第16話~マリッジリング~

文字数 8,939文字

選剣儀はメネシスでは覚醒か祝福の日を迎えると行われる儀式の一つ
儀式と言ってもベッドのサイドテーブルで出来る程度だけど出来るのは一生で一回だけ

「失礼いたします」
ルシファーが酒瓶でなく木製の小箱を持って来た
”選剣儀をすると聞いたが今のベッドから動けない私では使い道がないと思うが”
「まずは儀を行ってから説明したく」
”わかった”

ルシファーが木箱から細身のバングルを数個取り出しサイドテーブルに並べる
バングルは幅五ミリくらいの薄板を丸めたシンプルなデザイン
素材は金・銀・鉄・銅と一つだけ金属でない薄い青色の水晶で出来ている
「やり方は分かりますか?」
”うん大丈夫”
左手の平を下にしてサイドテーブルに向ける
左手に魔力を込めてぇここは御都合主義発動してください!お願い!
”剣よ私に力を!”
二本のバングルが霞み出しサイドテーブルから消える
左手の手首に消えたバングルが二個が現れる
「選剣儀無事に終了です」

手首を見ると水晶と金のバングルがある
やった御都合主義発動!って戦闘能力に関わる事だから無敵チートに含まれるのかなあ
「二本ですか流石です二本に選ばれた例は存じません」
通常は一本だけなんだよね
選剣儀は魔力がある者だけが使える魔法剣を授かる儀式
五種類の剣が主を選ぶ儀式
実際は剣が選ぶというより主になる者の力量に合わせた剣が選ばれる
決まった剣は一生の相棒になり変更することは出来ない主の運命を大きく左右する儀式なんだけど略式だとテーブル一つあれば出来てしまう
王族とかだと賓客を招いて重要な式典として儀を行うのが通例だけどね

銅乃剣:一番ランクが低い魔法発動の補助具になる程度で刃物として戦闘で切り結ぶのは難しい
鉄乃剣:魔法発動補助具としての使用と一般的な量産品の剣程度の性能はあり戦闘で武器として利用出来る
銀乃剣:銅鉄より強力な上級魔法発動補助具としての使用と防御に特化した強力な加護が付与されておりタンク役に最適な剣
金乃剣:銅鉄より強力な上級魔法発動補助具としての使用と攻撃に特化した強力な加護が付与されておりアタッカー役に最適な剣
水晶乃剣:最上級魔法発動補助具としての使用と攻撃と防御両方の強力な加護があるが両加護共に金銀よりは劣る

選ばれた剣でおおよそその後の道が決まるかな
銅だと街中で魔法を民のため日常生活に役立てる魔法師
鉄は中級魔法戦士で冒険者とか軍の小隊長
金と銀は上級魔法戦士で冒険者とか軍の幹部
水晶は滅多に出ない銅五十%・鉄四十%・金銀が各々五%で水晶は一%未満かな
光と闇属性以外で水晶に選ばれた例はないほど強力な魔力を要求するのが水晶乃剣
水晶は超上級魔法師か超上級魔法戦士となり国直轄の特殊な役職に就くことが多い
あくまで職は一般的な例で銅でも強力な回復系を使えると冒険者のパーティーに参加を望まれたりする場合もある

剣は儀式を行う者の魔力や剣技成長の可能性から最適な物が選択される
どのような選別が行われているのかは太古に剣を作り出した天才的超上級魔法師しか知らないがほぼ間違いがない選択がされている

「水晶と金とは魔力も戦闘力も随一ということか水晶だけでは容量不足で金も選ばれたのか」
ちなみにルシファーは水晶でナタリーは銀にナターシャは金の剣を所持している
まあルシファーの水晶は当たり前としてナタリーとナターシャも実はかなりの魔法と剣の使い手だったりするんだよね
”感覚的にだけど水晶では剣技で私の全力を受け止められないので魔法中心時は水晶で剣技中心の時は金になった感覚が剣に選ばれた時にあったよ”
「なるほど二本の剣を使い分けないと受け止められない無敵チートなんですね」
”ねえねえ無敵チートなんて言葉をどこで覚えたの?”
「先日にかなり酔って寝落ちされた時に夜中気になり様子を見に来た時に寝言で言っておりました」
顔が真っ赤になる
”何の夢を見てたんだ私は!?”

