第62話~人の定義~

文字数 6,301文字

X(旧Twitter)を始めました
https://twitter.com/SaibiNovelist
最新話公開情報、執筆状況、ちょこっと日常の呟きとかをして行きます
彩美と七海の3Dモデル作成状況も発信して行きますね
ぜひフォロー頂けるとうれしいです!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

目を明けると明るい日差しが部屋に差し込んでる
時計を見ると十三時少し過ぎ
ゆっくり寝たから頭もかなりスッキリしたよ
疲れが取れたのもあるけどアークから送られた方程式が寝てる間に機能してくれたね
転生と半転生転移で私が失った先史代の構成要素が全て回復したんだ
でもこれで・・・

「なに深刻そうな顔をしてるの」
七海は先に起きてソファーでコーヒーを飲んでたいたんだね
ベッドから起き上がろうとすると脚に力が入らない
”えっ”
倒れた体を支える為に腕を前に出すけど動きが遅い
このままだと顔面から床に倒れ込んじゃうよ

床まで五十センチ位で近づいて来る床が止まる
胸に感じる支えられる感触
倒れ込む私を見て七海が支えに来てくれたんだね
そのまま抱えてソファーに座らしてくれた
「昨晩激しくし過ぎちゃった」
”ううん違うよ再構成された魂と肉体のバランス調整が思ってたより狂ってたんだ”
「再構成?バランス調整?」
”やっぱ実際に動かないと駄目かあ”
「あの状況が把握出来ないんですが」

”睡眠中に魂の再構成が完全に完了して魂が少し変わったので肉体と同期出来てないの”
「えーっと寝てる間に再構成されて魂が変わった?」
あっ上手く説明出来ないから七海が少し混乱モード
”肉体も私の精神も変わらないから私としての存在は変わらないけど”
「これは先史代の思考に私が付いて行けない状態なのかな」
”違う!違う!私も先史代の思考としては状況はわかってるけど人の思考に上手く置き換えて説明を出来てない状態だから”

まだ慣れ無い先史代の思考を人の思考に脳内で変化していると
一糸纏っていなかった私にバスタオルを掛けソファーの横に座る七海
ティーポッドからコーヒーを注ぎティーカップを渡してくれる
コーヒーを一口飲むと急に思考が纏まりだす
あれ?今気が付いたけど先史代の思考と人の思考を切り替えて思考する事が出来る
必要ない時は人の思考を使えば今まで通りの私でいれるかも

”ガイアでの転生とメネシスへの半転生転移で私の魂にあった先史代の構成要素は大きく欠損してしまったの”
ここからはコンピュータに例えるとわかりやすい
アークから送られた方程式の中には欠損した部分を修復するデータとプログラムが入っていた
解放時にアークが修復プログラムを起動して不足した構成要素が魂に組み込まれ始めた
不足した構成要素は膨大で組み込みに時間を要し完了したのは昨晩部屋に戻って来た頃
だがこの時点では欠損した要素が組み込まれただけで再起動を要求された状態
魔力開放程度の一部機能は利用可能だが多くの機能は再起動後まで利用出来ない
再起動を終えると全ての要素が組み込まれた状態になり魂の再構成は完了する

”私も魂の再起動方法はわからなかったよアークからキーワードは送られていたけど”
「何て?」
”七海と一夜を供にすれば魂が再起動する”
「なんか回りくどい説明だね」
”きっと恥ずかしかったんだよアーク”
「先史代程の存在でも恥ずかしいとかあるんだ」
”肉体から解放された時に色々変化はしたけど心は人と変わらないから・・・”
やっぱし人は未知の存在に・・・
七海が突然私を抱きしめ泣きそうな声で
「ごめん!本当にごめんなさい・・・」
わかってる七海は恐れとか未知のとかでなく話の流れでしてしまった何気ない一言
伝説のキャバ汝と呼ばれる一つにトークテクニックも含まれている
その自負がある自分が何気なく発してしまった一言で一瞬でも私を傷付けた結果に後悔してる
”弘法にも筆の誤り・・・それだけ私の前で気を抜いてくれてるのは嬉しいよ”
私を抱きしめる力が強くなる

