第14話~完全紹介制~

文字数 9,543文字

「少し体力にも余裕が出てきた感じなので軽く魔法の練習をはじめましょうか」
ルシファーが優しく抱えて車椅子へ移動
そのまま車椅子を押されテラスへ
「部屋の中ですと彩美の魔法発動が予想以上ですと危険ですのでテラスで行わさせて頂きます」

ルシファーが右手の平を上に腕を真っすぐ上に伸ばす
「魔法結界」
テラスを囲むように薄いピンク色のガラスみたいな幅一メートル位の六角形が組み合わさって覆われていく
”囲まれた!?”
「感じるのですか!?」
”いや見える薄いピンクのガラスみたいなのでテラスが覆われてる”
「見えますか・・・これは恐ろしい」
”そうなの”
「魔法結界は結界内で発動した魔法が結界範囲外に影響しない防御壁になります」
”うん”
「結界主の力に関係なく条件が揃わない限りは結界内で使った魔法は結界に遮断され外には影響しません」
・・・・・
「今回は魔法のみですが物理拘束結界などを組み合わせて相手を逃がさず周りに被害を出さずに限定空間での戦闘を可能とします」
”色によって効果が違うってこと?”
「色は感覚なので人により見え方は異なりますが色の前に見える事が珍しいです」
”なんで”
「結界を感じる事はある程度の使い手であれば出来ますが見るには結界主よりかなり格上でないと」
”格上でないと見えない?”
「見えるという事は結界を破壊できますから」
”どういうこと?”
「通常結界は結界主を滅するか一定以上のダメージを与えて結界維持が出来ない状態に追い込む必要があります」
”定番の結界からの脱出方法だよね”
「ただ見える場合は割る方法もあります」
”見えないと割れないの?”
「条件が揃えば偶然に割る事も稀に出来ますが見えないと何処が綻びか分からないので数打てば当たるになり実質は結界主と戦闘をしながらでは難しい状態かと」
”綻び?”
「見えているのであれば結界が全て同じ色でなく濃淡があるのもわかるかと」
”うん限りなく透明に近い場所から少しずつ濃さを増して全体に広がってる完全に透明な部分は凄く小さい点サイズだけど”
「透明な場所が結界の臍ですソコが結界の始点で周りに広がってます」
”そういうことか!”
右手の人差し指を伸ばして透明な部分に向け魔力を集中し
”割れろ”
パーンっと音がして結界が臍からヒビが広がりガラスが割れる様に砕け落ち消えて行く
「ま・ま・まさか」

「私の結界が見えるだけでなくこんなに簡単に割るとは・・・」
”ごめん壊しちゃった”
「割るのはいいのですが・・・まだ回復が1/3程度で驚きです」
”まさか割れちゃうとは思わなかった”
「それも教わる事無く勘で魔力を使ってとか驚きの限りです」
”なんか魔法ってイメージしたことを魔力で実現してるのかなって感じで”

「すでに彩美の魔力は私を数倍は凌駕してます」
”えっ”
「私の結界が見えた段階ですでに私より上で・・・あんなに・・・あんなに簡単に割れるという事は差が最低でも数倍はないと」
”軽く冗談半分に念じただけだったけど”
「普通は綻びを見付けても全力で魔力を叩き込まないと一撃で割る事は難しいですから」
・・・・・
「結界を割るのは結界主の結界維持速度を超えるダメージを与えることが必要です」
”でも魔力はそんなに使ってないよ”
「魔法は魔力だけでなく重さもあります」
”重さ?”
「一瞬に開放出来る量ですね同じ量の水でも水差しからちょろちょろ出してもガラスは割れません」
”同じ量の水でもバケツで水を叩きつけるよう水を投げ出せばガラスが割れる可能性もある”
「そうです普通であれば魔力を全力で叩きつけるレベルをちょっと蛇口を捻った程度で出せるレベルの魔力出力能力と支える膨大な魔力が彩美にはあるということです」
”なんだか自分が怖くなるよぉその話”

「試しに手のひらを上にして火をイメージして魔力を集中してください出来る限り弱くで」
手の平を上にして上に炎があるイメージをする
いきなり手の平に黒と紫に青を混ぜたような色の炎が1m位立ち上がる
「もっと魔力を絞ってください」
少し集中を緩めると十cm位の球形になり手の平の十cm上くらに落ち着く
「魔法結界・・・壁際にある的に投げてください」
ルシファーが再度魔法結界を張り終える
部屋と逆の壁を見ると壁の手前に高さ1m位の案山子が数体立っていた
ボールを投げるイメージで左端の案山子に火の玉を投げる
赤黒い火の玉は目で追えるギリギリの高速度で左端の案山子に当たる
燃えるのかな?と思ったら火の玉が当たった場所を中心に案山子が外に向かって消えていく
そこには何も残ってなかった

