文字数 324文字

花瓶に生けた薔薇。
あまり見かけない淡い優しい色で。
私はそれを、一目見て気に入った。


「綺麗に咲いてるね」

ほんの今さっき。
もう、綺麗ではなくなった、と、思った。
花瓶に生けたあの頃よりも。

「そう、ね。咲いてる」

そう、返すことができた。

灰色の雨雲が一気に私を包み込むのを感じる。

少しずつ積み重ねてきたものが、確信に変わる。



日々を過ごし、時を生きて、過ぎ去る景色を眺めてる。
それは当たり前のことで、それはとても完璧なことで、それ以上求めてはいけない。

けれど欲張りな私は、求めてしまう。
道は選べて、避けられたのではないか、と。

明日は今日と違う。
だから。
きっと生かされてる。

昨日、ばらばらになれればよかったのに。
そうすれば、こんな気持ちになることはなかったのに。



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