”ちょっと剣を出してみる勝手が分からないので危ないかもしれないので少し離れてもらっていいかな”
ルシファーが席を立ちベッドから離れる
心に念じる”水晶乃剣よ”
水晶のバングルが消えて右手に水晶乃剣が現れる
水晶乃剣はレイピアに近い形状だね一メートルくらいの水晶で出来た剣身と金と銀で作られ装飾された鍔と持ちて
重さはほとんど感じない
剣の形状は剣が感応した魔力や剣技に応じて使用者に応じて形状が違う
軽く魔力を送り込むと剣身がほのかに青黒く光り出す
黒色に光るってことは私が闇属性の証だね
とこれ以上は室内では危険なので魔力を抜いて”剣よありがとう”
右手から剣が消え左手首のバングルに戻る

続いて”金乃剣よ”
金のバングルが消え右手に金乃剣が現れる
金乃剣はサーベルだね金で出来た剣身に装飾された金の鍔と持ちて
重さは水晶と違いきちんとあるが重いと感じる程ではない
適度な重さがあるから振り抜けば剣の重さも加わわり斬撃の威力も増す
魔力を抜きバングルに戻す

「あっさり剣も抜きますか・・・」
剣を抜くには「剣が冬眠から起きる」が必要で何日もバングルに魔力を送り続け剣に必要な魔力が溜まると剣が冬眠から起きて抜く事が出来る様になる
通常は半月から一月程度を必要とするのでルシファーが剣儀を使う事が出来ない現状で選剣儀をやった理由と思っていたよ
「選剣儀を急がなくて大丈夫でしたね」
”まあ剣が決まるのはうれしいよ”
「本当に二本に選ばれて直後に抜刀とか前代未聞だらけで驚きとしか言えないですね」
本当に戦闘に関する無敵チートだけは御都合主義発動だけど他は異世界転生苦労記なんだよね

コンコン
ドアが開き狭霧が入って来た
「お酒をお持ちしました」
ルシファーがサイドテーブルの残ったバングルを木箱にしまう
サイドテーブルに赤ワインの瓶とグラスが置かれる
「失礼しました」
狭霧が部屋を出る

ルシファーがグラスに赤ワインを注ぎ一つを私に手渡す
軽くグラスをかかげて乾杯をし一口
最近は定番の重めで土の香りが強めで美味しいね
「で今宵はどのようなお話をお聞かせ頂けますか」
「そうだね・・・・・」

”はっ”
ベッドから時計を見ると十一時少し過ぎ
左横では七海がスヤスヤ寝てる・・・うん?そうか
七海の左側では美香が七海に向かって横寝で寄り添って寝てる
これに私が右側から横寝で抱き着いていたんだから寝にくかっただろうなゴメン
布団の中で七海の軽く手を握ると握り返して来た
私が起きるのと同時に起きたけど美香を起こさなないようにしてるんだね

出来るだけ静かにベッドルームを出ると洗面台で顔を洗って歯を磨いて髪を整えたら玄関の外を確認
ドアの横にダンボールが一つ
ダンボールを抱えてキッチンに行く
帰宅後に二人が風呂に入ってる間に近所スーパーの配達をお願いしてたんだ
ダンボールを開けると注文した食材が入ってる
さて始めますか

時間的にブランチになる事は予想出来ていたので少し食べ応えのあるメニューでね
玉葱は丸ごとなので皮だけ剥いて
ジャガイモは皮を剥いて丸のまま
人参は少し一口より大きめに乱切り
マッシュルームは石附を切ってそのまま
カブは皮を剥いて1/4にカット
ブロッコリーは一口サイズにバラしてね
本当はゆっくり煮込みたいけど時間がないので圧力鍋に準備した野菜を入れて
ソーセージとブイヨンを溶かした水も鍋にいれて火にかける
煮込みが終わるまでの間にバケットを一口サイズにカットして準備
ふ~あとは圧力鍋で15分位煮込むだけだね
忘れてたケトルを火にかけお湯もわかさなきゃね