「鬼火と呼ばれる魔法です」
”的はどうなったの消えちゃったけど”
「闇の炎に焼かれたので残骸も灰も残らず燃えてしまいました」
”ってことは私は闇属性なのか”
「今ので間違いなく闇属性と判断できます」
”う~んこれじゃライターみたいに使えないのか残念”
「基本は他属性の魔法は使えませんが鬼火は無属性で発動させれば普通の火になります無属性はかなり低出力でしか発動出来ないので使い道は限られますが」
”やり方教えて!”
「簡単です”火”でなく”熱い火”をイメージしてください」
一指し指を立て出来るだけ弱く魔力を込め「熱い火」をイメージする
指先から数cm上に蝋燭の炎部分が現れる
逆の手を近づけると温かみを感じる普通の火だ!

「簡単に普通の火まで出してしまうとは考えていた魔法のトレーニングは大幅な見直しが必要ですね」
ルシファーが魔法結界を解く
「冷えて来ましたので今日はここまでしましょう」
ルシファーが車椅子を押し部屋に戻る

七海とマキに私を乗せたタクシーは靖国通りを神保町方向に向かい靖国神社前で右折して麹町の路地へ
目的の店が入る雑居ビルに到着する
ビルの少し先に止まってるあの高級車は信さんのだね
店は三階と聞いていたけど看板もなく窓は濃いスモークで店内が見えない

エレベータホールに行くとタキシードを着た若い美女が待っていた
「お待ちしておりました」
一緒にエレベータに乗り込むと鍵を使ってコントロールパネルを開き三階を目的階に設定する
「階ボタンは無効になっておりますので」
エレベータを降りると数人が入れるエントランスと高級マンションで使われていそうなドアだけ
表札も看板も何もない
女性がインカムで「御到着です」と連絡すると程なく内側からドアが開く
先ほどの女性より少し年上だけど整った顔で大人の落ち着き感が半端ないタキシード姿の女性が店内へ導く
数mの両側に一枚ずつ扉が配置された廊下の突き当りにあるドアを抜け中に
多分両側の扉は個室だね徹底的に他の客と会うことがない作りになってるんだね

そこは濃い色の木目を基本とした内装で幅五mくらいの鉄板カウンターと椅子が六席だけ配置されたシンプルな作り
「お荷物をお預かりします」
コートと鞄を女性に預ける
既に信さんと美香は席に付きビールを飲んでいる
「お待たせいたしました」
七海が代表して挨拶をする
「おう座って座って始めようぜ!」
信さんの希望もあり七海・私・信さん・美香・マキの順で座る
普通は七海と私で信さんを挟む着座なんだけど美香との話も楽しいみたいなので少し変則な席順になったね

若い男性の声が
「では始めさせて頂きます」
カウンターの中には割烹着を着た中年男性と若い感じの男性
感じ的に若い方の方が立場が上なのかな

「まずはビールでいいかな」
信さんと美香の前のグラスは下げられてお洒落なグラスに注がれたビールが全員の前に
「乾杯!」
一口ビールを飲む
極上のテクニックで注がれたのが分かるキメ細やかな泡がクリーミーで美味しい

「私びっくりしちゃった看板も何もないし超絶綺麗な女性がお出迎えとか入ると素敵な内装だし」
「ここは全て非公表のお店だからな」
「鉄板SHINANO久々で楽しみだわ」
「流石だママは来た事あったか」
”最近時々新宿でも聞く完全紹介制のお店なのかな”
「そうだ完全紹介制の鉄板焼きだ」
「完全紹介制!!なんか響きだけで遠い世界に来てしまった気が」

「本日はお任せのペアリングコースとなっております」
「ペアリングってなになに?」
”料理に合わせてお酒もお店が選んだ合うのが出てくるの”
「彩美ちゃん大人だぁ色々知ってるよ」
”って私も七海に連れて行ってもらったお店で覚ええたばっかしだけどね”

