第61話

文字数 521文字

 早希〔4年〕が走る6区6.0キロは、富士山撮影のビューポイントである田園地帯を走る直線コース。

 5区エースより受け継いだ襷を最終7区アンカーへと繋ぐ重要な役割。ここでコケることはエースの走りを台無しにすると共にアンカーへの負担を増加させる。
 チームで最も信頼される人間が担う。

 後続に詰められたがトップをキープしたまま早希から希へと襷が繋がれる。

 雨も止んできた。

「後っ……ハッ、ハァッ……頼ん、だっ……ハァー」

(まっか)せなさーいっ!!」

 希〔4年〕最終7区8.3キロ。高低差は4.6キロで169メートル、ビルに例えると50階にもおよぶ『魔の坂』、大淵街道。これを登り切れば新しい自分を発見できる。
 正面から富士山が走りを見守る。そして間近に迫った富士山がラストスパートを後押しする。
 大学四年、これが希が千風と走れる最後のレースだ。



 光や空木らが応援する中、富士総合運動場に入った希が勝利を確信する。箱根駅伝は叶わなかったけれど、女子の箱根駅伝に相応するこの富士山駅伝を最高の仲間たちと繋いで制し、大学生活を終えられたことは幸せだったと思う。

 ……後は……男たちに託そう……



 今、ゴールテープが切られた。優勝、聖和大学。記録2:21′48″。
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