第63話~邪神教~

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西門を抜け西街道に出る
日暮れを過ぎた街道は閑散とするのが普通だが年の瀬が近いのでこの時間でも王都に向かう旅人が多い
年越の食材や用品を王都に届ける商団
辺境から王都に帰省する者
夜の旅は多くの危険を伴うので急ぎ足で王都を目指している

さてガーゴイルとテイムした者達を探すとするが正直な話かなり困難だ
西門を出ると街道の両側は切り立った岩山が一リーグ位続く
岩山の斜面は垂直に近い勾配でロッククライミングで無いと登るのは難しい
高さも数百メータ近くあり王都の西側を守る天然の要塞
岩山が崩れ出来た洞窟や切れ目が多数ある
兵が登るのは困難だがガーゴイルの飛行能力を使えば隠れるのには絶好の場所が数多くある
自然に出来た洞窟や切れ目は岩山全体にあるので自由に移動を出来るアークの幻体でも捜索ヶ所が多くあり苦労してる

「アークでも難儀している状態でどうするか」
彼方此方見回しながら呟く七海
”そろそろガーゴイル達に食事をさせないと・・・いや飢えさせて狂暴化させる気なのか!?”
長距離の移動で魔力を消費しているはずだからかなり空腹になってるはず
「野良化を許す程度の術者で狂暴化したガーゴイルをテーム状態で保てるのか?」
”保つ必要がないのか”
王都が見下ろせる岩場地帯の洞窟までガーゴイルを誘導する事がテームの目的
切れ目ではテイムが消えると逃げてしまうので洞窟に集め入口を封鎖する
洞窟の中では飢えたガーゴイルが狂暴化する
刻を迎え洞窟の封鎖を解けば眼下に見える王都へ食事に向かうガーゴイル

”王都の見える場所にある洞窟”
「でもそれだと洞窟に入る為に飛んできたガーゴイルが目撃されちゃうんじゃない?」
美香の疑問は私も考えたよ
”王都や街道からは見えない場所に着陸させて木々の間を歩くか低空飛行で移動すれば”
「そうなると場所は限られるな」
七海の視点の先は王都方向の岩場
山腹に岩場が崩れ出来た岩棚があり逞しくも岩に根を張った森がある
岩棚は街道の裏側まで繋がっており森も続く
切り立った岩場が簡単には人を近づけないが飛行出来れば容易に辿り着ける

「あの岩棚なら街道の裏側に着陸して森に紛れて移動が出来るね」
美香も同じ場所に目を付けたね
「でも都合よく王都側に洞窟があるのか?」
この疑問は確かにだよ七海
そこもテイムされたガーゴイルの出番
上位タイプのガーゴイルは剣や弓を使う
ノーマルタイプでもテイムされた状態であればツルハシやスコップ程度は使えるので洞窟が無ければ掘らせればいい
”腕力も人の数倍だし数百匹いれば簡単な作業だね”

目の前の空間が霞み幻体アークが現れる
「岩棚奥の崖に鉄扉がありましたので中に入ってみるとガーゴイル達がいました」
”ありがとうアーク”
空間を自由に移動出来るアークの前では扉は関係ないからね
さて岩棚までどうやって移動するかな
暗闇に紛れて飛行を使えば簡単だけどギルドへの報告で困るよね
「皆でロッククライミングも厳しいしな」
七海も飛行を使わない方法で悩んでるよ

言い訳できる範囲でチートを使わせてもらうかな
街道から離れ岩陰で地面に転移魔法陣を出す
”繋がるまでは何処に行くかわからないので入らないでね”
脚部を最大に強化して岩棚目掛けて跳躍する
「うっそ!」
驚くメイレーンの声が遠くに聞こえる

何回か蹴り出せる場所を経由して跳躍を繰り返す
なんとか岩棚の縁を掴む事が出来たので今度は腕部強化で体を引き上げる
下を覗くと米粒サイズの美香が大きく手を振ってるよ
少しだけ森の中に入り下から見えない場所に対の転移魔法陣を出す
”繋がったよ”
念通で伝えると皆が転移してくる
「この高さを脚部強化で跳躍するとは流石だな彩美は」
”間違いなく筋肉痛だけどね”
「湯上りにマッサージするよ」
それは最高の御褒美だよ
「転移魔法陣とか便利だね彩美ちゃん」
”地下迷宮じゃないので見える範囲が限界で普段は使い道ないけど今回はね”

アークの先導で扉の近くまで来た
木の影から扉付近を確認する
”見張りが二人か”
念の為に先史代の視界に切り替え近くに命の流れが無いか確認する
扉奥の禍々しい命と木々で羽を休めている鳥以外は二人だけだね
なら出来れば尋問したいから殺さずね
視界を戻すと二人の間を脚部強化で二人が反応出来る前に走り抜け首筋に指を当てる

白目を剥き倒れる男二人だけど
”ぐわぁ~!何だぁこの味ぃ~”
木の陰で見ていた皆が飛び出して来る
「大丈夫か彩美!」
七海が飛びついてくる
けど脚部強化ですり抜けて木の影へ
「はいぃ?」
ってなる七海だけど今は無理ぃ