テラスに出て朝の一服
紫煙を巡らしながら日曜昼の新宿の空気を楽しむ
明治通りを走る車の喧騒は時間を問わずだけど通り向こうの歌舞伎町二丁目は見える人もまばらで静かだね
左奥にビルの隙間に見えるのは花園神社だよ観光名所でもあるので人が結構いるね
ここからだと見分けは付かないけど外人さんも最近は多いんだよね
リビングで人の気配がしたのでタバコを消して部屋に入る

七海と美香がリビングに入って来たところ
洗顔と髪は整えてるので少し前に起きてたかな
”おはよー!”
「おはよう」
「おはよう彩美ちゃんって何かいい匂いが」
”もう少しで出来るからね”
タイマーを見るとあと数分だね
バケットをトースターにいれて軽く焦げ目がつく程度で焼くよ
テーブルにフォークとスプーンを準備する
キッチンでは七海がコーヒーを淹れてる

「うーん本当に阿吽で見てるだけで愛がわかっちゃうよ」
なんか照れるなあ
タイマーが鳴る
火を止めて圧力釜の圧抜きレバーを回す
シューって圧が抜け始める圧が抜ければ盛り付けて完成
あっ圧が抜けるまでにマスタードの瓶とマスタード用の小さ目スプーンもテーブルに準備
圧力釜の圧力メータにオープンOK表示が出たので開けて櫛をジャガイモに通す
スーッと通ったので大丈夫だよね

深めのスープ皿に丸ジャガイモと丸玉葱とソーセージ三本とカブと人参とマッシュルームにブロッコリーを適当な量入れてスープも入れるよ
同じことを三回繰り返して三皿完成!
七海のコーヒーも丁度淹れ終わったのでテーブルに運ぶ
トースターから少し焼き目のついたバケットを籠に盛ってテーブルの中央へ
”ほーい今日のブランチはポトフだよ”

「「いただきまーす」」
「うわージャガイモがホクホクで美味しいー!」
「ソーセージとマスタードの組合せも楽しくていいな酸味が気持ちいい」
ディジョンのマスタードは七海のお気に入りだしね私も大好き
「本当だあ!このマスタード付けると野菜とかソーセージの味が引き立つ!」
「玉葱の甘さもいいけどマスタードで味を引き締めると気持ちよいね」
「バケットをスープに浸しても美味しいね」
「彩美お替わりお願いできるかな」
「あっ私もいいいかな」
”はーい追加でバケットも焼くね”

念のために六人前を作ったけど完売
空っぽになった鍋はうれしいよ
ソファーに移動したら七海の淹れたコーヒーで少しノンビリ
「次はいつこれるかなあ」
”クリスマスは難しいなら初詣一緒に行こうよ!”
「そうだな私からも御両親にお願いをしてみるよ」
「ねーさんありがとう!」

私は洗い物へ二人は着替えにベッドルームへ
洗い物はきらいじゃないよ
なんか綺麗に食べ残しなく綺麗なお皿
空っぽになった鍋
料理を作ってよかったって思える瞬間でもあるしね

七海は白いニットと膝丈の赤いスカートにゴムベルトでとシンプルなコーデ
夏美はパーカーにGパンと休日JKのラフな感じだね
二人ともメイクも終えて準備完了
・・・あれ私ぃまだTシャツに短パンでノーメイクだった
”急いで準備してくるね”
「ゆっくりでいいよぉねーさんとラブラブしてるからあ」
”ラブラブはダメぇ~!”

さてウオークインに来たけどどうしようかな
今日はリング作りに行くんだよね
普通に考えたら男装なんだけど「そんな服はここにはありません!」てね
女性服以外なんて最近学校も含めて必用ないしね

うーん下はタイトのハイウエストスキニージーンズにロングブーツでトップスはどうしよう
七海が白だったから黒のニットにしようかな
まあシンプルコーデで行くよね
とぉこのコーデならメイクしないとだけどどうする?
ああ困ったぁ

ガチャ
”七海!!”
「やっぱハマってたか」
”どどしたの!?”
「旦那様と美女の狭間に挟まって困ってたんでしょ」
”表現は困るけど美女を女装に置き換えれば同意でフリーズ中でした”
「ねえ!今日は私コーデじゃ駄目かな?」
うっ素直になろう
”七海お願い”
七海の唇が私の唇と重なる
至福の数十秒を過ごし
「さてやりますか!」