顔を上げ七海を見ると薄涙で悲しく沈んだ金色の瞳
駄目!この金色の瞳は明るく自信に満ちていなきゃ
”これで手打ちね!”
七海と唇を重ね舌を捻じ込む
突然のキスに驚く七海だったけど瞼を閉じ再び開いた目の瞳は光を取り戻し吸い込まれそうだよ
ソファーにゆっくり寝かされ先程の過ちを取り戻すように私に快感を与え続ける
一番敏感な部分に七海の吐息を感じた次の瞬間に訪れた感触
数秒で脳が白く染まり体が痙攣する

気が付くと七海に膝枕をされソファーで横になっていたよ
「これが再起動のスイッチだったの?」
”うん方法は問わないけど意識が完全に途切れた状態になる必要があったの”
そうコンピュータの電源を一度落として入れ直す作業と同じ
「乙女だったんだねアーク」
”内緒情報だよバージンだからねアークは”
手打ち完了だよ!

「再構成で魂と肉体のバランスが崩れるのは何となく感覚でわかるけど魂が少し変わったとは?」
私の眼が赤く光り出し視界が人から先史代に切り替わる
見える光景を念通で七海に共有をする
「これが先史代の見える世界なの」
真っ暗な視界に多数の緑に光る線が見える
七海の方を向くと人の形に光る緑の線が集まり絡み合ってる
光る緑の線をよく見ると壁や床に家具も七海ほどクッキリでは無いが集まり絡むことで存在がわかる
”魂の解放により肉体を失った私達は目も耳も全ての五感を失い感じるしか出来ない存在になった”
周囲の命やエネルギーを感じビジュアル化した光景が暗闇と光る緑の線だけの世界
無機質と言われる物でも次元に存在する為にはエネルギーを必要とするので認識が出来る

この光る緑の線こそ肉体から解放された先史代達が求めた知であり森羅万象・・・ありとあらゆるもの
線の集まり方や絡み方が存在する物を定義する方程式
神羅万象にある全ての方程式を集め全てを同一に満足させる解を得られれば世界を自在に出来ると今も何処かの次元の何処かの星で知を集め続けている先史代達
机にあるティーカップへ指先を触れ線の流れを変える
念通での視界共有を終え視界を人に戻す
机のティーカップは陶器だったが透明なガラスになっている
「物質が変換されたの!?」
”個の私では本当に簡単な範囲でしか出来ないけどエネルギーの流れと絡み方を操作したからね”
思い返すと簡単な物質変換は覚醒後から使えたがルシファーには物質を変換する魔法は無いのでチート能力の一部では無いかと言われていた
マンションのテラスで魔法練習の標的を作る程度しか出来ない弱いレベルだったけど
思えば覚醒と同時に先史代の力が少し解放されていたんだ

”ねえ!再構成を終え魂が先史代に戻った私は人なのかな?”
出来るだけ明るく普通に切り出そうと頑張ったけど駄目だよ・・・やっぱり・・・
涙が溢れ出し止まらない
嗚咽が出そうになり七海の胸に顔を押し付け喉の奥に押し込む
肉体は人でも人として一番重要な構成要素の魂は人でない
成すべき為に必要と覚悟しての結果だけど人の肉体に先史代の魂・・・私は何になったの・・・
「そういうことか・・・」
胸に埋める私の頭を優しく撫でてくれる
「人の定義は私にはわからないけど彩美が一番大切で愛する人は間違いないよ」
誰がなんと言おうと七海が人と認めてくれるなら私は人として生きるよ

それは突然だったよ
七海が服を脱ぎ一糸纏わぬ姿になると私を御姫様抱っこしてテラスに出て風呂へ
そして一緒にドボーンって湯舟に飛込んだよ
「温泉気持ちいいでしょ!」
”うん”
「なら彩美は人だ!」
”何それ”
何だかわからないけど笑みが込み上げてくるよ
「人としての五感が無くてば温泉も観察対象になってしまい温泉は楽しめないからな!」
すっごい強引論法だけど今の私には嬉しいよ

そこから湯舟に浸かりながら手足を曲げ伸ばししたり七海に支えてもらいテラスを歩いたりして魂と肉体のキャリブレーション
十分くらい色々してると魂と肉体が同期して自由に動けるようになったよ
テラスは寒かったので再び湯舟に戻り温まり直す
七海がもたれ掛かり体を私に預ける
「まったく私の旦那は・・・」
えっやっぱし何か問題あるの!?不安が心を過る寸前
「極上過ぎる!」
”はい!?”
「普通ならメネシスの事など見ぬ振りして新宿に留まりメネシスの全てを無視して生きる方が楽なのに・・・苦しく辛い未来を感じても見ぬ振りはせずに真向立ち向かう姿そんな男に出会いプロポーズされ結ばれた私は最高だよ!」