”うけ~”
ああ食べた晩御飯が出ちゃうしキラキラ処理が必要な状況だよ
追い付いた七海が背中を擦ってくれる
再び込み上げる抑えるのが無理な感覚
”うげげげ~”
胃の中の物と一緒に男達から吸収した物を吐き出す

何回かキラキラ処理が必要な状況を繰り返しやっと落ち着く
七海が空間拡張ポーチからワインの瓶を取り出し渡してくれる
「水はないからワインですまないが」
有難く受取りうがいをしてから少し飲んで喉に残る酸の焼ける感覚を消す
”ありがとう”

まだ少しふら付く足を支える七海と供に白目で倒れる男達横に居る皆の場所へ
「何があったの彩美ちゃん!?」
涙目で美香が近寄って来る
”エナジードレインしたら最悪だったよ”
「エナジードレイン?」
美香の疑問に答える
男達を傷付けずに捕らえる為に先史代の生命エネルギーを扱う方程式で首に流れる気を指先から吸い取り気絶させた
気とは魔力であり生命であり命あるものが動くのに必要なエネルギー
これを死なない程度に抜き取ることで意識不明の状態にしたんだけど
吸収した物が普通で無かったよ

腐った果実を齧った味より惨い味
吸収した気を味で表現するならね
反射的に嘔吐するレベルで精神が体に影響するとかさ
”気力でも魔力でも無く邪力だったよ”
「邪力!父の血を飲んだ者達!」
驚きを隠せないアーク

いつの世にもいる背徳者による邪神信仰
少数であるが虐殺を行うダブネスを信仰する者達が居た
世に絶望し世界の破滅を望む者
背徳の快楽に溺れる者
邪神を信仰した理由は各々だがダブネスの名を使い各地で残虐な行いをしていた
人と人が争い怒りや憎しみが生まれる事は憎しみの泉を通し多くの魔力を得られる好ましい状態なのでダブネスは名を使う事を黙認した

刻が経つに連れ各地で個々だった邪神崇拝者が集まりダブネスを祭る邪神教が誕生する
邪神教にダブネスは自分の血を与えた
与えられたダブネスの血を飲んだ者達は邪力を得る
邪力は人外の身体能力と魔力を与えてくれるが人としての心を消し去り残虐な者とする
憎しみや怒りを得る事で邪力はより強くなる
人が飲めば生み出される膨大な魔力に耐えれず魂が壊れてしまう憎しみの泉の水をダブネスの血を経由する事で人が耐えれる範囲で得ているから

”ダブネスは腐敗防止魔法を施したボトルで血を下賜していた”
「そのボトルがまだ残っているということか」
七海が聞いて来る
”邪神教の設定はダブネスがメネシスに存在した刻までしかしてないんだよ今も邪神教が残ってるなら受け継がれてる可能性は十分にあるね”
邪力を得る為に必要な血は一滴で十分だからある程度の量が下賜されていたら残っている可能性は十分にある
邪神教は本拠地も物語の現在での状態も全く考えていなかったのでチート情報なしだから少し面倒な事になりそうだね
”邪神教であれば今回の行動もわかる”
何かしらの方法でガイアのダブネスより復活の日が近い事を伝えられ表舞台に復活した
手始めとして私達が滞在している可能性が一番高い闇の国王都を混乱に貶める事で絶大なる恐怖を与える

年越し祭りで多くの人々が訪れている街に飢え狂暴化したガーゴイルを解き放つ
解き放されたガーゴイルは王都の人々を襲い食す
混乱に乗じて崇拝者達が残虐行為を行う可能性も十分ある
殺戮により生まれる怒りや憎しみに恐怖のどれもが邪力を強力にするから
そうして闇の国は崩壊し復活するダブネスの脅威が一つ取り除かれる
誤算は私達の力を過小評価した事だよ

”既に王都へ旅人や観光客として多くの崇拝者達が侵入している可能性がある”
「対象者が多いがどうやって探し出す?」
七海の問いに美香が
「彩美ちゃんがエナジードレインで調べてたら胃と食道が耐えれそうにないしね」
”うんそれは間違いない方法だけど調査中に血を吐いちゃいそうだね”
いくら私が人外であっても魂の話で肉体は普通の人だからね

”鷹目で判別が出来ると思うよ”
七海と美香が鷹目で倒れている二人を見る
「おっ魔力と違い禍々しい感じが凄いな」
「これは感じるのも嫌な感覚だね」
ふと思いつく
”メイレーンとセレンも鷹目使えるかも”
「えっ私達がですが?」
メイレーンが驚く
”鷹目は無属性だしここまで魔力が高まれば適正とか関係なく使えるかも”
「じゃあ私が教えるね」
と美香が二人に鷹目の使い方を教え始める