「今日は十二月にしては暖かいからアウターをコートとかにしなくても大丈夫だから」
クリーム色の厚手生地のスウェットパーカー
黒色の柔らかい厚手生地のワイドパンツ
袖なしの黒色のキルティングベスト
靴下とかベルトとかがベッドに並べられる
「これに黒のショーブーを組み合わせればいいかな」
さっそく着替えてみるよ
「うん!イイ感じだねメイクしよう!」
メイクは登校時のナチュラル系だけどアイラインは少し控えめでカラーも全体的に淡い色
「リップは後でこれかな」
かなり薄いピンクのリップを渡される
「あと帽子あってもいいかな待ってて」
ツバが少しある黒の深めキャスケットを持って来た
”凄い中性的でいい感じだよ”
「素材がいいからね」
”七海のセンスが凄いから”
「バッグはこれね」
白色のボディーバッグを渡される
「ベストの下にバッグが体の前側に来るように肩から斜め掛けでね」
リビングに行き全身見える鏡で確認すると
ボーイッシュな女の子にも少し女性よりのファッションをしてる男の子でもキャスケットを深めに被り少し隠すと見える絶妙なセンスに感動

「うわー彩美ちゃんが新鮮だあ」
なんか少し照れてしまう
”七海にコーデとメイクをしてもらったよ”
「ねーさんのセンスすごいなぁ」
「はい」
七海がコーヒーを淹れ直してくれた
テラスに行き一服しながらコーヒーを味わう
「寒くない?」
”うん今日は暖いから丁度いい感じ”
美香もやって来て紫煙を巡らす
「夢のような週末だったなあ」
”またタイミングはあるよ”
「うん彩美ちゃんも改めて両親に紹介しなきゃね」
”そうだね進路面談の時にすれ違いに挨拶しただけだったね”
なんか改めて挨拶とか微妙な緊張感だね

新宿駅東口の改札でいつもの学校帰りな感じで今日は美香とお別れ
「じゃあ明日!学校でね」
”うん気を付けて”
「お母様とは来週にランチする予定なので初詣の件は相談してみるよ」
「お願いします」
いつもの様に片手を軽く上げて改札の人混みに溶けて行く美香
「さて行きますか!」

新宿駅の雑踏を七海が軽く寄り添いながらすり抜けて行く
ワイドパンツで見えにくいけど私はデカヒールが十センチくらいのショーブーで七海は珍しくヒールが二センチくらいのパンプス
二人とも身長は同じで百七十センチに少し届かないくらいで同じだけどヒールの高さ差で並ぶと普通の男女カップルの身長差に見える
寄り添う七海が少し上目に私を見るといういつもと違う感覚にドキドキだよ

「めちゃ綺麗モデルさんかな」
とか時々雑踏から聞こえる
七海は本当に綺麗だから横に並んでるのが私じゃ吊りあい取れないよ
何かを察したのか腕に抱き着いてる七海の力が強くなる
七海に少し引っ張られて横を向くとショーウインドウに二人が写ってる
「人も羨む旦那様と一緒で幸せだよ!」
ショーウインドウに写る二人は映画のワンシーンを切り抜いたかと思うくらい
これが私とか少し不思議な気分だよ

目的地は南口にある有名デパート
貴金属売場か専門店に行くかと思ってたのだけど到着したのは三階の少し分かり難い売場の陰に隠れた場所
金色を基調とした壁に濃いスモークが施された両開きの自動ドア
ドアの横には「MembersSalon」と書かれている
自動ドア抜けて入ると正面にカウンターがありスーツ姿の女性が二名いる
周りをみると左右にスモークの自動ドアがあり左は「VIP」右は「MEMBERS」のプレートがある