”似た者夫婦ってことでいいのかな”
「そうだね背負ってる物の重さは違うけど」
”重さ?”
「私は彩美だけ彩美はメネシスの明日ってサイズ感が違い過ぎるけどね」
”大丈夫だよ私は重いから背負ってる苦労は同じ”
「はははは!この感じの答えがちゃんと彩美が人の証だよ」
鈴を転がしたような笑い声は気持ち良いけど「でも出会えた」の時もそうだけど何だかわからないけど私がガチ答えすると不思議な反応が毎度で返って来るよ

”そういえば美香は?”
「昼前に起きてメイレーン達とランチに行ったよ」
”私達も少し遅いけどランチ兼ディナー行こうか”
「お腹空いたあ!」
ごめんね私の悩みに付き合って貰ってたらもう夕方だよね
今日は普段着にメイクして出発

お腹は空いてるけど冒険者ギルドで昨晩の後始末を先にする事に
「事後依頼で昨晩の依頼書が届いてますよ」
冒険者ギルドに到着するとミナイが声を掛けてくれる
受託と報酬受け取りのサインをして後始末完了で冒険者ギルドを立ち去ろうとすると
「少しお時間よろしいですか」
頷きミナイの話を聞く

運良く襲われはしなかったが今日も西街道でガーゴイルの目撃情報が何件かあった
明日からは年始年末で帰省する旅人や王宮が主催する年越し祭りに参加する近隣国の要人の往来も激しくなる
巡回警備隊が警備を強化しているが目撃報告のあった範囲が広すぎて全てを警備出来ない
地域の治安維持も冒険者ギルドの活動に含まれるのでギルド依頼として街道警備を準備したのだが辺境に帰省している冒険者も多く十分な人数が集まらず十分な警備体制を敷けていない
”まあギルド依頼は報酬が安いのもあるのですが”
ギルドの活動資金は依頼報酬への手数料とパトロンとなる貴族からの資金提供で賄っているが潤沢とは言い難い
ギルド依頼は通常の依頼に比べると格段に安い報酬になるが日頃お世話になってるギルドへの恩返しで受ける冒険者の良心を当てにしている
「報酬は一人一日三千Gと少なく心苦しいのですが彩美さんのパーティーにもお願い出来ないかと」
”いいよ!ガーゴイルの異常発生は気になっていたから”
ただし条件を付けさせてもらったよ
警護をしながら異常発生の理由を調査させて貰うってね
「それは逆に助かります理由がわかれば根本的に対策出来るかもしれませんし」
明日からの参加を約束して冒険者ギルドを後にする

どこでご飯を食べようかと少しメインストリートをブラブラしているとコスメショップから出て来た美香とメイレーンにセレンと出会う
美香が選んで三人分のメイク用品を揃えたんだって
「七海さんメイク指導お願いします」
ペコリと頭を下げるメイレーンとセレン
”これから晩御飯行くけど一緒行く?”
「「はーい!」」

今日は少し寒いので火鍋にしたよ
美香は激辛で普通に食べてるよ味覚どうなってんだい
七海と私は辛くない出汁を頼んでも少し辛いのをビールで流し込みながらね
まずは毎度の爆食タイム
もうお腹いっぱいの私はしばらくビールをお供に美味しそうに食べる皆んなを眺めてるよ

そろそろ爆食タイムも終わりそうなんで追加のビールを頼んで遮音結界を張る
「今度はもう少し辛い出汁も食べたいなあ」
激辛でも汗一つかいてない美香が人外の存在に見えてしまうよって本当に人外の私が言うと冗談にならないね
「でギルド依頼は受けたの?」
おっと先手を美香に取られたよ
”聞いていたんだ”
「うん!ギルドに寄った時に話があったけど彩美ちゃんに任すって伝えておいたよ」
これは話が早くていいね
”ただし条件を付けてきたよ”
街道の警備をしながらガーゴイルの異常発生原因を探す許可の話をした

建物影から実体化した幻体のアークがやって来る
「少しお耳に入れたい事がありまして」
美香が椅子をアークに持って来たよ
”ガーゴイルの関係”
「はい」
アークは西街道を少し外れた光の国との国境付近にあるガーゴイルの巣になってる古く捨て去られてた寺院を調査に行った
何回もガーゴイル達を壊滅させるが何故かしばらくすると大量のガーゴイルが住み着いている
寺院を破壊する話も出たが街道からも離れており近づかなければガーゴイルが襲って来ることもないので捨て置かれる事になった場所