その間に私はアークに伝言したい内容を伝える
託鳥では内容が複雑で伝えきれないし手紙はアークの転移では持っていけなしね
「承りました」
”冒険者ギルドは直接転移しないで徒歩で来た事でね”
「はい」
アークの姿が霞み伝言を伝えに転移する

「見えます!見えます!」
喜ぶセレンの声
「見えたー!」
メイレーンも出来たみたいだね
こんな短時間で習得は予想外だね
なんか二人も私の影響なのかチート級になりつつある気がするよ
先生も良いのかな
私は感覚で使えちゃうからチートがあるにしても習得と言うかたちで能力を手に入れてる七海や美香の方が教えるのは上手だよね

その間に七海は気絶している二人を縛り詠唱出来ない様に猿轡を噛ましている
”ロープ準備してたんだ”
「いつでも彩美と束縛プレイとかSM出来るようにね」
返しが思い付かない斜め四十五度からの回答でした
私は二人の目の上に手を当て眼球だけを鬼火で消し去る
「何したの?」
美香が気になったみたいだね
”眼球を鬼火で消滅させたよ”
「もしかしてファンタジー物定番の邪眼とか使えちゃうの?」
”うん魔装具でない目隠し程度は突き抜けるから”
「これは惨いけど仕方ないね」
さらっと同情感情ナッシングで色々慣れてきた感じの美香です

”森が目隠しになるのでガーゴイルを処分しちゃおう”
さてどうやってやるかな?
”ガーゴイルの処分はメイレーンとセレンに任せたいけどいいかな?”
「自分達の手での一歩目ですね!」
わかってくれてるねメイレーン
二人でしばらく作戦会議をしてるよ
私達は紫煙を巡らしながら身振り手振りも交えて話し合う二人を見てるよ
タバコはガイアから持って来た物じゃないよ
ルシファーがタバコを作れないかと職人に頼んだ試作品ね
フィルター無し両切りの紙巻なのでかなり強いよ
ミント系の香りのする葉も交じってるのでメンソールな感じも少しあっていいね
紫煙を巡らし終わると二人の作戦会議も終わったみたいだね

鉄扉の閂を外して内側から開けられない様に押さえるセレン
メイレーンが集中して詠唱を始める
火球がメイレーンの前に現れ詠唱に伴い大きくなって行く
扉の幅より少し小さいサイズまで大きくなる
「セレンお願い!」
セレンが扉を開けると火球が洞窟の中に飛んでいく
「火葬」
すぐに扉を閉めると詠唱を始めるセレン
鉄の扉に霜が付きセレンが冷却しているのがわかる

扉の内側からガーゴイルの悶絶と轟々と炎が渦巻く音が聞こえる
数分もすると洞窟の中からの音も消え辺りが静寂に包まれる
セレンも鉄扉の冷却を終え閂を戻す
扉を開けて確認しないのは煙が外に漏れて王都から見えてしまう事を防ぐ為だね
よく考えた連携の取れた作戦だったね
火葬で洞窟の中を焼き尽くすけど鉄扉が熱で溶けてしまわない様に冷却をする
メイレーンの魔力もだけど火葬の熱量に対抗出来るセレンの魔力もかなりなものだよ

気絶している男の一人は多くの小さい鞄を下げている
テイムに必要な小物を多く持ち運ぶテイマーの定番装備
それならこの場所はガーゴイルとか飛行系のモンスターをテイムしなければ確認には来れないので放置でいいね
気絶した男達の運搬はメイレーンとセレンにお願いしたよ
小柄な二人だけど私達が持てる何倍もの荷物を楽々運ぶからね
転移魔法陣で地上に戻ると幌付きの馬車が待っていた
これもアークにお願いしていた事の一つだよ
魔法陣を消し男達と一緒に荷馬車に乗り外から見えない様に後部出入口の幌も張る
御者台をノックすると荷馬車は王都に向かい走り出す

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感想を一言でも頂けるとうれしく執筆に熱が入ります
掲載サイトによっては匿名で感想を書けないのでマシュマロを用意しました
https://marshmallow-qa.com/z58ctq3kmuucz61
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登場人物紹介

彩美<主人公>

女装癖のある男子高校生

平穏な高校生活が崩れた時に出会い救ってくれた七海と恋に落ちる

七海との出会いで高校生活を送りながらニューハーフとして生活することを決め新宿のMIXバーで活躍する生活を送る

少し普通ではないけど七海と一緒に平穏な日々を過ごしていたが突然の異世界転移で女体化する

異世界転移で与えられたご都合主義は「無敵チート」だけで苦労満載の異世界生活が始まる

唯一与えられた無敵チートの意味を日々考えている

七海<ヒロイン(純女)>

新宿二丁目にあるMIXバー「セブンシー」のオーナーでママ

店を開くまでは歌舞伎町で伝説級のキャバ汝として活躍していた

絶望の淵にいる彩美を愛し救いの手を差し伸べ恋人になる

少し特殊な性癖を持つため彩美と少し不思議だけど幸せな同棲生活を楽しんでいた

ある日突然の異世界転移した彩美の帰りを待ち続けている

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