軽くトークをしながら全員がビールを空けると一品目が出てきた
「前菜の盛り合わせです」
大き目の皿に三種類の前菜が乗っている
「鮑の酒蒸しと鯛のタルタルキャビア添えに季節野菜のゼリー寄せです」
美香の目がキラキラだよ
「合わせるお酒はキュヴェ・ルイーズです」
フルートグラスが前に置かれシャンパンが注がれて行く
「柑橘感の辛口で多くの料理とマッチングしますので盛り合わせに合うお酒になっております」
カウンターの中年男性が説明してくれる
あっ中年の方はソムリエなのかな
緊張感でフリーズしかかってる美香に
「食事は楽しむのが基本なので細かい事は考えずに食べて飲んで楽しもうや」
さすが信さんです

「ううナイフとフォークを使うのにこんなに緊張するとわぁ」
まあJKでコース料理慣れはなかなか居ないよね
「マスター申し訳ないが箸も準備してもらっていいか」
「はい」
タキシードの年長女性はフウエイトレスを兼ねてるようで全員の前に箸置きと箸を並べていく
「緊張しては美味い飯も味が鈍るからな別にここに居るのは気心してれてるしマナーより気楽に食べれる方法でな」
「ありがとうございます」
箸を使うのを美香が遠慮しない様に率先して箸に切り替える信さん

「かなり美香ちゃんのことをお気に入りね」
「彩美に会いにお店に来るのはJKではかなり大変なことだろう」
”まあ普通じゃ無理だよね”
「それを乗り越え彩美に会いに来たのだからご褒美だよ」
「御褒美だなんて私は夜の姿の彩美ちゃんと飲んでみたくて」
「どうだった」
「何ていうか凄い大きくなってた!」

信さんは私の家とか放浪の事を知っている
初めてテーブルに着いた時に心の中にある闇を見付けられて七海と一緒にアフターへ誘われた
その時に「この人には隠し事はしたくない」って七海に確認してからだけど七海とのこと・・・その出会いを伝えた
「なんで初対面でそこまで信頼できる?」
”七海が信頼してるのが凄くわかった・・・そして信さんは私の前で裏も表もなく自分を見せてくれたと感じたの・・・だから私も隠し事や嘘はなしで付き合いたいと”
「さすがママが選んだ彼女だな」
「えへへへ」
七海の顔が真っ赤になっていく
なんて懐かしい記憶がよみがえる

前菜はどれも一口サイズでフルートグラスのシャンパンとマッチングもよく丁度良い量だった
皿とグラスが下げられていく
「次はA5和牛の握りとキールになります味は付いておりますので一口で食べてキールで後味を流し込んでください」
ああ米は口の中ですぐにほどけA5和牛は噛まずとも米と一緒に口の中で溶ける
残った牛の脂味をキールで流すと次の料理に向けて味覚がリセットされる

「和牛寿司は何個も食べたくなるけど一個だけという儚さがより美味しく感じさせるね」
「ママは本当に食通だな」
「信さんを含め皆様のおかげですわ色々な所をご紹介頂いて」
「そうなのか!お替わりしたくなるけど一個の理由があるんですね」

「あとマキのおかげかな」
「何突然!?」
突然の振りに動揺して少し声が上ずるマキが可愛い
「きちんと毎食丁寧に調理した料理と食育をしてくれたから美味しいものを美味しいって食べれる」
「美味しいものを美味しい?」
「美香さんも良い家庭で育ってるな」
「えっ」
「きちんとした食事で育ってないと味覚も偏り”皆が美味しいというから美味しいはず”と感じるのが多い」
”でも食べてる時の笑顔を見ちゃうとね”
「本当に美味しいと思えないと出てこない笑顔で今晩は美香さんの美味しい笑顔を見れただけで十分だ」
”信さんにここまで!ライバル登場!!”
「って彩美ちゃん何のライバルよぉ」
”てへ”

そこからクラムチャウダー→ミノ湯引きを大根の朝漬けをスライスでサンド→A5和牛薄切りを目の前で出汁スープでしゃぶしゃぶと一口サイズの料理と合わせたお酒が提供された
「確かにどれも一口で少し寂しいけどこの寂しさが次の料理へワクワクがすごいよ」
「これが出来るのもマスターの絶妙な味のリレーがあってだな」
「味のリレー?」
「前の料理の余韻が残る中に次の料理は余韻を盛り立てつつ新たな味が広がる」
「信さんてすっごいお洒落」