七海が金色のカードをカウンターの女性に手渡す
女性はカードリーダーにカードを通すと
「榊原さま御来店ありがとうございます」
榊原って・・・あっ七海の姓だった姓で呼ぶ事なんてないので時々忘れます私
「御案内いたします」
女性がカウンターから出て来て先導する
VIPのドアを抜けると見るからに高級な革張りソファーとサイドテーブルが並ぶ部屋だった
部屋も木目調で統一されてて二人掛けのソファーとサイドテーブルのセットが二十セット位が広めの間隔で配置されている
何人か先客がいる
「金持ち感丸出しの男性」とか「超絶に落ち着いた感じの老齢の御夫婦」とか「装飾品だけでいくらなの?な御婦人」などなどが座っている
「ここはお得意様専用の買物中休息室って感じね」
???になってる私に七海が説明をしてくれる

部屋の奥まで案内されると曇ガラスで仕切られた部屋がいくつか並んでる
部屋にはAとかBのプレートが着けられている
女性はCの部屋のドアを開けると中に入るように促す
部屋の中は四人掛けの大きなガラス天板の見るから高級なテーブルと革張りの椅子があり既に先客が二人いた
「榊原さまお待ちしておりました」
向かって左に座る少し小太りだけどピシッとスーツを着た白髪の初老男性が立ち上がり挨拶をする
「下田さん今日はよろしくね」
七海に促され椅子に座る
「本日はマリッジリングのお話とのことですが」
「一緒に来たのがフィアンセの彩美ね」
「彩美様よろしくお願いをいたします」
”よろしくお願いをいたします”
男性の胸にプレートがある
プレートには「外商部Aグループ G総括 下田」と刻印されている

御客様との話で学んだけど外商ってデパートとかで超御得意様だと付く専属のコンシェルジュだね
売場に行かないでも電話だけで商品を自宅に届けてくれたり「こんな物欲しい」と言うと探してくれたり限定品を優先的に手配してくれたりする便利だけどいくつかランクがあってサービス内容もランクに応じるらしいけどVIPルームに通されたって一番の上のランクなのか七海は!?

コンコン
先ほどの女性がコーヒーを持って来た
漂う香りだけでもかなり高級な豆と分かるよ

下田の横にいた黒スーツをビシッと決めオールバックの三十代位の男性が
「ジュエリー貴金属部門バイヤー総括の栢山と申します」
七海が名刺を受け取る
「マリッジリングとのことですが具体的なイメージはありますか?」
これは毎晩のように七海と相談してイメージは決まってる
「お店でも着けるので目立たずにシンプルなデザインだけど個性的なのが・・・」
と七海がイメージを伝え始める

ベースはプラチナの細めのリングで小さくカットした二人の誕生石アクアマリンを一周並べる
裏にはお約束の刻印でAYAMI&NANAMIってね
「アクアマリンですか色差が激しい石になりますので小さ目のカラットで複数ですと同じ色で完全に統一をするのが難しいですね」
「二人分を取れるサイズを再カットで色は統一出来るかな」
「再カットとなるとかなり無駄が出ますので必要なカラット数がかなり大きくなりますが」
「そこは気にしないで仕上がり優先で」
「それでは可能です」

「現物は見れるかな?」
「はい先にアクアマリンが御希望とお聞きしておりましたので各店と買付先から選りすぐりを御準備しております」
テーブルの上にいくつかの青く光る宝石が置かれる
「再カットで必要なカラットを考えるとコチラのどれかになります」
七海が手に取り天井の照明を透かしたりしてして選んでる

一つを私に見せる
「彩美これでどうかな」
並んだ石のなかで一番青色が濃くでも曇り一つなく透き通っている
「きれい」
「ではこれで」
「流石です今回手配した中で一番の上物で数年に一回しか買付できない最上級のサンタマリアS6オーバーグレード二十カラットです」
横で電卓を叩く下田
「御値段ですが石とリングに加工費でおおよそコチラになりますが」
電卓の数字を見せてくる
一十百千万・・・ってぇ高級車買えないこの金額
確かにアクアマリンはランクによる価格差が凄いって安いのは数万だけど希少なグレードでカラットが大きいのは数百万は当たり前って事前に調べて知ってはいたけど金額に腰が引けてしまう

「うんお願い」
「このサイズを割ってしまうのは惜しい気もしますが御客様の御希望を叶えるのであれば最上の加工所に依頼して作成いたします」
それから指の採寸とか細かい部分を最終調整して終了
「完成ですが加工所と連絡したところご希望の二十四日より前にお届けできます」
「ではよろしく頼む」

