第16話:留学3週目の授業

文字数 1,623文字

 翌日から3週目に入り、留学の半分が終わったことになる。今週は、ディスカッションの授業が多かった。この授業では、政治的なことを言うのは禁止だった。それは韓国、中国からの留学生が多く、政治問題で以前、殴り合いのけんかになったことがあったためと聞かされた。もっぱら、君はなぜ英語を習うのかと言う質問だった。それに対して中国からの留学生のA君は、実質的に世界共通語が英語だからと答えた。

 その英語を使って世界の市場で戦って勝ち抜いて、大富豪になりたいと言った。それを聞いて、秀一が、金持ちになって、何するのかと質問をした。その質問に対して、なぜ、そんなにくだらない質問するのかとA君が反論すると、担当の先生が、ノーと言い、議論を終わらせるなとA君に言った。仕方なく、金は多すぎて困ることはないだろと笑顔で答えた。それに対して秀一は、その金の使い方によって、その人の価値が決まるのではないかと述べた。

 関係ないね、世界の戦って勝つだけだと真面目に答えた。その答えに対して、グラマーな金髪美人をはべらして、キャデラックを乗り回すのかと言うと、A君は、興奮して、そんなのお前には、関係ないだろうと怒鳴った。先生が、ストップと言い議論は、冷静にと言い、A君の議論はなってない。質問に、ちゃんと答えなければ議論にならないと説教をし、議論が終了した。


 その後、韓国のB君の番になった。すると、アメリカ人のトミー「柔道をした大男」が手を挙げた。君はなぜ英語を習うのかと言う質問だった。お決まりの質問と思えたのか、嫌そうに答え始めた。韓国にいたって将来がない、そのためアメリカででかい男になると言った。何がしたいと聞くと、経済を専攻してるからニューヨークのウオール街の投資銀行で、たんまりと金を稼いで、早期退職して人生を楽しむと言った。

 トミーが、それだけかと言うと、そうだと言った。ウオール街の投資銀行なんで、アメリカの有名大学出身者でも、ほんの一握りのエリートしか入れない。現実の話、外人のディーラは聞いたことがないと言った。誰もいないなら、僕が最初の成功者になると笑いながら言った。すると、先生が、それは君の希望でしかないねと、バッサリと切った。この話を聞いて、教室から笑い声が聞こえた。

 金曜日に秀一が「君はなぜ英語を習うのか」と言う質問に対しての答えを発表する順番になり世界の文化を知るためと答えた。理由は、事実上の国際共通語として英語だからと答えた。文化を知るということと何かとアメリカ人のトミーが質問した。それに対して、その国の歴史、価値観、宗教、哲学を知り、世界中の文化を知って、自分の教養を深めるためと答えた。

 担当の先生が、それを聞いて、将来を担っていくべき若者にとって、それは、とても大切なことだねと褒めた。是非、英語をマスターして、世界中の文化を吸収して世界に役立つ人間になってほしいねと解説した。そうして、金曜日が終わり、週末を迎えた。翌日の土曜日は、シアトルからフェリーで行ける島が、ピュージェット湾に浮かぶベインブリッジ・アイランドへの観光ツアーに予約した。

 白と緑のフェリー、ベインブリッジ・アイランドまでの所要時間は35分。島民の多くがシアトルに通勤している一方、シアトル住民にとっては、気軽に行ける観光地。フェリーの発着場所であるピア52は、シアトルのダウンタウンから徒歩圏内。乗船券は8ドル、フェリー乗り場で購入でき帰路は無料。船内ではコーヒーや軽食も販売されていて、大きな客室でゆったりくつろげる。

 当日は、お天気が良く、デッキに出て、太陽と潮風を感じながらピュージェット湾の景観を楽しんだ。しかし、あっという間にベインブリッジ・アイランドに到着。島に着いてフェリーの港から5分ほど歩き、ウインスロー・ウエイ沿いのダウンタウンに到着。お洒落なカフェやベーカリー、スーパー、本屋や雑貨店などかわいいお店がコンパクトに集まっていた。
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