「ただの飲み食いしまっくてる道楽息子さ」
”でもそれって社長業だと絶対に必要スキルって感じる”
「おっ何でだ彩美」
”七海のおかげで色々な方に色々な美味しい店に連れていってもらってるけど高いから美味しい店と決めてたり招待頂いたけど招待された方がお店に緊張とかしてると楽しめない”
「それが社長業と?」
”お店で接待してる社長さんとかみると接待準備した社長さんが楽しみつつお相手をもてなしてないと相手の方が無駄な時間に感じてるオーラを感じるみたいな抽象的な表現だけど”
「すごいな彩美そこまで感じてるのかママが今度週末に来たら超逸材の美人紹介するねって思い出すな」
”七海そんな風呂敷広げてたの恥ずかしいなあ”
「大丈夫!自慢の旦那様」
「「毎度ごちそうさまです」」
三人でハモって言わないでぇ~

鉄板からいい匂いがしてくる
縦半身に切られた伊勢海老が並んでる
半生程度でフランベされる青い炎が綺麗だね
「わあフランベ見れた!綺麗だね」
一般家庭の料理でフランベは滅多にしないもんね
蓋を乗せて少し蒸したら皿に盛りつけ仕上げにビスクソース
「伊勢海老の鉄板焼きビスクソースです」
これに合うお酒となると予想するのが楽しいよ
「ルロワのブルゴーニュ・ブランです芳醇な香りがビスクソースに負けず引き立てます」
白ワインが出て来たよ
ルロワはブルゴーニュの王道の一つで飲む機会も多いけどブランは初めてだね
殻に入ってるけど一口サイズにカットされてるので箸で普通に食べれる
口に入れると海老の頭とか殻から抽出したエキスが凝縮された濃厚なビスクソースの味と少し淡泊なプリプリの身が口の中で幸せなダンス
そこにワインを流すとビスクソースをさらりと流し芳醇な香りとほのかな酸味で次の一口が待ち遠しくなるね

「うわああこのソース美味しいよお」
「エビの頭とか殻を煮詰め旨味を取り出しクリームでコクをだしたソースになります」
「伊勢海老と合わすともう涙出そうな美味しさです」
「ありがとうございます」

「次はメインのA5黒毛和牛シャトーブリアンのステーキになりますが少し仕上げにお時間を頂きますのでお好きなお酒を御頼み頂きお待ち頂ければ」
「俺は今の白を」
「彩美はどうする?」
”この後は肉だから重めの赤が出てくるとして軽めで何か定番以外のおススメありますか?”
「国産のライトボディーですが大正時代から続くワイナリーで数種のブドウをブレンドした珍しいのが入りましたのでいかがでしょうか」
”面白そう!それお願いいたします”
「彩美ちゃんが大人すぎる!私も良く分からないから彩美ちゃんと同じで」
「じゃあ私も彩美に乗っかるよよぉ!」
まあ以心伝心じゃないけど七海も同じようなの飲みたいと思ってたよね
コールと同時に腕へ抱き着く七海
「まったく七海も血が通ってるって知れたのは彩美に感謝だよ」
「なーにソレ!!」
「初めて会った時は完璧なオートマタかと思うくらいどんな高級店でも出会ったことのない完璧な動作をする機械仕掛けのママだった」
「そうね私に感情をは何かを思い出させてくれた・・・」
”七海!マキがまだ考えてる!”
「マキはこういうの苦手だったぁ!」
メニューを前に頭から湯気が出てるマキとか

分かってる・・・今の間は・・・駄目だよ・・・でも・・・でも・・・
昔の七海は七海から聞かなきゃ駄目なんだ
もし七海が私に知って欲しくない過去なら私は知りたくないから

「じゃあマキも彩美オーダーの私達と同じでいいよね!」
「はい」
うーん七海が惚気モード全開になってきてるがまあ大丈夫かな
腕に抱き着いてる七海を抱きしめたい欲求に負けそうだけど頑張る!
七海がタクシーの中で「今日のディーラーは彩美だからね」と耳に囁いた記憶
ディーラー・・・私はこの場を把握して刻を回す・・・七海が・・・望むなら・・・私は・・・やって見せる!
”信さんも冒険しないのぉ~”
「そうだな彩美の頼んだ酒に変更で」
「では御準備させて頂きます」

グラスを新しくしてウエイトレスが漢字の入った・・・その違和感なんだ・・・ラベルに漢字とか・・・ボトルから少し薄い赤色のワンインを注ぐ
「山梨の光キュヴェ スペシャルです」
香りはメルロとカルベネが骨組みな混合かな
うん軽くて次の重めの前には丁度よいクッションだね
信さんも私の少しズレたタイミングで悟ってくれ会話の流れを変えてくれる
ありがとう信さん

