでの楽しみだ」
”はい”

続々と10番テーブルに人が集まってくる
常連の七海と私を指名でこの後のイベントに参加が決まってる御客様は10番テーブルに集まってもらってるんだ
その理由は次のイベントが始まればわかるよ

ヘルプキャストも入って団体さんモードでバタバタになってきたね
「彩美ちゃん3番テーブルお願いします」
”行ってきます”
告知が短かったのでこの後のイベントを知らずに来店する方もいるので10番と他のテーブルを行ったり来たりの七海と私

「指名は二十一時までって話を聞いたけど」
”ごめんなさい!この後のイベント準備で”
壁の告知ポスターを見付けたみたいで
「なるほどね」
とかの会話もアチコチでだったね

七海と入れ替わりで10番テーブルに戻るとタカちゃんが来てくれていた
”わあタカちゃんありがとう”
「おめでとう!」

満員御礼でバタバタしてると黒服が
「そろそろバックルームへ」
と声をかけてくれた

バックルームに行くと武井に手伝ってもらってウエディングドレスに着替えてる七海が居た
七海が着替え終わるとメイクテーブルに行きコーラルのメイクさんがメイクを開始
今度は私がウエディングドレスに着替える
七海のメイクが終わると今度は私がメイク
今度はヘアセットをしてもらう七海
と順番にヘアセットまで済ますと武井がアクセサリとーかドレスの最終調整をしてくる
「もしよろしければ武井さんと琴音ちゃんも御参加お願いできませんか」
「よろこんで」
「謹んで参加させて頂きます」
時計を見ると二十二時五十分だギリギリだけど間に合った勝手の悪いバックルーム作業で流石皆んなプロだね
恵子がウーロン茶のグラスを持って来た
「はいバタバタで喉乾いたでしょ」
「ありがとう」
”ありがとうございます”
ウーロン茶を飲んで一息

別の黒服が来て武井と琴音をホールに案内する
七海と私は恵子にアテンドされてバックルームからキッチンの裏口を経由してお店入り口の外側へ

あと一分で始まる
七海と手を握り温もりを感じると緊張が薄らいで行く
目を閉じて気持ちを落ち着かせてると
「入場です」
恵子がドアを開けはじめる

”七海”
「うん」

さあ始まる浮世での一世一代の晴れ舞台
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

彩美<主人公>

女装癖のある男子高校生

平穏な高校生活が崩れた時に出会い救ってくれた七海と恋に落ちる

七海との出会いで高校生活を送りながらニューハーフとして生活することを決め新宿のMIXバーで活躍する生活を送る

少し普通ではないけど七海と一緒に平穏な日々を過ごしていたが突然の異世界転移で女体化する

異世界転移で与えられたご都合主義は「無敵チート」だけで苦労満載の異世界生活が始まる

唯一与えられた無敵チートの意味を日々考えている

七海<ヒロイン(純女)>

新宿二丁目にあるMIXバー「セブンシー」のオーナーでママ

店を開くまでは歌舞伎町で伝説級のキャバ汝として活躍していた

絶望の淵にいる彩美を愛し救いの手を差し伸べ恋人になる

少し特殊な性癖を持つため彩美と少し不思議だけど幸せな同棲生活を楽しんでいた

ある日突然の異世界転移した彩美の帰りを待ち続けている

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み