「ガーゴイル達は一匹も居ませんでした」
寺院に残されていたのはガーゴイルの好物の残骸だけ
ガーゴイルに食い荒らされた数十人もの人の死体
寺院には数百匹は住み着いていたので近隣の村が襲われたかと近くの村をいくつか調査すると村人全てが消えていた村を見つけた
「襲撃の跡はガーゴイルではなく人の手によるものでした」
壁に残された剣で斬り割かれた跡等と寺院方向に向かう深い轍

”村人を殺し荷馬で寺院へ運んだ!?”
「寺院付近でも同じ轍を見付けましたので痕跡からはほぼ確実かと」
”ガーゴイルに餌付けをしたのか”
思い出せモンスターを餌付けする必要のある何かを
”餌付けが必要だったのではなく間接的に術を施すのに利用した!?”
そうであれば間違いなく・・・
「ガーゴイルをテイムした者がいるということか」
流石の七海!私の物語に熟知してるよ

ガーゴイル程度であれば高等テイマーなら従属化が出来る
身の安全を確保する為に直接のテイムでなく死体にテイム魔法を仕込み食べさせる事で従属化させたのか
何て惨い事をする
「ガーゴイルの足取りを追いましたが潜める場所が多すぎて発見出来ませんでした」

ガーゴイルといっても全て同じで無く術者に対して魔力が上回る個体であれば自力でテイムを解除して自由になる
昨晩のガーゴイル達は移動中に従属化が消え野良化していたのが付近を通った商団を襲ったのか
ガーゴイルの個体差があるとは言えガーゴイル程度の魔力で破られる術者とは危険過ぎる
いつ全てのテイムが無効になってしまい引き連れて来たガーゴイルが手当たり次第に周辺を襲う可能性があるよ
でも昨晩の襲撃で王都付近に潜み刻を待っている事は予想出来たのは助かったけど
”理由はわからないが王宮の開催する年越し祭りに参加する者の襲撃か祭りそのものが標的!”

急ぎ冒険者ギルドへ行きリナに面会を願う
ギルマス室へ通されリナに先程の推測を伝える
「話の筋は通っているが寺院と村は誰が調査した?」
”この件が解決したらきちんと時間を設けて昨晩の話せなかった事と一緒に話すので今は許して欲しい”
「わかった」
そこから作戦会議
西街道は王都から十リーグまでを冒険者達で重点的に警護をして野良化したガーゴイルから旅人達を守る
私達は周辺を探索してガーゴイルとテイムをした一団を見つけ壊滅させる
まあ作戦としては難しくないけど潜む場所を探すのは少し手間だね

時間が無い大晦日まであと三日
年越し祭りに参加する近隣国要人の通行も多くなる
明日からとか悠長な事は言ってられないので準備を済ますとすぐに捜索に出発だね

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

感想を一言でも頂けるとうれしく執筆に熱が入ります
掲載サイトによっては匿名で感想を書けないのでマシュマロを用意しました
https://marshmallow-qa.com/z58ctq3kmuucz61
ログイン、個人情報不要で私にメッセージが届きます
ぜひ感想やご意見等をお気軽に頂けるとうれしいです
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

彩美<主人公>

女装癖のある男子高校生

平穏な高校生活が崩れた時に出会い救ってくれた七海と恋に落ちる

七海との出会いで高校生活を送りながらニューハーフとして生活することを決め新宿のMIXバーで活躍する生活を送る

少し普通ではないけど七海と一緒に平穏な日々を過ごしていたが突然の異世界転移で女体化する

異世界転移で与えられたご都合主義は「無敵チート」だけで苦労満載の異世界生活が始まる

唯一与えられた無敵チートの意味を日々考えている

七海<ヒロイン(純女)>

新宿二丁目にあるMIXバー「セブンシー」のオーナーでママ

店を開くまでは歌舞伎町で伝説級のキャバ汝として活躍していた

絶望の淵にいる彩美を愛し救いの手を差し伸べ恋人になる

少し特殊な性癖を持つため彩美と少し不思議だけど幸せな同棲生活を楽しんでいた

ある日突然の異世界転移した彩美の帰りを待ち続けている

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み