「おっ彩美に誘われて冒険したが国産ワインもなかなか良いのあるな」
「飲みやすくておいしいよ~」
”ソムリエさんに無茶言うと新しい出会いが会って楽しいよね”
「彩美ちゃん数ヶ月で色々すごいなあ」
”七海に試飲会とか連れていってもらったりでね”
「最初の頃は赤ワインが苦手だったので慣れてくれればとテースティングを連れまわしていたら私よりワインにはまっちゃたりでね」

鉄板の上ではステーキの仕上げが始まっていた
かなり前から鉄板の隅で底上げ網に置かれた厚めのステーキが何回も面を変えて温められていたんだ
気になって聞いてみると
焼く前に低温でゆっくり全体に火を通すと中まで温かいけどレア状態のステーキに仕上がる手法って手間が凄いなあ
網から鉄板に移動したステーキは両面に焦げ目をつけられフランベして蓋を乗せ少し蒸される
仕上げに鉄板の上で一口サイズにカットされると真赤なレア状態断面なのに肉汁が少しも流れでない素晴らしい仕上がり

ステーキが焼上がる少し前に赤ワインが準備される
「王道ですがシャトー・マルゴーのXXXX年です」
「あっ!彩美ちゃんの生まれ年!」
「うん?美香さんは違うのか」
「彩美ちゃんは早生まれだからね」
「彩美どうした?」
”XXXX年ってここ数十年でメチャ当たり年で・・・その・・・”
多分だけどワインショップで一本六十万円以上だよ店で頼んだらいくらになるのか想像できないよ
「今日は彩美とママに会え新しい出会いで美香さんにも出会えた記念だよ」
「ここは徳さんに甘えて楽しんじゃおう彩美」
”徳さん実は・・・楽しみ過ぎて心臓が口から出ちゃいそう”
「ふふ楽しんでもらえるとうれしいよ」

皿に移され塩と山葵が添えられ醤油小皿と一緒に出てきたよ
「肉の味を楽しんで頂きたいのでソースでなく塩か山葵醤油でお楽しみください」
まずは塩をパラリとして一切れ
”とける!”
「何これ!」
「他の料理もすばらしいが焼き方一つでここまで肉の味を引き出す料理人とはなかなか出会えなくてな」

ここでワインを一口
ああ流石はワインの女王っていわれる味だよ
ボディーは重めでタンニンも強めな土台に華やかでフルーティーな味わいが絶妙にマッチングして・・・もう表現無理です!
ステーキの脂に負けない胆力もあり脂をさっぱり流してくれる気持ち良さから口に残る香り
”これは至福の刻だよ”
七海も一口飲んで・・・
「本当に至福の刻としか言えないね」
美香も私達が飲むタイミングを見て一口飲む
「うーんワインの味はイマイチまだ分からないけど今まで出てきたワインとは段違いで美味しいのだけは分かるよ!」
「細かい事は気にせず楽しめればいいんだ」
「はーい!」

次は山葵を乗せ醤油を軽く漬けて頂くよ
”山葵が肉の脂をさっぱりにしてくれて山葵醤油もいいなあ”
「肉の旨味をシンプルに塩か山葵醤油でさっぱりか悩ましいね彩美ちゃん」
ここでもワインを一口
”山葵の香りと喧嘩しないでどっちも惹き立て合うとか凄いよ”
「彩美ちゃんが本当に別世界に見えてしまうよぉ~」
「彩美は凝り性だから赤ワインにハマってからソムリエ目指してるかレベルで色々と勉強してるからね」
”まだまだだよ七海先生これからもよろしくお願いします”
「「ごちそうさまです」」

あっと言う間に胃袋に収まるステーキとワイン
結局は塩と山葵醤油を交互の間にワインで食べて楽しんだよ

「〆は白米かガーリックライスとなります」
「俺はガーリックライスで」
”私と七海もガーリックライスで”
「私もガーリックライスでお願いをします」
・・・またも頭から湯気がでてるマキ
「マキもガーリックライスでいいかな?」
「はい」
”では全員ガーリックライスでお願いします”

鉄板で細かく刻まれた脂身が丁寧に炒められ牛脂が出てくる
脂身がカリカリになるとニンニクを牛脂でカリカリになるまで炒める
「やばい既に匂いだけで涎がでちゃうよ」
ニンニクを炒める香りが既に満腹に近いはずのお腹を刺激して改めて食欲が湧いてくる