下田に出口までアテンドされ見送られMembersSalonから離れる
「楽しみだね」
”うん七海ありがとう”
値段に関しては触れないよ七海がそれだけの価値を私と結婚して一緒になる事に見出してくれてるのだから

その後は普段と違う「男と女」でのデート
ウインドウショッピングを楽しんだりカフェでお茶したり内容はいつもの女姿でのデートと同じだけど新鮮な感覚だね
次は七海の希望で都庁の展望室へ行くよ

都庁の一階から専用エレベータで地上二百メータへ
新宿の街並だけでなく富士山やスカイツリーも見える絶景
時間も黄昏時で夕焼けが綺麗だよ
二人で一周して色々な景色を楽しむ

ふと周りの人影が途切れた時だった
景色を見ていた私の前に来て背伸びする七海
唇と唇が触れる
いつもの濃厚なキスでなくフレンチキスが数秒
背伸びを戻して上目で私を見る七海の顔が赤らんでる
思わずそのままハグする
「ちょっと背伸びでキスとか憧れていたの」
可愛いいいいいいい
思わずハグに力がはいっちゃう
しばらく腕の中の七海の温もりに浸る

ガヤガヤ
団体さんが近くにやってきたのでハグをほどく
手を繋ぎ展望室から地上に帰るエレベーターに自然に向かう
エレベータの中で七海の耳元で
”キスうれしかった”
顔が赤くなる七海
もう可愛い過ぎるよ

夕食は西口繁華街の雑居ビルある「天婦羅よ田 新宿離れ」へ
店内に入るととても雑居ビルにあるような店ではない超高級感
それもそのはず麻布にある本店はミシュランの常連店なんだよね
今晩は少しお洒落にと七海が予約していてくれたんだ

カウンター席に通される
目の前で天婦羅を揚がるのを見れて楽しいよね
前菜はビールで楽しみ天婦羅は日本酒で楽しんだよ
〆は「かき揚げ丼」か「かき揚げ天茶」を選べるけどまあお揃いで天茶だね
かき揚げ丼もサクサクで楽しいけど前半はサクサクで後半はお茶漬けの変化が楽しくて天茶一択な私達
デザートを食べ終えると
”お腹いっぱいだぁ美味しかった”
「お腹が破裂しそうだよ」
コースはかなり品数も多くて結構限界な満腹になるよね
ふと七海のお腹を見ても何処に収まってるのかポッコリすらしてない抜群のプローションの謎

もうお腹に何も入らないのと週末は少し寝不足が続いたので今日は飲屋は寄らずにマンションへ直行で帰る事に
タクシーを降り部屋に入るとお風呂の自動ボタンを押してお風呂の準備
リビングで七海と横に並んだ瞬間に「あっ何時もの光景だね」になっていた
二人とも素足に戻ったので頭頂部でなく正面に見える七海の顔
思わず・・・って七海の動作の方が早かった
私に抱き着き唇を重ねてくる
濃厚な時間を楽しみ自然に離れる
「今日は少し早めにベッドに行こうか」
”うん”

お風呂が沸くまでソファーでジャックを二人で楽しみお風呂の湯上りからそのままベッドへ・・・・・
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登場人物紹介

彩美<主人公>

女装癖のある男子高校生

平穏な高校生活が崩れた時に出会い救ってくれた七海と恋に落ちる

七海との出会いで高校生活を送りながらニューハーフとして生活することを決め新宿のMIXバーで活躍する生活を送る

少し普通ではないけど七海と一緒に平穏な日々を過ごしていたが突然の異世界転移で女体化する

異世界転移で与えられたご都合主義は「無敵チート」だけで苦労満載の異世界生活が始まる

唯一与えられた無敵チートの意味を日々考えている

七海<ヒロイン(純女)>

新宿二丁目にあるMIXバー「セブンシー」のオーナーでママ

店を開くまでは歌舞伎町で伝説級のキャバ汝として活躍していた

絶望の淵にいる彩美を愛し救いの手を差し伸べ恋人になる

少し特殊な性癖を持つため彩美と少し不思議だけど幸せな同棲生活を楽しんでいた

ある日突然の異世界転移した彩美の帰りを待ち続けている

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