茶碗に盛られたガーリックライスとは珍しいと思ったら椀と漬物が出てきたよ鉄板焼きでは珍しいね
「伊勢海老の味噌汁と香の物です」
ガーリックライスの脂を海の香りですーっと流す味噌汁
この組み合わせも楽しい
ここまで楽しめるのも七海に色々な所に連れて行ってもらって多くの経験が出来てるから本当に感謝!
と美香は言葉を話す間もなく一気に食べてる

「あ~幸せだよお」
「喜んでもらえたなら何よりだ」
シャーベットと熱い日本茶を最後にね
「美人姫のシャーベットです」
美人姫ってぇ超高級苺じゃなかったあ!

先に美香がパクリとしてる
「おいしい!超甘いけど酸味でさっぱりで・・・がんばって彩美ちゃんみたいに味表現しようとしたけど無理だったあ~」
”おいしければ表現なんて気にしなくていいんだよ”
「そうそう美味しければそれいいんだ」
「でも彩美ちゃんみたいに出来るのもいいなあって」

「今日は最終組になりますのでお煙草どうぞ」
灰皿と新しいお茶が出てくる
「マスター気遣いすまぬ」
「本当は愛煙家の方にも自由に食事を楽しんで頂くのに煙草もOKにしたいのですが入替時間だけの換気ですとどうしても次が苦手な方ですと」
徳さんが煙草を咥えたので火を・・・って美香が着けてるよ
「おっ美香さんに着けてもらうと一味違うな」
”えーん”泣きまねをして”徳さーん!”
「彩美に着けてもらう煙草は最高だから安心しろ」
「ここも惚気でごちそうさまでーす!」

五人で紫煙を巡らせてると先に吸い終わった徳さんが席を立ちトイレへ
その間に七海以外の三人はカードを手渡される
鉄板SHINANOの文字とQRコードだけ端に小さく印刷された金色のプラスチックカード
「QRを読み込んで頂くと会員番号と連絡先が表示されますので」
なんか???になってる美香
耳元で”後で説明するね”うなずく美香

「よし!行くか!」
「「ごちそうさまでした」」
皆んなで徳さんにお礼の挨拶だよ
美香も会計に関しては分かってきたね
なぜ会計カウンターが入口でなく奥のトイレ横にあるかってね

帰りのエレベータは既に呼ばれてドアを開け待っていた
エレベータの中で横になったマキに小声で
”今度料理教えてほしいけどお願い出来ないかな”
「七海の喜ぶ料理をいっぱい教えてあげるよ」
”ありがとう”
タキシードの女性がビル出口まで案内してくれる

「マキはホテルと方向が同じだから送って行くよ」
「信さんよろしくお願いします」
手を軽く上げ少し車に向かう信さんとマキ

時間は三時少し前
「さて帰る?呑む?」
”少し歌いたい!”
「じゃKOKOかJOINだね」
”今日は白が出勤日だったはずだからKOKOでいいかな”
「美香もまだ眠気とか大丈夫?」
「元気100%だよ」
店が呼んでくれてビル前で待機してたタクシーに乗り込む
タキシードの女性がお辞儀をしてドアが閉まる
「二丁目の靖国通り沿いの仲通近くにある牛丼チェーン店の前まで」
タクシーが走り出す
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登場人物紹介

彩美<主人公>

女装癖のある男子高校生

平穏な高校生活が崩れた時に出会い救ってくれた七海と恋に落ちる

七海との出会いで高校生活を送りながらニューハーフとして生活することを決め新宿のMIXバーで活躍する生活を送る

少し普通ではないけど七海と一緒に平穏な日々を過ごしていたが突然の異世界転移で女体化する

異世界転移で与えられたご都合主義は「無敵チート」だけで苦労満載の異世界生活が始まる

唯一与えられた無敵チートの意味を日々考えている

七海<ヒロイン(純女)>

新宿二丁目にあるMIXバー「セブンシー」のオーナーでママ

店を開くまでは歌舞伎町で伝説級のキャバ汝として活躍していた

絶望の淵にいる彩美を愛し救いの手を差し伸べ恋人になる

少し特殊な性癖を持つため彩美と少し不思議だけど幸せな同棲生活を楽しんでいた

ある日突然の異世界転移した彩美の帰りを待ち続けている

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